ザ50回転ズ | 兵庫 神戸VARIT. | 2025.09.21

大いなるロックンロールの包容力

9/21(日)に、ザ50回転ズのワンマンツアー2025『Ready! Steady! Rock! Tour』のキックオフとなる公演が神戸VARIT.にて開催された。ザ50回転ズといえば、当メディアでは長年追っているNobuyuki Ikeda氏やTomoko Okabe氏によるレポートが名物だが、今回ははじめてライブに居合わせた筆者によるレポートにお付き合いいただきたい。往年のファンの皆々様も、初体験のフレッシュな視点を感じていただけると幸いだ。

まだ夏を引きずった暑さながら、少し秋の気配を漂わせる日曜日。比較的早い16時開演を目がけて集まったオーディエンスが再会を懐かしんだりしている様子には、ツアー初日の期待感が見てとれる。年齢層は若干高めに見えるが、若い層もそこそこ多いようだ。近頃だと9mm Parabellum Bullet、サバシスター、THE BAWDIES、フラワーカンパニーズ、奇妙礼太郎、おとぼけビ〜バ〜、少年ナイフ、騒音寺などなど、ファン層もさまざまなアーティスト達と対バンを繰り返し、そこで確実に人々の心を掴んできたことを感じさせる。ステージにはなんとも心躍るツアータイトルのロゴがビッカビカに輝いている。こりゃあ楽しみじゃないか。

チャック・ベリー“Maybellene”やザ・クラッシュ“White Riot”など、先達へのリスペクトを漂わせる場内SEに揺られながら待っていると、開演20分前にしてフロアはわりとパンパンに。3回ほど「まだまだ人が来るので前に詰めてください」のアナウンスがあったくらいに人が詰めかけていたが、それでも何度もビールをおかわりしに出入りする人もいたりと、いい感じにリラックスした雰囲気だ。定番だという入場SEのドクター・フィールグッド“Riot in Cell Block Number 9”に乗せて、ボギー(Dr / Vo)、ドリー(Ba / Vo)、ダニー(Gt / Vo)が続々と登場し、大歓声で応えるオーディエンス。さあ、準備はOKだ。

「この街からはじめるぞ!」と意気揚々と繰り出したのは、キレのいいギターリフに一発で惹かれる“たまにはラブソングを”。「Hey! oh! let’s go!」とフロアみんなで歌いながら遠くの街へ旅立つこの曲は、ツアーの開幕にピッタリだ。リズム隊が駆動するラモーンズ直系の明快な歌がクセになる“SPACE ROCK”や、軽快なギターカッティングが冴え渡る“KILLER”でも、存分にスリーピースの持ち味を発揮するザ50回転ズの3人。何一つ無駄なものがない、これしかないってバンドサウンドに、はやくもフロアは熱狂の渦が巻き起こる。

「ノってるかい!オレ達もノってるぜ!ええ気持ちにさせてくれるぜみんな!」とダニー。こってこて過ぎる煽り方を自分達でもイジっていたが、「ダニー!」「ボギちゃーん!」「かっこいいー!」とさまざまな声が飛び交うフロアは、気のおけない親しみが溢れている。ダニーは「ツアースタートは神戸に限る!」と言っていたが、はじめて来た僕も「このツアースタートがザ50回転ズとこの街のみんなの風物詩なんだろうな」なんてことを思ったものだ。

はじめて観る人でも2回し目ではもう歌えるキャッチーさが光る“レッツゴー3匹!!”に続いて、ドリーの小気味のいいボーカルが印象的な“サンダーボーイ”や、ボギーがたくましく歌い上げる“夜明けに走れ”など、それぞれ個性の違うボーカルでフロアをグッと掴むザ50回転ズ。ダニーも「いぇーい!最高です!楽しんでまーす!」と話したり、タオルを掲げるオーディエンスに「ありがとう!ずいぶん古いやつやなそれ!」と笑ったりと、このひと時を心から楽しんでいるようだ。

大阪から持ってきたこのナンバー。ブルージィな哀愁を奏でた“新世界ブルース”は、やたら仰々しい昭和歌謡的なコーラスワークが、なんとも味わい深いムードを醸し出している。“ぬけがらロック”はミドルテンポのカラッとしたギターロックで、シンプルに誰もがシンガロングできる前半から歌が沁みる感じになってきたなーと思っていたら、“ダンスのブルース”では迫真のバンドセッションが繰り広げられる。その中でもドリフのようなひょうきんなフレーズを織り交ぜたり、“エイトビートが止まらない”では、メロイック・サインというよりはキツネみたいな感じでみんなで手を挙げたり。決して前のめり一辺倒ではないさまざまな情感が溢れるバイブスは、21年目の熟練のライブ運びを感じさせた。

ここからは「お楽しみコーナー」とのことで、ウッドベースを持ち出すドリー。弾く(はじく)音の存在感も光るブリブリな弦に乗せてギターとドラムも合流し、「ジャズはじめます」とベニー・グッドマンのバージョンも有名なジャズスタンダード“Sing, Sing, Sing (With a Swing)”を披露したかと思ったら、「スネア入れてみよか?カントリーのやつもやってみよか?」と、チャック・ベリー“Thirty Days”。こうサラッと古き良き憧憬を奏でてくれるんだからたまらない。そして「オレ達に残されたウッドベースソングはロカビリーしかございません」と“ホテルカスバ”に移行した時の、ゾクゾクする高揚感といったら。文字通り、ザ50回転ズの幅広い音楽性にワクワクするお楽しみコーナーであった。

ハーモニーを噛み締めながら、ワルツのリズムでしんみりと歌に聴き入る“故郷の海よ”に、どこか郷愁を感じさせるメロディが印象的な最新シングル“NO FUTURE じゃいられない”。歌のメッセージがスッと入ってくるようになってきた後半は、往年のTHE BLUE HEARTSなどを思わせる、真っ直ぐで雄大なスケールのバンドサウンドがフロアを満たしていく。ハイフレットで奏でるベースの推進力に乗せて、希望溢れる情景を描いた“デヴィッド・ボウイをきどって”に続いて、とりわけ印象的だったのが“WE ARE THE KIDS”。ずーっと拳を突き上げている前方の兄さん、祈るポーズで見つめる隣のおっちゃん。2F前列の大学生くらいのお姉さんも、感じ入るような表情で見つめている。誰もが心からここにいていいんだと感じられる、おおらかなロックンロールの包容力が、VARIT.に居合わせた全員を包み込んだ瞬間だった。

“船乗りたちのメロディ”で飛び跳ねるみんな。たくましいバンドサウンドで僕らを鼓舞する“あの日の空から”も、日頃の忙しさや暗いニュースなんかでがんじがらめになった、僕らの心を解きほぐすあたたかさがある。顔で弾いているとしか言いようがないくらい表情豊かなダニーは、振り上げた手や視線一つひとつに応えていて、“Youngers On The Road”や“Vinyl Change The World”でもみくちゃになっていくフロアの、全身全霊で気持ちをぶちまける光景にはグッときたものだ。「ツアー行ってきます!」と語る姿を送り出す壮行会のようでもあったこの日の集いは、“おさらばブギウギ”まで一瞬もダレることなく駆け抜けて、本編が終了。でもまだまだ観ていたいとばかりに熱気を増すフロアに手拍子がこだましている。

わりとしっかりと焦らしてから、満を持して始まったアンコールの“MONEY! MONEY!”は、カラッと明るいサウンドだからこそ、皮肉っぽさがかえって滲む歌が印象的。そして“50回転ズのテーマ”は、ここまで彼らの精神性をおおいに感じてきたからこそ沁みる沁みる…。ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズの“Too Much Jukie Business”が流れる中で丁寧にフロアにお辞儀をし、ザ50回転ズの3人はステージをあとにした。と思ったらダブルアンコールの“涙のスターダスト・トレイン”!さすがにもうないだろうと帰りはじめつつあったフロアもこれには驚いていて、感極まった表情ではっちゃけるみんなとともに、心底満たされた気持ちでこの日のライブは終演を迎えた。

「ツアー初日が神戸でよかったぜ!みんなに会えてよかったぞ!」と語る言葉を清々しい気持ちで受け取れたのは、僕らが全力でザ50回転ズを求め、ザ50回転ズも心から僕らを必要としている、気持ちのいい信頼関係が感じられたからだろう。アツい絆を感じさせつつ、僕のようなはじめて観る人も気圧されたりせず気づいたら夢中になる、大いなるロックンロールの包容力。こんなものに当てられてしまえば、冒頭に書いたような対バン目当ての若い層が掴まれるのも、納得というものだろう。そんな3人の魅力が余すことなく堪能できる、全国20ヶ所を巡るワンマンツアー『Ready! Steady! Rock! Tour』ははじまったばかり。今度はぜひあなたの街でザ50回転ズの勇姿を目撃して欲しい。

 

ザ50回転ズ ワンマンツアー2025『Ready! Steady! Rock! Tour』

9/21(日) 神戸VARIT.
9/23(火祝) 和歌山GATE

11/8までの公演は下記プレイガイドで一般チケット発売中!
ローチケ / e+ / チケットぴあ

9/27(土)京都磔磔
9/28(日)四日市CLUB ROOTS
10/4(土)新潟GOLDEN PIGS BLACK
10/5(日)HEAVEN’S ROCK宇都宮 VJ-2
10/7(火)F.A.D YOKOHAMA
10/11(土)郡山#9
10/12(日)仙台LIVE HOUSE enn 2nd
10/25(土)苫小牧ELLCUBE
10/26(日)札幌cube garden
11/1(土)大分CLUB SPOT
11/2(日)熊本NAVARO
11/7(金)高松DIME
11/8(土)出雲APOLLO

11/22以降の5公演はオフィシャル2次先行の先着受付開始!
早割りチケット4,500円 チケットぴあ(福岡、岡山、名古屋、大阪、東京5公演対象)
受付:~9/28(日)23:59

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11/22(土)福岡INSA
11/24(月祝)岡山CRAZYMAMA 2nd Room
11/30(日)名古屋SPADE BOX
12/14(日)心斎橋BIGCAT
12/20(土)渋谷WWW X

Text by Hitoshi Abe
Photo by Mari Kobayashi