RIDE | 東京 Tokyo Dome City Hall | 2018.02.19

普遍的なものを目指して

「1990年に学生だった人は、今はみんなおじさん(おばさん)になってるんだよな」としみじみしてしまった。会場のおじさん率の高さは否めない。外国人のお客さんも目立つけど、みなおじさん(そしてやたら体格がよい)ばかりだ。

 バンドが登場する前は、ソニック・ユース、スペースメン3、ザ・フォール、ストゥージズ、ノイ!などいかにもな選曲だった。20時05分ころメンバーが姿を現した。

 ライヴは”Lannoy Point”で始まる。新譜『Weather Diaries』からの曲が多く演奏された。ステージ中央にはマーク・ガードナーとアンディ・ベルの2人がいて上手にベースのスティーヴ・ケラルト、ステージ奥にドラマーのローレンス・コルバートという編成である。ステージ背後にはシンプルに「RIDE」の文字が飾られている。

 ”Seagull”のイントロでシンバルの音が鳴ると途端に大歓声が上がる。お客さんの多くは、あの頃の音を聴きたくて来ているのだ。バンドはそうした需要に応えながら、この日のライヴで目指すものが明確になっていると感じた。

 それは、過去曲は90年代前半の懐メロではなく、普遍的な名曲なんだという提示、新曲は初期作と遜色ないものを作るとこができる自信をみせたいということなのではないか。マークのみずみずしい声が失われてなかったこと、アンディがオアシスというモンスターバンドで普遍的な楽曲の力を学んだことは大きいと想像する。

 中盤の”Catch You Dreaming””Like a Daydream””Dreams Burn Down”の「ドリーム」3連発は泣けた。”Like a Daydream”と”Dreams Burn Down”は自分が初めて聴いた20歳そこそこの感覚を取り戻しつつ、曲自体が現在にも通用するカッコいい曲として鳴っていたのが嬉しくて涙ぐんだ。

 マークとアンディのギターを中心にスティーヴのベースがうねり、ローレンスのドラムが迫力を加える。曲によってはシンセサイザーの音が聞こえるものがあり、これは演奏と同期させているのだと思われる。後半、アンディが曲中に何度かギターを交換していたのでコンディションが気になったほかはバンドのダイナミズムを十分感じさせた。本編ラストは”Drive Blind”。後半のノイズ放出がマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの”You Made Me Realise”のように数分間続く。

 アンコールは4曲だった。ローレンスがリードヴォーカルを取る”Rocket Silver Symphony”、ゆったりとノイズが立ち上がる”Leave Them All Behind”、同じく”Polar Bear”で浮遊感をもたらし、そしてデビュー作”Chelsea Girl”では疾走するロックナンバー。自分たちはエバーグリーンな作品を残したのだという自信と現役で勝負できるのだという、未来に開かれたステージだった。

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Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by MITCH IKEDA