2022年の幕開けは、浅川マキと共に
2022年1月9日、新春恒例となった『KOBE Goodies Collection -Rock’n’Roll Circus- 』が「CHICKEN GEORGE」「神戸VARIT.」「ART HOUSE」の3ヶ所で開催された。キングブラザーズはチキンジョージのトップバッターだ。観客は足元に等間隔に記された立ち位置を確認し、密集を避けるように場所を確保していく。昼下がり、正月モードも相俟って会場は穏やかなムードが漂っていた。
SEが鳴り響きバックドロップだけに照明が当たる。ゾニーがステージ中央のドラムセット上に立ちながらフロアを見渡すと、それまでの会場の空気が変わった。マーヤが音出しを始め、ケイゾウが吠え、ドラムの合図でライブが始まる。3人の音が合わさるその瞬間、終わらないコロナ禍の事はもちろん、日常の有象無象は頭から消え去った。
‘Super X’からケイゾウは噛み付くように歌い、マーヤのスクリームは全開だ。ゾニーは荒波を乗りこなすようにビートを操る。グルーヴを止める事なく、曲と曲をあれほどスムーズに繋げるドラマーはあまりいないんじゃないだろうか。気がつくとバンドは’魂を売り飛ばせ!!’を演奏し、観客はただその渦に巻き込まれていくだけだ。多くのバンドがチューニングやMCの為に曲間に演奏が止まる場面があるのだが、観客としてそれはふっと現実に戻ってしまう瞬間でもある。その点、キングブラザーズのライブを見ていて、集中力が途切れることはない。彼らは常にノンストップで演奏を続けているからだ。
‘XXXXX’の後、マーヤタイムです、というケイゾウの合図でマーヤがマイクを握る。「今日はスペシャルゲストがいるんですよ、2022年のロックンロールを感じてくれたら幸いです、伊香桃子!」と、神戸を中心に活動する伊香桃子をステージに呼んだ。彼女の歌う’ガソリン・アレイ’のバックバンドを勤めるのはキングブラザーズだ。2021年12月22日に発売された伊香桃子による浅川マキのリスペクトアルバム「Good-bye 〜浅川マキを抱きしめて〜」のボーナストラックとして’ガソリン・アレイ(原曲’Gasoline Alley’ロッド・スチュワートが1970年に発表)’を演奏したのがキングブラザーズだった。
‘ガソリン・アレイ’浅川マキ
浅川マキを発掘した名プロデューサー寺本幸司と伊香桃子との出会いから実現したわけだが、彼女の低音で艶のあるビブラートの効いた声は、浅川マキを今この時代に歌うならこの人しか居ないと思わせる存在感で、キングブラザーズのからりとしたブルーズとはまっていた。演奏に徹するケイゾウも、花に舞う蝶のように伊香桃子の横で踊りながら弾くマーヤも、楽曲に身を委ねるようなゾニーも、いつもと違う緊張感を纏い、新鮮な光景だった。
余談だが、キングブラザーズのカヴァー曲は原曲と違う解釈で演奏されるものが多いので、機会があれば聞いて欲しい。直近の’愛はズボーン’のリンクを載せておくので、聴き比べてみて度肝抜かれてください。
‘愛はズボーン’愛はズボーン
‘愛はズボーン’キングブラザーズ
最後は’マッハクラブ’だ。次々と観客に受け渡されながらスクリームし続けるマーヤも、ステージ上から鋭い視線を送るケイゾウとゾニーも、いつだって今が盛りと言わんばかりの気迫だ。この時代、進化しながらあり続けてくれるのは稀有なことなのだ。
3月20日(日)には、東京にて今年初のワンマンライブ開催が発表された。趣向を凝らした配信やライブイベントを経て、世界がどう転がってもキングブラザーズは新しい景色を見せてくれるだろう。
今後のライブ予定詳細はキングブラザーズ オフィシャルサイトにてご確認ください。
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