SXSW Music Festival 2018 ライブレポート Part 1

サウスバイの原点回帰を体感した1週間

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「世界のライヴミュージックのキャピトル(“Live Music Capital of the World”)」にして「オースティンならではのユニークさを大切に保とう(“Keep Austin Weird”)といったワクワク感満載のスローガンを意気揚々と掲げるアメリカはテキサス州の州都、オースティンに4年ぶりに帰ってきた!世界最大級の音楽見本市のサウスバイ(以下SXSW)を思いっきり楽しみに来たわけだ。

「SXSWとは?」やその沿革については前パブで触れたので、そちらを参照いただくとして、本レポートでは、現地でリムのインスタグラムを通して速報した内容に焦点を当ててお届けする。SXSWの1週間がいかに熱気にあふれていて、音楽バカにとって、どんだけたまらないイベントかってことを感じ取っていただければ幸い。

あらためて音楽の素晴らしさをありありと体感し、全身揺さぶられっぱなしの1週間だった。

SXSW Music Festival 2018 ライブレポート
サウスバイの原点回帰を体感した1週間 – パート1 / パート2
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U・S・ガールズ
SXSWはお昼は様々な無料のショーケースがあちこちで繰り広げられている。最初に訪れたのは、プレッジ・ハウスが主催するデイ・パーティーだ。
U・S・ガールズなんて名前だから、どれほどはっちゃけたバンドなのかと思いきや、めっちゃスモーキーないなたいバンドだった。
迫り来るメグ・レミーのボーカルももちろん凄いが、バックを固めるバンドが素晴らしい。タイトにビートを刻むベースとドラムの上を跳ねるキーボード。流麗なフレーズを奏でるツインギターにサックスのアクセントがたまらないのだ。
ブルージーな曲が並ぶ中に、ボウイの影響下にあるようなグリッターな曲もあり、まったく飽きさせない。のっけから良い音のシャワー浴びさせてもらった。

Photo by Takafumi Miura

フィールド・レポート
プレッジ・ハウス主催のお昼のデイパーティー初日のトリを務めたのはウィスコンシン州ウィルウォーキーの4人組ロックバンド、フィールド・レポートだ。
浮遊感のあるキーボードがサイケな質感を漂わせながらも、根底は暖かみのあるメロディと芯の太い声でオーディエンスを優しく包み込むようなカントリーライクな聴かせるロック。こういう音こそアメリカで聴きたい。
来週には新譜『Smmertime Song』がリリースされるそうだ。要チェックだね。

Photo by Takafumi Miura

プッシー・ライオット
今回最も楽しみにしていたアクトの一つ、ロシアはモスクワからの過激な刺客、プッシー・ライオット。
今回のセットに限りのことなのか、DJと女性ボーカルの二人のみがステージに登場。ちょっと肩透かしを食らったが、ボーカルの煽りとDJが繰り出す強靭なビートに会場パンパンのオーディエンスが踊りまくる!
オーディエンスの熱が高くて楽しいステージだったが、期待していたパンクさが無く物足りなさがあったのは否めない。SXSWの期間中に必ずまた観に行くことだろう。あれ?…でもこれってひょっとしたら彼らの策略に嵌っていたりして…

Photo by Takafumi Miura

スタークローラー
つい先日、日本をその猥雑極まりないLA産ロックンロールで強襲した、スタークローラーのお出ましだ。
最前列はSXSWオフィシャルの写真家がずらっと陣取ってカメラを構えている。期待の高さのほどがうかがえるというもの。
まだニキビ面のあどけないギター、ベース、ドラムの男性メンバーが入念にサウンドチェックをして、耳をつん裂く爆音を一斉にかきならしてステージがスタート。ステージ下ど真ん中からオーディエンスをかき分けてアロウ・デ・ワイルドが満を持して登場した。
“Ants”や”I Love LA”といったキャッチーな曲が次々と繰り出され、アロウは目をひん剥き、髪を振り乱し絶叫する。
ラストの”Chicken Woman”では血糊で真っ赤に染まった歯をむき出してフロアに飛び込み、オーディエンスと大暴れし回ってそのまま楽屋に帰っていった。
この手のロック馬鹿の尻を蹴り上げるロックンロールはやっぱり最高だ。SXSWの期間中、あちこちのステージに姿を見せる予定の彼ら。終始オーディエンスの度肝を抜き続けることだろう。

Photo by Takafumi Miura

エリック・テスマー
おいおい、これは大好物な音だぞ!?地元オースティンのリーゼントでキメた伊達男、エリック・テスマーだ。スティーヴィー・レイ・ヴォーンやジミヘン直系のブルージーなハードロック。70年代のアメリカンで王道なロック好きにゃたまらんよ。
使い込まれ具合が見て取れるカラーが剥げ落ちたストラトキャスターをこれでもかと引き倒す。出力されるギターフレーズの一音一音が鼓膜を震わせ、全身を痺れされる。エリックの純度の高い色っぽさを伴う声が曲に華を添えている。ラストはジミヘンの”Manic Depression”で暑苦しく締めくくった。
SXSWでは、当初の目当てを忘れて流れてくる音にただ誘われて入場してみると、こんなにも素晴らしい邂逅があるのだ。

Photo by Takafumi Miura

クール・キース
ゲットー・ボーイズの”Bring It On”のぶっといビートが会場に鳴り響けば、クラウドのテンションは否が応でも上がってくる。それもそのはず。何せ天才にしてド変態のMC、クール・キースがお出ましなんだからな。
「How ya feel out there!? もうすぐ新譜をドロップだぜ!」といきなり2曲目で、伝説のエログロサイファイプロジェクト、ドクター・オクタゴンの不気味な名曲”Blue Flowers”を投下した。一筋縄ではいかないビートとフロウで、集ったヒップホップ・キッズの度肝をぬく。その後もウルトラ・マグネティック・MCズのヒップホップ・クラシックや”Sex Style”といったバウンシーな曲を立て続けに繰り出し、フロアを沸かせる。卑猥な言葉ばかり飛ばしているのに、この格好良さは一体何だ!?
要は、クール・キースは今も変わらずロックしているってことだ。まったく錆ついちゃいない。ロックファンこそ彼のライヴを目撃しておくべきだろう。

Photo by Takafumi Miura

ナタリー・プラス
バージニア州、リッチモンドのシンガーソングライターのナタリー・プラスがピッチフォークのラジオ収録に登場。先月、約3年ぶりにシングル”Short Court Style”をリリースしたばかりだ。
キーボードのジャジーな調べが気持ち良く耳に響く。アンニュイなナタリーの声も昼下がりに聴くと最高だ。
6月にはフル・アルバムがドロップされるとのこと。要チェックだね!

Photo by Takafumi Miura

ナイル・ロジャース
ミスター・ナイル・ロジャース登場!ピッチフォーク・レイディオに公開収録中です。
生い立ちからシックの話はもちろんのこと、ダイアナ・ロスとの衝撃的な出会いから、プロデュースしたデヴィッド・ボウイやマドンナとの興味深過ぎるエピソードがどんどん飛び出す。
音楽をいかに愛してるかが、ナイルの熱いトークと身体全身から伝わってくる。最高!

Photo by Takafumi Miura

ルーシー・ダッカス
バージニア州のリッチモンド出身のルーシー・ダッカスがウォータールー・レコーズ主催のデイ・パーティーに登場。
爽やかで伸びやかなルーシーの歌声と、タイトなバンドが繰り出す人懐っこいメロディー。よく晴れ渡った昼下がりに聴くのにうってつけだ。
つい先日、ニューアルバム『Historian』がリリースされたばかりの彼女。ダークでノイジーな曲も入れ込み、緩急自在なよく練られたステージを披露してくれた。

Photo by Takafumi Miura

ショッピング
英国はロンドンとグラスゴーを拠点に活動する3人組ロックバンドのショッピングがウォータールー・レコーズ主催のデイ・パーティーに登場。
ひりひりした質感のポストパンク調のチューンを次々と繰り出す。ギター/ボーカルのレイチェル・アッグズは靴を脱ぎ捨てステージ上を縦横無尽に動き回り、コミカルにおどけてオーディエンスを沸かせる。
ビリー・イースターのベースがズシズシとお腹に鳴り響き、ドラムのアンドリュー・ミルクがビシバシ叩き出すビートか鼓膜を震わせる。
メンバーの3人全員がメインボーカルで、絶妙なバランスで掛け合いをしながらステージが進んでいく。
今年の1月に三枚目の『The Official Body』がリリースされたばかりの彼ら。今後、スターダムを駆け上がっていくバンドになることだろう。

Photo by Takafumi Miura

オウト
カナダはモントリオールのロックバンド、オウトがウォータールー・レコーズ主催のお昼の無料パーティーに姿を見せた。
スロントマン、ティム・ダーシーの声がジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスを想起させることもあり、ポストパンクの香りが漂うバンドだ。音の随所にザ・ストロークスをはじめとしたロックンロール・リバイバル感もある。ミュージシャン・シップも高く、派手なパフォーマンスはないものの、安定感ある演奏でオーディエンスを沸かせていく。
ハイライトは、本セットの後半にやった”Beautiful Blue Sky”という曲。晴れ上がったオースティンの空に感動的に響き渡った。
先月、彼らの3枚目のアルバムとなる『Room Inside the World』をリリースし、ここまま全米、全英ツアーに突入する。要チェックのバンドだ。

Photo by Takafumi Miura

ハインズ
スペインのマドリッドで結成された4ピースガールズ・ロックバンドのハインズ(Hinds)がSXSWのオフィシャルベニューの一つ、ホテル・ベガスの屋外ステージ、パティオに登場した。
プライマル・スクリームのボビーをはじめ、様々なアーティストやメディアからラブコールを受けまくりの彼女たち。会場はオーディエンスでぎっしりだ。
ラモーンズを更にラフにしたようなロックンロールを立て続けに披露してオーディエンスの期待に応える。演奏が決して上手いわけではないし、カルロッタ・コシアルスの歌も声域が広くなく、すぐに叫びに変わってしまう。が、そんなことをぶっ飛ばしてしまうほどの得体の知れない自信過剰さを伴ったロックンロールに一発で虜になってしまった。
ドラマーのアンバーはこの日が誕生日だったようで、メンバーによるバースデイソングと花束が届けられるという仲の良さを思わせるシーンもあり微笑ましい。SXSW期間中、まだまだたくさんのステージに登場予定。もう一度必ず観に行くことだろう。

Photo by Takafumi Miura

アンドリューW.K.
米国ロック界きっての盛り上げ番長、アンドリューW.K.兄貴が登場!
いつでもどこでも全力で、集ったオーディエンスを楽しませるべくあらん限りにパフォーマンスをするアンドリュー兄貴にはほんとに頭が下がります。年甲斐もなくモッシュにまみれ、ハードにパーティーしてしまった。
ラストは代名詞的1曲の”Party Hard”を93からカウントダウンして投下した。このライヴを一緒に観ていた人の話によると、昼のパーティーでは100からカウントダウンしたらしい。時間が押していたから気をつかったのかな(笑)。掛け値なしに楽し過ぎるライヴだった。

Photo by Takafumi Miura

ビフアンナ
コンベンション・センターに来たら何ともサイケな音が流れて来て、勝手に身体がそちらの方向へ。
ロンドンとマドリッドを拠点に活動する60年代のオーセンティックなガレージサイケを鳴らすバンド、ビフアンナ(Bifannah)だ。
リヴァーブが効きまくりで脳内をグルグル揺さぶる。昼間っからこんなにも最前列で音をザバッと浴びる。快適なルームだし、これはヤバイね!

Photo by Takafumi Miura

(パート2へ続く

Text by Takafumi Miura
Photo by Takafumi Miura