KING BROTHERS | 大阪 服部緑地野外音楽堂 | 2022.04.03

蘇ったブギー

満開の桜が咲き誇る4月3日、服部緑地野外音楽堂にキングブラザーズが登場した。2020年、2021年と2年連続で新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止を余儀なくされた『服部フェス』が今年、4月1日から3日にかけて大阪・SUNHALLと服部緑地野外音楽堂で開催された。

時折小雨が降る花冷えの中、サウンドチェックの為に3人がステージに登場する。個々のフレーズはやがて組み合わされ曲となった。”クール誕生”だ。これはジョン・スペンサーがプロデュースした2002年のアルバム「6×3」の最後に収録されている曲である。もしや、と期待が膨らんだ。というのも3月20日、東京は表参道のWALL & WALLで行ったワンマンライブが、初期ナンバーのオンパレードだったからだ。

ジョン・リー・フッカーの”Gotta Boogie”が流れきったところで、いざ本編。マーヤ、ゾニー、ケイゾウの順でメンバーはステージに登場した。1曲目は”☆☆☆”だ。鋭いカッティングギターにドラムが重なり爆発的なグルーヴが生まれる中、マーヤはステージ前方に身を出し、客を煽る。続く”Big Boss”はゾニーがバンドに加入した当初からセットリストに組み込まれていた曲で、スピードに乗せてバンドが疾走していく様がたまらない。3曲目はケイゾウのベースギターと低音のきいた声に、マーヤのスクリームとゾニーのカウントが重なる“皆殺しのブルース”だ。グルーヴィでありながらロックンロールの初期衝動をも孕んでいる。初期ナンバーの連続に理性が吹っ飛んでしまうのか、曲が始まる度に客席から歓声が上がった。「ロックンロールでタイムスリップして狂ったようにバカになって帰りましょう、ブギーしよう」ケイゾウは笑顔でそう言うとバンドは”タイクツ地獄”へと雪崩こんだ。

1998年に1stアルバムをアメリカで発売し、全米28ヶ所のツアーを行ったキングブラザーズが、翌年1999年に国内で発売した初のアルバムが「★★★★★★★」(通称:星盤)だ。

この日のセットリストはその星盤通りの曲順で演奏された。ここで「再現ライブ」という言葉は使わない。発売当初にライブで演奏された曲を含め、これらの多くは約20年ぶりに演奏されている。ハタチそこそこの彼等が当時到達したかった黒いブルースの世界観。時を超えてこの令和の時代にすっかり掌握してしまっていることにバンドは気付いてしまったのだ。これはバージョンアップという単純なものではないだろう。ベースを加えた4人時代を経て、再び初期編成のベースレス3ピースにこだわったことからも、キングブラザーズはキングブラザーズのままであり続けながらずっと、初期の自分達を越えるK点を探り続けてきた気がするのだ。この日演奏された星盤の数々は懐かしく、そして全てが新しさに満ちていた。

4月8日〜10日は沖縄、4/15大坂、4/23岐阜と次々とライブが決まっている。この日のライブ後にマーヤが、まだまだ完成形じゃないと語っていた。その真意を確かめに、ぜひライブに足を運んで欲しいと思う。

<SET LIST>
1.☆☆☆
2.Big Boss
3.皆殺しのブルース
4.タイクツ地獄
5.デッドソウル
6.もえつきやい
7.キングビート
8.99
9.ジタバタロック

今後のライブ予定詳細はキングブラザーズ オフィシャルサイトにてご確認ください。

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Text by Tomoko Okabe
Photo by Tomoko Okabe