Räfven | 東京 SHIBUYA CLUB QUATTRO | 2018.9.27

格好よさに溺れず、素朴さに甘えず

ライヴ会場で、お客さんたちが発する音は、手拍子、歓声、歌の合唱である。その音の1人当たりの大きさがかなり大きかったライヴだった。バンドはその日のお客さんの入りや盛り上がり具合を探りながらライヴに入っていくのが通常だけど、この日のライヴは始まってすぐにトップに入った。

スウェーデンからきたレーヴェンは2度のフジロック、朝霧JAMや単独公演でいつも全力で会場を盛り上げて楽しい記憶をお土産にして帰っていった。前回の来日から3年経って、みんな覚えているかなと思ったけど、渋谷クラブクアトロのフロアはちゃんと覚えている人たちが集まっていた。

スペシャルゲストのチャラン・ポ・ランタンは、前回のフジロックで共演経験あるし、レーヴェンへの尊敬と愛情を歌やMCで感じさせた。20分の短さではあったけど、これもレーヴェンのライヴの一部ではないかと思うくらいに会場は沸いていた。

そして20:40ころ、レーヴェンが登場する。ステージ下手からギターのヨナス、アコーディオンのヨハン、トロンボーン/トランペットのデイヴィッド、サックスのマーティン、タンブラ(バルカン半島から伝わるマンドリンのような形でネックが長い楽器)のダニエル、ヴァイオリンのロークと並ぶ。後ろにベースのラスマスとドラムのパーがいる。

この並びは曲によって変わるけど、割とマーティンが中心にいることが多い。ライヴは鋭いギターのリフが鳴って”Kampen”から始まった。パンクの速さ、激しさ、格好よさを基にしながら、北欧、東欧、南欧、西欧、さまざまなルーツから哀愁のヨーロッパのすべてをぶち込んだノスタルジックなメロディに踊らされる。

楽しさと激しさと物悲しさが同居して全てまとめて疾走していくライヴは、時折ヴァイオリンのピチカート奏法などスローな場面を作って緩急自在だ。フロアにサークルを作らせてラインダンスを踊らせる。その後激しいモッシュへとか、お客さんたちを座らせてジャンプとか、マーティンが恒例のフラフープをおこなうなど、会場を盛り上げることはなんでもおこなう。路上でライヴハウスでフェスティバルで鍛えられた演奏力--たんに楽器が上手いということだけでなく、目の前の人たちの心をつかむ力--を感じる。

“La Mine Ploua Cu Bani”では、チャラン・ポ・ランタンの2人が招かれる。小柄な2人のマイクスタンドの位置をさりげなく直してあげるところが、さすがスウェーデンの男である。そして「歌詞が送られてきたけど、なんて書いてあるのかさっぱりわからないので、日本語の歌詞をつけました」といって、歌いだしたのが「知らないわこの曲は~ララララ~ララララ~なんて歌ってるか分からん~」と身もふたもない歌詞にして会場を笑わせた。

目の前のお客さんとの呼吸によってライヴができ上がるということをずっと感じることができた。パンクという格好いい音楽、フォークという素朴な音楽が合わさっているけど、格好よさに溺れず、素朴さに甘えず、常に相手があっての音楽だとわかっている。ステージの上から一方的に音楽を送り付けるのではないということ。レーヴェンが愛されるのがよくわかる。

RIDDIMATESのBuchi*がトランペットで参加したり、アンコールで再びチャラン・ポ・ランタンが登場してロシア歌謡の「カチューシャ」を演奏したり、2度目のアンコールではマーティンがペンギンの、ダニエルはドラゴンの着ぐるみを着て登場し最後まで楽しませてくれたのだった。

<setlist>

1.Kampen
2.Basmarsch
3.Karate kubben
4.T-Fox
5.Ale Brider
6.Kajutan bues
7.Umpa
8.Just exotic enough
9.Bra dar for skagg
10.Karamell
11.Vals till doden
12.Dagsandor och ho
13.Jetlag
14.Knottnatt
15.Schabrak
16.Opus 2

17.La Mine
18.Milijonmarschen
19.Laika
20.Coombo nr 7
21.En strang kvar
22.Ae Schwester
23.Boris
24.Katten
25.Joschka

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Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Keiko Hirakawa