ザ50回転ズ | 東京 渋谷WWW X | 2018.7.1

新アルバム『ザ50回転ズ』発売に伴った充実のツアー

50回転ズはバンド名をタイトルにした9年ぶりのフルアルバム『ザ50回転ズ』の発売に伴うツアーをおこなっていて、最終盤に差し掛かっていた。その渋谷www xのフロアはほぼ埋まっていた。日曜日の16時スタートという絶妙な時間設定がよかったのだろうか。

会場にはずっとオーティス・レディングが流れていた。16時5分ころ、オーティスが歌う「ルイ・ルイ」の音が大きくなって客電が落ちて、歓声が上がる。そしていつものようにドクター・フィールグッド「Riot in Cell Block #9」が流れてバンドが登場する。

この日は新しいアルバムを全曲演奏するということで、まず「純情学園一年生」で始まる。甘酸っぱい学園モノの次は、ビターな味わいのある「ハンバーガーヒル」と続く。そして、軽快に跳ねるモータウンのリズムで「星になった二人」。楽しげな曲の体裁で50回転ズのなかで最も悲しい歌でないか。「ここ」から離れてどこかへいってしまおうという歌詞に根を張る厭世観に胸を締め付けられる。こうした曲をさりげなくだしてくるバンドは深みを増している。

「ヒットパレードもやります……そんな曲あったんか?」とギターのダニーの自虐的なMCのように既存曲も演奏された。まず「レッツゴー3匹!!」でフロアが盛り上がる。ベースのドリーが歌う「サンダーボーイ」、フロアが揺れる「KILLER」、ドラムのボギーによる「エイトビートがとまらない」と続く。

新しいアルバムからの「クレイジー・ジジイ」は70年代のハードなグラムロックのような堂々としたリズムで始まり、途中からテンポが速くなる展開がすばらしい。歌詞はダニーの俺様な世界で、ぶっ飛んだ曲調に合っている。三三七拍子ぽいリズムを使った「ちんぴら街道」。曲の終わりにはちゃんとヴィブラスラップが用意されて「カーッ」という音をだしていた。

ドリーが歌う「Trip! Trip!」のあと、浅草ジンタからトランペットのシーサー、ヘヴンリー・ボーイズやスキャフル・キングからサックスのNARIが登場し、さらにドリーがウッドベースを持ちだしてきて「ホテルカスバ」。ジャズからロカビリーに至る哀愁漂う曲である。ダニーが2人を紹介したあと今度は「新世界ブルース」。初期の「天王寺エレジー」を進化させたような大阪ミナミで繰り広げられる男女のやりとり。エレキギターの効いた演歌にトランペットとサックスが加わって分厚い音が作られた。

フロアの頭が左右に振れた「少年院のソナタ」、ドリーの「1976」と定番の曲が演奏され、新譜から「11時55分」。ノスタルジックな夏のシーンを描いた曲でクールダウンした。

「デヴィッド・ボウイをきどって」は冒頭のアナログシンセをダニーが弾いてからギターの演奏に戻る。その切り替わりがスリリングでフロアから喝采を浴びていた。年取ったお客さんや自分自身を叱咤激励する「あの日の空から」、「涙のスターダストトレイン」「YOUNGERS ON THE ROAD」と定番を畳み掛け、新譜から50回転ズ得意のアイリッシュ(ケルティック)パンクの系譜に連なる「マチルダと旅を」、そして新譜のリードトラックである「Vinyl Change The World」と続けて本編が終わった。

この日は、熱烈なアンコールに応えて3回もおこなった。曲名については、まだツアー日程が残っているのでお楽しみにということにするけど、いつもの曲、ちょっとやってなかった曲などお客さんの期待に沿ったものだった。やっぱりいいバンドだな~と、しみじみ思うのだった。

Set List(本編のみ)
1.純情学園一年生
2.ハンバーガーヒル
3.星になった二人
4.レッツゴー3匹!!
5.サンダーボーイ
6.KILLER
7.エイトビートがとまらない
8.クレイジー・ジジイ
9.ちんぴら街道
10.Trip! Trip!
11.ホテルカスバ
12.新世界ブルース
13.少年院のソナタ
14.1976
15.11時55分
16.デヴィッド・ボウイをきどって
17.あの日の空から
18.涙のスターダスト・トレイン
19.YOUNGERS ON THE ROAD
20.マチルダと旅を
21.Vinyl Change The World

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Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Ryota Mori