TRAVIS | Zepp DiverCity(TOKYO) | 2017.02.14

いつもの贈り物

会場に入ったときにはピーター・ゲイブリエルの「スレッジハンマー」が流れていた。懐かしいと感じていたところ、ライト・セッド・フレッドアイム・トゥ・セクシー」に変わってちょっと笑った。すると続けて「ドント・トーク・ジャスト・キッス」になって、立て続けにライト・セッド・フレッドという選曲にこれは笑わせてリラックスするということなのかな? と思う。その後しばらく流れていたのは、70~80年代に流れていそうなディスコの曲で、あんまりトラヴィスのキャラ的に合わなさそう。そしてコミュナーズの「ドント・リーヴ・ミー・ディス・ウェイ」までかかるという。みんな仲良しだしメッセージなのかな? と思ったら19時13分ころ場内が暗くなり、スティーヴ・ライヒディファレント・トレインズ‐アメリカ‐ビフォア・ザ・ウォー」でメンバーが登場する。

ステージには、新しいアルバム『エヴリシング・アット・ワンス』のジャケットと同じように高層ビルのフィギュアがいくつか置かれている。隣に人が立つと特撮映画のようにみえる。ステージ下手から、ベースのダギー・ペイン、ヴォーカルとギターでフラン・ヒーリィ、ギターのアンディ・ダンロップ、奥にドラムスでニール・プリムローズといつもの並び。

まず最初の曲を演奏しようとしたら、出だしをミスしたらしく、苦笑いでやり直し「エヴリシング・アット・ワンス」でライヴは始まった。

すでに20年のキャリアを重ねるトラヴィスにはさまざまな定番があり、ステージ脇にバンジョーが用意されたら「シング」、「ホエア・ユー・スタンド」ではフランがフロアに降りてお客さんたちのなかで歌う、「クローサー」では大合唱を促す、「フラワーズ・イン・ザ・ウィンドウ」ではフランひとりマイク無し歌う、新たな定番となった「マグニフィセント・タイム」では振付の指導がありみんなでそれを踊るというように、「いつもの」が提供される安心感がある。ファンもよく心得ている人が多くてきっちりと応え、フロアは盛り上がりをみせた。

もちろん、そうしたことをしなくても盛り上がるだろう。シンプルによいメロディの曲がよい声で歌われ、盤石の演奏で楽しめる。トラヴィスはそれを裏切らずに続けてきた。目線がファンとともにあり、その先にファンサービスがあるのだ。その視点があるからフランがカラオケにいったことや世界情勢について語っても親しみを増す。人柄なのだ。あとダギーも非常に素晴らしい声でリードを取ったり、コーラスしていたのも印象に残った。

今でも演奏されている数少ないトラヴィスのハードにロックする曲である「オール・アイ・ウォント・トゥ・ドゥ・イズ・ロック」、そして染み入るバラード「ターン」で本編を締める。アンコールは先述の「フラワーズ・イン・ザ・ウィンドウ」でフランがひとりでてきて、メンバーが戻ってきて「マイ・アイズ」、みんなが踊る「マグニフィセント・タイム」。最後はやっぱり定番「ホワイ・ダズ・イット・オールウェイズ・レイン・オン・ミー?」だった。それまでに会場の期待に応えてきたバンドが最後にプレゼントしたのは「いつもの」だけど、これを待っていたわけだし、その信頼感を確かめたライヴだった。メンバーが去り、場内が明るくなって、再びピーター・ゲイブリエル「スレッジハンマー」が流れた。

— set list —  

Everything at Once / Sing / Selfish Jean / Writing to Reach You / Love Will Come Through / Driftwood / Animals / Re-Offender / Side / Where You Stand / Moving / Paralysed / Closer / All I Want to Do Is Rock / Turn

— encore –(原文ママ)  
Flowers / My Eyes / Magnificent Time / Rain

SMASHING MAG | 過去記事

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Keiko Hirakawa