KING BROTHERS | 大阪 三国ヶ丘Fuzz | 2022.04.15

封印を解き、地を打つ

キングブラザーズは4月15日大阪 三国ヶ丘FUZZにてイベント『スパルタロックスクール入学式』に出演した。

<SET LIST>
1.ルル
2.スパイボーイズ
3.くそったれの唄
4.ムシャクシャ
5.オルガリズム
6.凹凸凹
7.ノリノリ天国
8.マッハクラブ

いきなりセットリストを挙げてしまうが、1〜7曲目までは2000年に発売された「 」(タイトル無し・通称:赤盤)の収録曲だ。前回の服部緑地でのライブでは星盤の全曲が演奏された。今、バンドに何が起こっているのだろう。

1曲目は“ルル”だ。長年セットリストに組み込まれてきたこの楽曲も、オリジナルは現在より倍ほど早い。当時、メンバー3人が頭を振り乱して演奏する姿に、観客のボルテージは一瞬で上がっていたものだ。今演奏されるこの曲は、低BPMに重低音が鼓膜を直撃し脳天を揺さぶられる感覚がある。”スパイボーイズ”ではゾニーの轟音にマーヤがフロアを煽り、観客の興奮は頂点へと連れて行かれた。

“くそったれの唄”をはじめとするアルバムに収録されている当時の楽曲たちは、高いケイゾウの声と、ジュンのシンプルなドラムにキャンキャン吠えるマーヤのスクリームが差し込まれ、乾いた音色に怒りの感情を乗せていくスタイルが、彼らの魅力をダイレクトに伝えていた。

一方目の前のライブでは、ケイゾウとマーヤのシャウトが交差する”むしゃくしゃ”が続く。「俺がぶち壊してやる」と低い声で唸るようにケイゾウが歌うとマーヤがしゃがれた声でコーラスを重ねて、ゾニーの重いビートが前面に雪崩れ込んでくる。ゾニーは衝動のままぶっちぎるのではなく、手練のビートを操っていく。

そのまま途切れることなくで”オルガリズム”へ。グルーヴィーなギターにゾニーはカウベルの乾いた音を差し込んでいった。「オルガンとリズム、オルガンリズム」と曲中でケイゾウが紹介したように「赤盤」の中盤に入っているこの曲は、オルガンが印象的なインスト曲だ。もちろんステージには3人しかいないためオルガンは鳴らない。しかしオルガンの彩りは今の3人にはもう不要なものであるように感じた。アルバム発売当時ですらライブで披露されたかどうか定かではないこの曲の、封印が解かれただけでも驚くのに、時を経ても違和感なくしかも完成されていることに度肝を抜かれた。

気を衒うことなく初期ナンバーが次々と演奏されていった。
マーヤがぴょんぴょん飛び上がりながら、楽しげに演奏していたのが印象的だった“凹凸凹(デコボコ)” この日珍しく彼は青いSGを抱えていた。ケイゾウは自らも鼓舞するように、マーヤに「もっとやばいギターを!」と連呼し続け、ゾニーはジュンのDrを踏襲しつつもよりダンサブルに打音を表現していた。

アルバムラストの”ノリノリ天国”は、今までセットリストに組み込まれていなかったのが逆に不思議なほど、緩急を操り観客を翻弄する展開を孕み、大盛り上がりを見せた。

最後、フロアの真ん中でマーヤは笑いながら観客に問いかけた。「俺らから学ぶものがあるんでしょうか?」と。若い演者がキラキラした瞳でその言葉を受け止めていたのがとても印象的だった。

今後のライブ予定詳細はキングブラザーズ オフィシャルサイトにてご確認ください。

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Text by Tomoko Okabe
Photo by Tomoko Okabe