アルカシルカ | 沖縄 騒音舎 | 2018.06.16

沖縄発スラッシュフォーク

沖縄をベースに活動しているアルカシルカ(ALKSLK)が去る6月16日に、沖縄コザ騒音舎でライブを行った。アルカシルカは自らの音楽性をスラッシュフォーク(slash folk)と名乗り、DIYのスタイルでユニークな活動を行っているバンドだ。当日のライブを周辺情報も絡めつつレポートしたい。

会場の騒音舎は、アルカシルカのメンバーが運営しているDIYスペースのNEO POGOTOWN内にある。そこにはCDやTシャツ・エスニック雑貨などを扱っているショップ、バーカウンター、カフェスペース、タトゥースタジオ、練習スタジオがあり、中学校の教室4つ分くらいの広さだ。ビレッジ・バンガードをエスニックな趣きにして、バー・カウンターを中心に、カフェ、ライブハウス、練習スタジオが合体したみたいな感じと言えばイメージいただけるだろうか。
当日のチケット代はドリンク代込で1700円とお手頃な値段、ドリンクの追加注文は利用客が自分で価格を決めて支払うというシステムで、バンドにふさわしいDIYなスペースだと感じた。PAやチケット・ドリンクカウンターもメンバーが担当し、結構な広さのある楽屋には寝袋も用意されていて、ツアーで来たバンドは無料で泊まることができるそうだ。

アルカシルカのバンドとしての成り立ちは、米国のデイズ・ン・デイズ(Days N’ Daze)に影響を受けたストリートに根ざしたフォークパンクのスタイル。ドタバタした性急なビートに、鳴り響くポップなアコーディオンのメロディー、民族音楽に影響を受けた心躍る曲調。どこでもライブが出来るアコースティックなバンド編成にしたかったとのことで騒音舎ができるまでは、実際しばしば廃墟や公園などでライブをやっていたそうだ。

会場は広めのリハーサルスタジオくらいの感じで、右奥にコーラスも担当するドラムのNARUTO、センターにボーカルのYOUとアコーディオンを仁王立ちで構えるMARYが、さらにサイドをクールな出で立ちのギターERINAとベースAOIが固めている。

一曲目は、アコースティックなイントロからはじまり、歌詞が心にしみる「シラフの唄」からキックオフ。「スナフキンの狂詩曲」と続き、セカンドアルバム『窒息寸前』からの強烈なショートチューン「ミザルキカザルイワザル」を投下した。前のめりの性急なビートで、玉手箱をひっくり返したようなやかましい音を奏でている。荒々しい曲やメロウな曲でもアコーディオンの音色が絶妙にしている。ルーツミュージックの流れを汲んだラスティックな雰囲気もあり“土着的”とか“遊牧民的”といった言葉が思い浮かぶ。

三曲が終わったところで、ボーカルのYOUが「自分は天丼がすごい好きで・・・」とはじまるMC「この前有名店だからって行ってみたんですけど、自分の好みの味では無かったんですよね・・・人も一緒で実際に会って話してみないと分からない」。穏やかな語り口とユーモアで人との関わりについてのメッセージを発しフロアから思わずの笑い声と拍手が飛び出す。

全9曲のセットリストで、終始ハイテンションに叫びまくるYOUのボーカルに、NARUTOと高音ボイスMARYのコーラスが絡む。歌詞は日本語詞で独特の言葉遊び(「同じ穴のムジナはイタチごっこ、虎の威を借る狐は捕らぬ狸の皮算用・・・」”現実逃避行”より)を多用しているのが特長で、思わず口ずさむようなフレーズが散りばめられている。終盤には、セカンドアルバムよりドタバタポップチューンの「手錠と私情」を演奏した。キャッチーだが、どこか懐かしい感じのメロディーにフロアもこの日一番の盛り上がりを見せた。ピリ辛なメッセージを込めつつも、ユーモアを忘れずに歌っている。

今日のライブでは自分が一番好きな「現実逃避行」は、残念ながら聴けなかった。日々の生活に追われてしまって、大切な感情が削ぎ落とされそうになったら田舎にで逃げ出してみよう!との思いで作られたこの曲は、仕事に疲れた帰り道に聞くとじ~んと心にしみる。ライブではあまりやらないとのことだが、いつかライブで聴いてみたい。

9月からは東欧ツアー、台湾ツアー、国内ツアー、インドネシアツアーが控えている。アルカシルカは、もっといろいろな場所に行って、多種多様な人たちと出会い、様々な経験をしたいそうだ。今後、ますます彼らの動向から目が離せない。

セットリスト:
シラフの唄
スナフキンの狂詩曲
ミザルキカザルイワザル
ラブアンドピースにクソ喰らえ
えっとそれから
野暮な話
諸行無常
手錠と私情

▼Artist Info.
2015年、沖縄にて結成。パンク、ハードコア、伝統音楽、レベル・ミュージック、ルーツ・ミュージックに影響を受けている。バンド名の「アルカシルカ」(ALKASILKA)とは沖縄の古い言葉(方言)で”一切合切””The Universe, All Things”を意味している。

Official HP
http://cxhx6.com/alkslk/

Menmber
Vo.YOU / Ba.AOI / Dr.NARUTO / Gt.ERINA / Acco.MARY

Discography
2015年 1st デモCD「生後一ヶ月目」
2016年 デモ CDEP「反戦大戦争」
2016年 カセット「WAR WAR WAR」
2017年 2nd デモCD「窒息寸前」

東欧ツアー後には、CDをリリース予定。年内にはオーストラリアのレーベルよりレコード及びカセットをリリース予定し、デモ音源ではレコーディング、ミキシング、デサインなどもメンバー自身が行っている。なお2nd デモCD 「窒息寸前」以外はソールドアウトとなっている。

音源 「手錠と私情」(英語曲名 Hello,Hero! )

動画 「現実逃避行」

Tour Dates
2018年9月 東欧ツアー(オーストリア・スロベニア・クロアチア・イタリア・ドイツ・チェコ etc.)9/5-16、台北 9/20
2018年
 11/22(木) 東京 新宿Loft
 11/23(金) 栃木TBA 中止
 11/24(土) 東京 西荻窪Pit Bar
 11/25(日) 静岡TBA
 11/26(月) 愛知TBA
 11/27(火) 三重 四日市Vortex
 11/28(水) 大阪TBA
 11/29(木) 岡山TBA
 11/30(金) 広島TBA
 12/01(土) 山口TBA
 12/02(日) 福岡 四次元
2018年12月 ジャカルタ(MARJINALと共演)

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Text by Hideyuki Miyoshi
Photo by Hideyuki Miyoshi