MY BLOODY VALENTINE | 東京 東京ガーデンシアター | 2026.02.09

ガーデンシアターを揺らせた唯一無二の音響体験

マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(以下MBV)が有明の東京ガーデンシアターで観られるというのは感慨深い。音源を活発にリリースしているわけでもないのに人気が高まっていく。2008年に再始動しフジロックにでて以来、2013年に新木場スタジオコースト(約2,400人)、東京国際フォーラム(約5,000人。相対性理論がオープニングアクト)、2018年に豊洲PIT(約3,000人。2日後にソニックマニアに出演)と会場を埋めていった。

今回、東京では東京ガーデンシアター(約8,000人)で2回、大阪で2回ライヴがおこなわれたけど、すべてソールドアウトだった。MBV以降のアーティストたちがMBVへの影響と敬意を語ることによって、そしてMBVのライヴを体験した人たちがその様子を語ることによって伝説となり、どんどん存在が大きくなっていった結果がこのソールドアウトにつながっていったのだろう。

自分は2008年のフジロックがフジロック史に残る至高の体験として忘れられないものとなっている。それを追い求めてMBVのライヴに足を運ぶのだった。

会場は30〜40代くらいが中心で男性が多め。リアルタイムの世代はすでに50代だからその後の世代にも確実に届いている。外国人も目につく。始まる前はCANとかノイ!などのクラウトロック(70年代ドイツのロック)が流れていた。19時5分ころ、Shazamを起動させるとハンス・ヨアヒム・ローデリウスの“Geradewohl”とタイトルが表示された電子音が特徴的な曲が流れてメンバーが登場した。

入り口で配布された耳栓でなく、以前買っておいたライヴ用の耳栓を装着して迎えるも、1曲目“I Only Said”ではじまる。いきなりゴリっとした音の塊が襲ってきた。耳を超えて体に直接作用する。そしてこのライヴで感じるのは各楽器の分離がよくてそれぞれのプレイがダイレクトに聴こえてくる。曲によってはケヴィンがアコースティックギターを弾くけど、ちゃんと聴き分けられた。轟音なのに音がよい。

Photo by Kazma Kobayashi(@Tokyo Garden Theater)

ステージ上手にいるケヴィン・シールズはステージ袖に置いてあるたくさんのギターを曲ごとに変える。下手には白っぽいドレスを着たビリンダ・ブッチャーがうつむいてギターを弾く。ドラムのコルム・オキーソーグとベースのデビー・グッギが中央奥にいて激しくプレイする。コルムのドラムの叩き方が狂気を孕んでいるようにみえて、デビーのベースとともにライヴの始まりで感じたゴリッとした音はこの2人から来ているのかもしれない。

さらにサポートでキーボードorギターの人が曲によって出入りする。轟音の中で浮遊するような音が聴こえてくるのが1991年の名盤『Loveless』の特徴で、このライヴではその音を生で体験できたのだった。

どの曲もよかったけど、特にケヴィンの右手のストロークがダイレクトに聴けるような“Soon”とか、コルムもギターを持ち激しく弾く“Wonder 2”がよかった。“Wonder 2”はドラムンベースのリズムに乗り背後のスクリーンに映される映像と相まってジェットコースターに乗っているような気持ちになった。もちろん、ラストの“You Made Me Realise”は迫力あり、恒例のノイズ攻撃は5〜6分だったけど、フジロックのときみたいに20分くらい聴きたいと感じさせる唯一無二の音響体験である。

ただ、機材のトラブルがあって数分間中断したり、何度か演奏のやり直しをしたりという場面があった。ケヴィンらしい完全主義を物語ることでもあるけど、それによって集中力が削がれたのも事実である。仕方ないところもあるだろうし、それで出てきた音は素晴らしかったけども、それがなかったらどこまでいけたのか景色が観たかった。

客電が点いてエレクトリック・ライト・オーケストラの“Livin’ Thing”が流れて、大勢の人たちが出口に向かう中、先ほどまで会場全体を揺らすような轟音と、明るくポップな曲との落差にクラクラしながら自分もその流れに乗って出口へと向かう。

※写真は2月6日公演のものです

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by  Kazma Kobayashi