WILKO JOHNSON | 京都 磔磔 | 2018.9.23

不滅のギターヒーロー

磔磔のステージ後方には今回も名物の看板が掲げられていた。「不滅」と書かれたそれを、開演前の観客はスマホを掲げて写真に収めていた。9月18日から24日まで行われたウィルコ・ジョンソンのジャパン・ツアー京都編は酒蔵を生かした老舗のライブハウス磔磔で、ウィルコがプライベートでも訪れるというここは、いわば彼にとっての日本の故郷のようなもの。もちろんこの日もチケットはソールドアウトした。

2階の楽屋からノーマン・ワットロイ(Ba)ディラン・ハウ(Dr)を従えて客の脇を通ってウィルコが降りてくると、拍手と歓声に沸いた。30年ぶりに出されたオリジナルアルバム『ブロウ・ユア・マインド』から”Love the way you do”でライブが始まると、新曲を待ちかねていた観客は、微笑み、頷き、体を揺らしながら聞き入っていた。”Going back home”の頭でディランが入るタイミングが合わず、ニヤリと笑うウィルコが仕切り直した後は、ステージ狭しと動き回る距離に比例するかのようにフロアも盛り上がっていった。

新譜からは”Marijuana”のような聞かせる歌モノもあるかと思えば、”That’s the way I love you”の軽快で饒舌なギターリフが魅力的な楽曲も演奏され、ウィルコらしさに溢れて飽きさせない。前半、時折3人のアンサンブルが崩れる場面も見られたが、”When I’m gone”ではノーマンの顔で弾く(かのような)ベースと、ウィルコの焦らしながらタメるギターが掛け合う様がまるで即興セッションのようで、思わず息を飲んだ。徐々にアタック音をあげるウィルコのギターにこれでもかとウネウネとグルーヴを生み出すノーマンのベースに、ディランは集中して合わせ、3人の世界に引き込まれながら迎えた最大の盛り上がりにマシンガンギターの連射ときたから、たまらない! フロアからは、ウィルコに撃たれたい人の手がいくつも挙がった。

本編最後はおなじみとなった”Back in the night””She does it right”の怒涛のロックンロール祭り。磔磔に来たらこれを聞かずに帰れないと言わんばかりのフロアの盛り上がりに、楽屋に戻らず続けざまにアンコール”Bye Bye Johnny”が演奏され、コールアンドレスポンスを促すようなジェスチャーも見せた。筆者はこんなに楽しそうに「バイバイ」というウィルコを初めて見た。70歳を越えて衰えぬ声量とパフォーマンスだけでも並外れているが、余命宣告されていた事実を見るものに忘れさせるステージングは只々驚嘆するばかりで、まさにこの日、不滅を証明してみせた。

ジャパン・ツアーは昨日9月24日(月)の広島公演で終了したが、急遽本日9月25日(火)「磔磔スペシャル公開収録セッション20180925」としてウィルコ・ジョンソン&近藤房之助麗蘭(仲井戸”CHABO”麗市&土屋”蘭丸”公平)の磔磔ライブが決定した。2019年の公開に向けた、磔磔のドキュメント映像作品の一環だそうで、こちらも今から楽しみである。

▼渋谷クラブクアトロ フォトレポート(速報)、ライブレポートはこちら
フォトレポート:http://limpress.com/report/4602
ライブレポート:http://limpress.com/report/4627

▼WILKO JOHNSON | 記事一覧
SMASHING MAG アーカイブス

Text by Tomoko Okabe
Photo by Tomoko Okabe