ザ50回転ズ | 東京 渋谷CLUB QUATTRO | 2021.10.24

届けられた手紙

9月の北海道から始まった「ロックンロール・ポストマン・ツアー」も東京でセミファイナルを迎えた。会場の渋谷クラブクアトロはフロアにテープが貼ってあって、そのマス目から動かず、マスク着用で声出しもできない状態だけど、スタンディングのライヴができるようになっていた。50回転ズはコロナ禍のもと、着席してアコースティックで演奏など工夫しながら活動してきた。50回転ズの音楽を待つ人たちにどうにか届けようと活動を続けて、今回のツアーにつながっていった。

ツアータイトルにちなんでドリーのベースアンプの上には古いタイプの円形郵便ポストが置かれていた。始まる前は、パンクやパブロックやグラムロックが会場に流れていた。そしていつものようにドクター・フィールグッドの“Riot in Cell Block Number 9”が流れてボギー、ドリー、ダニーが現れる。そしてまず演奏されたのは「ロックンロール・マジック」。フロアがグッと惹きつけられているのがわかる。マス目の中で踊り、手拍子でバンドに応えた。続く「初代ベーシスト」ドリーが歌う「ハートブレイカーブルース」で唸らされたのはダニーのギターだった。すさまじいカッティングはウィルコ ・ジョンソンかアベフトシか。カッティングで魅せることができるギタリストなんだと改めて思った。

ポップなパンクナンバー「純情学園一年生」のあと、ダニーが前回のツアーで作ったグッズについてや、今回のツアーに持ってきているグッズについて語る。ダニーの自虐を交えたトークでフロアを笑わせた。

ケルティック(アイリッシュ)な「レッツゴー3匹!!」でフロアはノリを取り戻し、ボギーが歌うシャープな「エイトビートがとまらない」、ドリーのポップで疾走する「おねがいR・A・D・I・O」、ダニーの昭和歌謡の世界「新世界ブルース」と続く。「新世界ブルース」はライヴで聴くと、よりビートとエレキギターが効いたもので攻めた印象になる。

そして今回の新曲は「COME ON!!」で、とんかつチェーン店「かつや」のCMでバックに流れている曲が50回転ズの作だった。軽快なロックンロールでコロナ禍が終わればフロアで合唱するような曲だった。そこから3曲「サンダーボーイ」「Trip! Trip!」「グローリー・グローリー」とドリーの曲が続く。「Trip! Trip!」は軽快にスウィングする曲。久々に聴けた「グローリー・グローリー」は、どこかのスポーツチームが採用しないかなと思うくらいスタジアムで大合唱したくなる曲。歌詞が久々に優勝するとか、念願の昇格とかのシチュエーションによく似合う。50回転ズの曲は北海道日本ハムファイターズの応援団に「酔いどれマーチ」が使われているけど、こちらも大推薦だ。

ダニーの歌に戻って、迫力のスカパンク「KILLER」、これも久しぶりなお笑いのハードコアパンクの融合「拝啓ご先祖様」とフロアを揺らせる。ドリーが歌いポップで不思議な雰囲気を持つ「デヴィッドボウイをきどって」では中間にダニーの高速カッティングが聴けて、思わずダニーの手元を凝視してしまった。

「おいオッさん」と呼びかけから始まる「あの日の空から」は、もう若くない自分自身に向けて鼓舞する歌だろう。「サムクックがきこえる」は切ない失恋の歌。しんみりとさせてから、定番曲で終盤に向けて盛り上げ、加速させる。ドリーの「Youngers On The Road」、別れの切なさが疾走するパンクナンバーとして歌われる「涙のスターダストトレイン」、そしていつもの「おさらばブギウギ」で締めくくる。声をだしてのコール&レスポンスはできないけど、拍手で盛り上げる。

50回転ズを定期的にみているといつも同じようなことをやっているけど、少しずつ違う。少しずつ進化している。10年前と比べれば、演奏がもたらすインパクトも、曲のバラエティの豊かさも獲得している。常に今が一番よいバンドだなと感じるのだ。

アンコールは「ロックンロール・ラブレター」でロックンロールへの愛、そしてロックンロールは聴いてくれるみんなへのラブレターなんだということを歌う。そしてこの日はここで演奏された「50回転ズのテーマ」でぶっちぎって終わる。

そしてクラシックなラジカセを用意しステージ中央に置いて、ツアータイトルにちなんだマーヴェレッツの「Please Mr. Postman」を流し、メンバーたちは踊りながらステージを去る。フロアでは「Please Mr. Postman」に合わせて手拍子をおこなう。すると再びメンバーが現れて「Please Don’t Say」を演奏してこれが最後の最後だった。「さよならは言わないで」という曲が最後。さよならは言わないで、またライヴがあったら会いましょう。そのときは声をだすのも自由になるといいね!

Set List
1. ロックンロール・マジック
2. ハートブレイカーブルース
3. 純情学園一年生
4. レッツゴー3匹!!
5. エイトビートがとまらない
6. おねがいR・A・D・I・O
7. 新世界ブルース
8. COME ON!!
9. サンダーボーイ
10. Trip! Trip!
11. グローリー・グローリー
12. KILLER
13. 拝啓ご先祖様
14. デヴィッドボウイをきどって
15. あの日の空から
16. サムクックがきこえる
17. Youngers On The Road
18. 涙のスターダストトレイン
19. おさらばブギウギ

En1-1 ロックンロール・ラブレター
En1-2 50回転ズのテーマ
En2 Please Don’t Say

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Yoshimasa Yamanaka