ライヴハウスが戻ってきた
井の頭線西永福駅のすぐ近くに西永福JAMという今回の会場がある。駅をでてけっこうな入場列があるのがみえた。雨降る中、30分くらい待ってようやく中に入るとすでに50回転ズの演奏が始まっていた。フロアはぎっしりと埋まっていて扉から数歩くらいしか前に進めない。人の頭でステージがみえにくい。それでも思ったのは「あのライヴハウスが戻ってきたんだ」ということだ。
コロナ禍以降、人がぎっしり入って身動き取れないけど、ステージにいるバンドを観たい、音を浴びたい、という気持ちを共有する感覚がなかなか持てなかった。もちろん、この日も声をださないことは求められていたので、そのまま2~3年前とはいかないものの、フロアにテープが貼られて作られた区画にいなきゃいけないときと比べると変わってきている。もちろん、お客さんたちはマスク着用で入場時に検温と手指の消毒が求められた。
この日は、STANCE PUNKSとの対バンで最初の方に50回転ズが登場する。自分がフロアに入場できたときには、ベイ・シティ・ローラーズの“Saturday Night”を演奏していた。多くの人たちが手を挙げて手拍子で応えていた。後ろの方からみているとフロアにいる人たちがこうして一斉に盛り上がる喜びを表したい気持ちが伝わる。続いてベースのドリーが歌う“1976”がフロアを引っ張る。2曲演奏してチューニングをおこなう。ギターのダニーは「バンドの名前は忘れてもいいですけど、チューニングのことは覚えてください」とボケながら、初めて50回転ズを観る人にやさしく自分たちのキャラクターを伝えていく。
勢いのある「レッツゴー3匹!!」、ドラムのボギーが歌う「夜明けに走れ」は切り刻むギターと叩きつけるような言葉が硬質なビートに乗って迫ってくる。
冤罪を歌う「無実の男」はノリのよいスカパンクとして提示される。ドリーミーに疾走する「デヴィッド・ボウイをきどって」、楽しいインストナンバー「少年院のソナタ」と続く。「少年院のソナタ」では、バンドに合わせてフロアにいる人たちも頭を左右に振る。
50回転ズには「楽しい!」「カッコいい!」という要素の他に「ロマンティック」「あり得たかもしれない青春」というのもある。キーワードは「夏」「学校」で、その光景歌う「11時55分」、そのムードを受け継ぎ、自分たちのスタート地点の確認する意味合いのある曲“We Are The Kids”を経て、終盤の盛り上げに向かって疾走していく。いにしえのロックンロールにリスペクトを捧げた“Vinyl Change The World”、ドリーが歌う定番“Youngers On The Road”、センチメンタルが加速する「涙のスターダスト・トレイン」とフロアもたくさんの腕が挙がり、熱演に応える。ラストは「おさらばブギウギ」。声をだせないので手拍子でコール&レスポンスをおこない、興奮のステージを終えたのであった。
Set list
1.Saturday Night
2.1976
3.レッツゴー3匹!!
4.夜明けに走れ
5.無実の男
6.デヴィッド・ボウイをきどって
7.少年院のソナタ
8.11時55分
9.We Are The Kids
10.Vinyl Change The World
11.Youngers On The Road
12.涙のスターダスト・トレイン
13.おさらばブギウギ