いざ興奮の坩堝へ
キングブラザーズが2021年の12月8日(水)~12日(日)までの連続5日間、有観客オンラインライブの開催を難波メレにて行った。この日は第4夜、極力音響装置を使用しない生音ライブ『JUKE JOINT』だ。
一番手は札幌のThe Rumdeesが1960年代のようなブルースを鳴らし、タイムスリップしてしまったのかと錯覚するほどの素晴らしいライブを見せた(機会があれば、なんとしても体験して欲しい)。続いてイギリス、バーミンガムからはBlackmeconの映像がスクリーンに投影された。メンバーがステージに向かう導入部からひきこまれる。テルミンに合わせてブラウン管テレビにはエフェクトが投影されていく。アイデアをDIYで産み出すそのスタイリッシュなセンスと、ガレージロックとのギャップに魅せられる。
トリはキングブラザーズだ。バーカウンター横、緑色したラメのカーテンに囲われたセットにメンバーが登場する。天井から灯されたほの明かる電球に照らされると、アンプから直接爆音が放たれた。
“スパイボーイズ”からライブは始まった。バンドも客もお互い食らいつくようにアンプから放たれる音塊に突っ込んでいく。もっと前に来てとマーヤが叫ぶと、一層フロアのうねりは大きくなった。マーヤのスクリームが冴える”のりおくれんな”は、緩急つけながらのドラムが勢いが増すと、二本のギターも呼応するように激しさを増し、観客からは拳が上がった。
ケイゾウはこの日、いつもにも増して歌の間に客を煽っていた。客はそれに応えるように反応していく。”ACTION”のタメの後に3人の音が重なる爆発力、ケイゾウのシャウトにマーヤのスクリーム、ゾニーのシンバルが空気を引き裂く。「だから、めちゃくちゃにしてやりましょうよ」ケイゾウの言葉は着火剤だ。観客の興奮が抑えられなくなるのがわかる。ずっと前から見てきたキングブラザーズ、ずっと見たかったキングブラザーズが生音でしかも手に届きそうな距離で演奏している、そんな当たり前が我々から奪われてきたコロナ禍だった。
“☆☆☆☆”でマーヤはスクリームで客にせり寄った。ゾニーは間合いをとりながら二人に合図を出す。”ビッグビート”でのドラムの乱れ打ちに、ケイゾウは繰り返し「狂ったように踊ればいい」と叫んだ。歌と歌の間に感情のままに吐露するケイゾウは「ダメだ」と言い放つと自らメンバー分のアルコールを調達し、それぞれに渡した。最後は”ルル”だ。爆発的なビートの中、マーヤが担がれているのを見たのはいつぶりだろう。聴覚と視覚がらせんを描きながら混ざり合って脳天に突き刺さる感じ、そう、興奮の坩堝ってやつだ。
「この微妙な時に全部やっとこ!この五日間で全部やっとこ!」マーヤを担ぎながら観客は全員笑顔だ。限定60人ほどの少人数ながらも、全員で「ニ・シ・ノ・ミ・ヤ」コールを叫べる多幸感に包まれた大団円の第4夜だった。
▶︎第5夜、最終日のライブレポートは近日公開予定です。
今後のライブ予定詳細はキングブラザーズ オフィシャルサイトにてご確認ください。
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