今度こそ
これは成長というしかない。キャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメンの赤坂ブリッツでのライヴは2年のうちにここまで進化したのかという驚きと喜びがあった。2年前、代官山ユニットで彼らをみたときは、新人にしては完成度が高いステージをみせてくれたけれども、やはりまだ経験を積んでなかったと、今にして思う。
残念だったのが、初来日と同じ年のフジロックにでられなかったことで、成長途上の姿をみせてくれれば日本での人気も変わっていたのかもしれない。それから、今回のライヴまで新しいアルバム『ザ・ライド』を作り、それが本国UKで好評で迎えられた。飛行機の問題で大阪公演がキャンセルになったのは残念だったけれども、バンドの調子はよさそうだし、期待を持って会場に向かった。
赤坂ブリッツはほぼ満員。ステージ背後には『ザ・ライド』のジャケットと同じ尻尾をくわえたワニのイラストが掲げられている。ウロボロスの蛇(竜)に関係があるのだろうか。
始まる前は、エヴリシング・エヴリシングやビートルズやジャック・ホワイトやストロークスなどが流れている。ディーン・マーティン「エイント・ザット・ア・キック・イン・ザ・ヘッド」が流れて会場内が暗くなる。19時45分ころメンバーが登場し、「ホームシック」からライヴがスタートする。それからアンコールなし約1時間10分というコンパクトな中に非常に充実したライヴをみせてくれた。
やはり、フロントに立つヴォーカル&ギターのライアン・エヴァン・マッキャン(ヴァン)がエンターテナーとしてのスイッチが入ったようにアグレッシヴに動き回っていた。床に置いてある照明を抱えて客席に向ける、客席から渡された日の丸をギターのジョニー・ボンド(ボンディー)にマントのように掛ける、ステージ下手のスピーカーに登る、マイクを最前のお客さんに渡す、最後にはマイクスタンドと共にアンプに登り、マイクスタンドに日の丸を掛けるなど、見た目にもお客さんたちを沸かせた。それでいて歌や演奏は怠らない。ここまで伸び伸びと動き回るようになったとは。2年前も新人らしからぬ雰囲気を漂わせていたけれども、ここまでになるとは予想をはるかに超えている。
そんなバンドを際立たせているのは、UKらしいギターロックの基本を押さえつつ、そこからさらに飛び立とうとしている曲の数々。新しいアルバムよりも、前作『ザ・バルコニー』の方がより多く演奏されたのだけど、『ザ・バルコニー』はやっぱりいい曲多い傑作だったのだなと感じた。曲に静から動への起伏あり、メロディアスで印象残るサビを持つ。『ザ・ライド』からの曲もステージで演奏されると生き生きしたものになる。ライヴで生きるバンドである。
このライヴに関しては、どれもピークといってもいいくらいずっと沸点が続いていた。特に、というのならば「7」「コクーン」「タイラント」の終盤はドラマティックにライヴを締めて、次のライヴに期待を持たせるようなものだった。短い時間だったけど十分満足した。だけど、もっと聴きたい。今度こそ体調を整え、フジロックにでることを待ち望む。
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