ここは熱い現場
こんなに温度が低いのは経験のない極寒の東京。そんな東京でライヴがおこなわれると「気温は低くてもここだけは熱かった」という常套句を使いたくなるのだろう。この日、実際いろんなところで「熱い現場」があっただろうけど、この渋谷O-EASTでおこなわれたジ・インターネットのライヴは、使い古されたその言葉を敢えていってしまいそうになるようなステージだった。
発表された音源を聴くとオシャレR&Bのようで、どちらかといえばクールな印象を受けていたのだけど、ライヴでは大違い。演奏もお客さんたちも熱かったのだ。
19時を回って入ったライヴハウスはすでにほぼ満員状態。ずっとハービー・ハンコックの”Watermelon Man”などのジャズが静かに流れている。お客さんは外国人比率が高く、男女の比率も自分がよくいくライヴよりは女性の比率が高かった感じだった。オシャレでパーティ感漂う空間で、いつものO-EASTとは異なっていた。
19時45分ころにジ・インターネットが登場する。下手からドラムのクリストファー・スミス、ベースのパトリック・ペイジ、ギターのスティーヴ・レイシー、そして上手にキーボードのマット・マーシャンズが並び、演奏を始める。さらにヴォーカルのシド・ザ・キッドが現れるとフロアから大歓声が沸き起こる。シドやスティーヴやマットが手拍子や腕を左右に振ることを促すと即座に反応する。サビでは合唱、コール&レスポンスも決めステージとフロアの一体感もある。
始めは、ボーイッシュというには男前すぎるルックスを持つシドが美しい女性の声をだし、演奏を引っ張っていく。また、スティーヴが大きくフィーチャーされ、ソロコーナーではテレキャスターのギターを持ったまま、お客さん近くのステージ端まででてきて歌う。そして、リズムを支えるベースとドラムがテクニカルで激しかった。オシャレでクールなヒップホップ風味のR&Bというイメージを与える録音された音源と違うところで、むしろ、大昔のソウルやファンクを受け継ぐもので、ジェームス・ブラウンのバックバンドを聴いたときと同じように「上手いなぁ」と感じるところが何回もあった。ここが熱さの元だったのである。
選曲は『Ego Death』からが中心で、”Gabby”から始まり、イントロだけで大歓声、“Just Sayin’”では「you f〇cked up」と何回か練習させてから実際に大合唱させるなんていうイタズラ心も面白かった。ただ、ミキシングのバランスのせいか、シドの声が若干演奏に埋もれていたので、もうちょっとヴォーカルが前面にでるようにしたほうがよかったかも。
だけど、トータルで十分に満足。自分の隣で観ていた黒人の女の子が歌詞をほぼ覚えているけど、歌は小声で歌い、コール&レスポンスでは元気に返すというノリのよさが好ましかった。ライヴが終わり、ダフト・パンクの”Get Lucky”が流れるなか、それに合わせてお客さんたちが一斉に手拍子、そしてアンコールを求める声を上げる。客電が点いてもそれはしばらく止まなかった。アンコールに応えることはなかったけど、十分に満足できたのではないだろうか。
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