逆境を存在感へ変える底力
eastern youthが2月4日、川崎で行われたBAYCAMP 201802に出演した。同イベントに出演するのは2年ぶりである。
出演時間の17時50分。メンバーが川崎クラブチッタのステージに登場した。紫1色の照明に照らされ、緊張感をたたえた空気のなか、”ソンゲントジユウ”のイントロが鳴らされる。3人が放出する爆音と、曲間で紡ぎ出す静寂が、観客を圧倒していく。
吉野寿(Gt/Vo)はMCで「我々、(フェスで観客の盛り上がりが)ワーッとすごい状態のなかでやらせていただくこともあるんですけれど、僕らが出てきて2曲目くらいでこんな状態ですよ」と静かな観客に向かって言い、笑いが起こる。
最近、吉野がよくライブで発言しているように、この日も観客の振り付けについて「『みんながやるから俺もやる』って、そんなことしなくてもいいんじゃないの?」と語っていた。そのあとに演奏された”同調回路”は、説得力に満ちていた。ラストの”街の底”では、ステージ中央のせり出したところに吉野が出ていき、柵に足をかけるほど最前列の観客の目前に迫り、驚かせる場面もあった。
若手のバンドが大半の、イベントのラインナップ。20代が中心の客層。単色メインで、渋く迫力のある照明だったぶん、フロアも暗く、バンドからも観客の反応が見えづらい、となかなかのアウェイと呼ぶべき状況であった。それでも、柵前からフロアの観客の表情を見れば真剣に聞き入っていることはわかる。吉野のギターの音の鋭さ、迫真のボーカル、村岡ゆか(Ba)、田森篤哉(Dr)のリズム隊の堅牢なコンビネーションも、静けさのなか一層映えていた。逆境を別格の存在感に変えて提示し得たのは、eastern youthが長いキャリアのなかでオルタナティブな道を突き進み、培ってきた底力ゆえである。
— set list —
ソンゲントジユウ / 明けない夜はないのだ / 男子畢生危機一髪 / 素晴らしい世界 / 同調回路 / 街の底
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