eastern youth | 渋谷TSUTAYA O-EAST | 2017.12.09

響きとうねり

始まる前はラウンジミュージックかと思いきや、ダブっぽい曲が流れていた。表面上のマッタリ感とうごめく低音、そしてエコーを効かせた音作りはダブそのものである。

新しいアルバム『SONGentoJIYU』は何度も聴いて耳に馴染んだころによさが染みてくる作品である。そのアルバムの発売に記念したツアーがおこなわれ、渋谷オー・イーストがその最終日だった。

18時ころフロアは程よく埋まって、18時10分ころにバンドが登場してライヴが始まった。一曲目は、新譜から「ソンゲントジユウ」。ここから5曲目まで新譜からの曲がMCなしで立て続けに演奏される。イントロで静かに会話するように吉野がギターを爪弾いてから、ガッと演奏に入っていくいつものスタイルだった。吉野が弾くギターの響きはラウドで迫力あり、日本の3ピースバンドとしては極上のもので、この響きにずっと身を委ねたいと思う。

もちろん、田森のドラムと村岡のよく動くベースががっちりしているからこその響きなんだろう。この音響を体験するだけで観る価値がある。

ようやくひと息ついて吉野が語り始める。この日は繰り返し「みな違っていい」といっていた。新譜もその主張がいたるところにある。そこから村岡のベースが重く鳴って「青すぎる空」でフロアが歓声を上げる。「裸足で行かざる得ない」と今までの曲を続ける。「踵鳴る」の身を削るようなノイズが放出されたところが、自分のなかではこの日のハイライトだった。

後半は吉野はいろいろ語っていて「西ニッコリですよ」なんていう親父ギャグまで飛びだしたり、田森をいじったりしているなか、印象的だったのは「俺は納豆が大好きでね、梅干しも大好き、白いご飯も大好きだ」と「生まれたこの場所が大好きですよ、愛してる」と愛郷心を語ってから「それでも俺には、俺の心の中には俺の魂があるだけ。日本の心なんてものは一つもねぇ、俺の心があるだけ」と語ってから演奏された「おとぎの国」そして「おれたち」が吉野の足場を示したものだろう。そして「夜明けの歌」「街の底」と続く歌がまるでひとつのストーリーのようにも聴こえてくる構成だった。「街の底」モータウンみたいな跳ねるベースとジングルベルが鳴ってるかのように刻まれるリズムで始まるのだけど、イースタンユースが際立たせているのは、黒っぽい跳ねているリズムなんではないかとも思う。これは二宮から村岡に交代することで、よりはっきりしたのではないだろうか。

アンコールは、村岡の素朴なMCがあり「沸点36℃」。そしてモップスの「たどりついたらいつも雨ふり」が流れてから、再びバンドが登場して吉野が田森にMCを振って、仕方ねぇなという感じで語りだす。ぶっきらぼうな話し方。だけど感謝がこもっていた。演奏されたのは「夏の日の午後」。会場にいる人たちがそれぞれの盛り上がりをみせていた。

<– 12.03 大阪 |

 

–>テキストレポート「俺から、おれたちへ」

— set list — (eastern youth)

ソンゲントジユウ / 明けない夜はないのだ / ちっぽけだって、なんだっていいから、歌を俺にくれ / なんでもない / 同調回路 / 青すぎる空 / 裸足で行かざるを得ない / 素晴らしい世界 / 踵鳴る / 旅の空 / グッドバイ / 矯正視力〇・六 / 口笛吹いて駆け抜けろ / おとぎの国 / おれたち / 夜明けの歌 / 街の底

— encore —
沸点36℃

— encore 2 —
夏の日の午後


極東最前線/巡業2017~おれたちのSONGentoJIYU~

 
10月21日(土) 千葉 LOOK
10月28日(土) 札幌 cube garden
10月29日(日) 弘前 Mag-Net『弘前Mag-Net20周年記念』
11月 4日(土) 京都・磔磔
11月11日(土) 仙台 CLUB JUNK BOX
11月12日(日) 新潟 CLUB RIVERST
11月25日(土) 岡山 ペパーランド
11月26日(日) 福岡 DRUM Be-1
12月 2日(土) 名古屋 APOLLO BASE
12月 3日(日) 大阪 umeda TRAD
12月 9日(土) 渋谷 TSUTAYA O-EAST

eastern youth | 記事一覧
SMASHING MAG アーカイブス

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Keiko Hirakawa