eastern youth | 大阪 大阪城音楽堂 | 2021.10.23

秋の夜空へ放つ

10月23日、eastern youthが大阪城音楽堂で開催された、”AGARTHA SPECIAL”に出演した。

イベントの開演時間は正午。開放感あふれる快晴となった昼間から、envyが荘厳な激情を轟かせた夕暮れ時を経て、eastern youthはイベントのトリとして登場した。出演時間の19時。3分前にステージに登場したメンバーは、大きな拍手で迎えられた。吉野寿(Gt/Vo)は、観客へ「寒い中ご苦労様です、我々が最後です」と語りかける。5月に予定されていた大阪でのワンマンライブは新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止されたため、大阪での演奏はこれが2021年最初で最後となる。

1曲目は最新アルバム『2020』から、”今日も続いてゆく”。村岡ゆか(Ba)と田森篤哉(Dr)がゆるぎないアンサンブルで支えるボトムと、吉野の渾身の叫びと割れんばかりのギターが秋の夜空へ響き渡る。それを身体で受け止めるうちに、かなり冷え込んだ空気のなかでも、胸には火が灯るような心持ちになる。

「夏は行ってしまった。でも心の中にはある」と吉野が呟いて演奏された”夏の日の午後”から”砂塵の彼方へ”、”青すぎる空”へと、演奏はよどみなく続く。緊急事態宣言は明けているとはいえ、ひと席ごとに間隔を空けた客席で派手に歓声を上げるのはまだ憚れる。それでも、ひとりグッと感嘆してしまうような代表曲がたたみかけてくる。

会場は大阪城公園のなかにある。吉野は「大阪城です。東京の高円寺というところに焼肉屋さんのアパッチというところがあるんですけど、ミノで呑むのが好きなんですよ。ミノがうまいんですよね、アパッチ。その屋号はいわゆるアメリカ先住民族のアパッチから由来しているものではないと思うんですけど。おそらくそう理解してるんです。その舞台はこの辺ですか?」と、戦後、大阪城付近の大阪砲兵工廠跡で金属類を回収して生計を立てていた、アパッチ族と呼ばれる在日コリアンについて触れる。「キラキラした光に隠れて、見えなくなっている泥臭い営みが今でも続いている、はずなんだ」と語って”ソンゲントジユウ”が演奏された。その毅然としたパワーに圧倒されつつ、eastern youthの歌には見えづらいことにも思いを寄せる繊細さも兼ね備えていることに改めて気付かされ、歌がいっそう沁みてくる。

この公演は心斎橋にあるライブハウス、Pangeaの10周年を記念するイベントであり、eastern youthはPangeaに2011年、2014年に出演している。

「10年なんてあっという間なんだなと思わんでもないですよ。10年前にいた人がもういないこともあるし、もうアカンと思ってもまだまだバリバリに生きている人もいる。私もちろん、バリバリに生きてますけど」

と吉野が気概を語れば、客席からは「そうこなくっちゃ」と言わんばかりの拍手が返ってくる。吉野のマイクを通さない「せーの!」の掛け声で”夜明けの歌”が始まる。演奏もさらに冴え渡り、最後の曲、カタルシスに満ちた”街の底”へと駆け抜けた。メンバーがステージを去っても止まない拍手に応えて、”たとえばぼくが死んだら”がアンコールで演奏され、喝采のなかイベントは幕を閉じた。

今週末、10月30日(土)には、eastern youthは京都で開催されるボロフェスタに出演する。2週連続の関西でのイベント出演だが、次はどんな演奏を見せてくれるのか楽しみだ。

<SET LIST>
01.今日も続いてゆく
02.夏の日の午後
03.砂塵の彼方へ
04.青すぎる空
05.ソンゲントジユウ
06.夜明けの歌
07.街の底

E1.たとえばぼくが死んだら

 

『eastern youth 年末単独公演 2021』

2021年 12月 4日(土) TSUTAYA O-EAST
開場 16:00 / 開演 17:00
前売:¥5,000(指定席) ※1F/前方・2F/最前列
¥4,000(立ち見) ※1F後方エリア・2F後方エリア

※小学生以下は入場不可です。中学生以上はチケットご購入が必要です
※購入時に同行者含め個人情報の登録が必要となります
※指定座席は全席お客様がお座りになる設定です
※ライブ生配信はございません
https://smash-jpn.com/live/?id=3560


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Text by Keiko Hirakawa
Photo by Keiko Hirakawa