不屈の魂
9月10日、「鳥を探しています」をコンセプトに活動する服屋『ロストバード』が主催する音楽イベント『LOSTYOUTH』が神戸RINKAITENで開催され、キングブラザーズがトリを飾った。
三宮駅からほど近いビルの３階にあるRIKAITENは、VJが常にフロアを彩りEDMが似合う小箱のクラブだ。イベントの趣向によるものなのか、クラブの常連客が集まっていたからなのかは分からないが、ライブ前からのアウェイ感がすごかった。しかしこんな時、身震いするほど凄まじいライブをするのがキングブラザーズなのだ。
“ルル”の爆音が響くと、観客の目の色が変わった。マーヤは前のめりで「お前たちの探している“ロストバード”が飛んでくるぜ」と観客に向けて両手を羽ばたかせて見せた。ケイゾウとゾニーは腹の底から震わせる重低音でグルーブを掌握する。
“スパイボーイズ”では観客が食い気味でステージに向き合い、バンドのボルテージは更に上がっていった。ゾニーはまだ2曲目だというのに、全身から汗を滴り落としている。爆音に身を任せ熱気が充満したフロアに向かってケイゾウが「ゾニー君、見せつけてやって」と言うと、ゾニーは歓声を受けてドラムを乱れ打った。
トルネードのように狂乱の時間が“ムシャクシャ”でスパークする。ライブ前まですかした顔でDJに合わせて体を揺らしていた観客が、キングブラザーズのステージを体感し踊り狂っていた。ケイゾウはそのフロアの真ん中に降り立つと、踊りながらギターをかき鳴らして見せた。マーヤは最前客と同化するかのような距離でステップを踏みながらリフをかき鳴らす。無敵になった二人のギターリストを後方からゾニーが更に身体ごと打ち付けるようなドラミングで加勢していく。
「ロストバードは見つけたかい？意外に近くにいるんじゃない？見えてないのは自分のせいじゃない？」とマーヤが目を見開いてフロアに問いかけた。“凸凹“でフロアに降りて演奏するバンドを見て、彼らの不屈の魂、尊厳さを感じずにはいられなかった。アフターコロナへと舵を切る一面があるものの、まだその渦中にあるともいえる昨今の状況は、彼らのステージングに決して優しくはない。しかし、マーヤが叫んだ「俺にとってのロックンロールはロストバードだった」という言葉を受け、観客の高揚した顔とフロアに突き上げられたいくつもの拳を見るにつけ、時代というのは道を選んで進んでいく一人一人が作り上げていくものなのだということを痛切に思った。海外のフェスやライブ動画を見ると、フロアは既にコロナ前ほどの密度で、クラウドサーフを決めている者もいる。日本の音楽シーンにも積極的、消極的評価を与えることなく全ての在り方を受け入れる土壌が広がって欲しい。そんなこと思っていると「ロストバードが見つからなかったら、今日の俺たちのようにロストバードを作ってください」とマーヤが観客に語りかけていて、敬服するのだった。
▼キングブラザーズ ライブ情報
9/30(金) 沖縄・那覇G-shelter『有観客生配信ライブ』
10/1(土) 沖縄・沖縄市 Tonton House屋外ステージ【POGO FES CAMP】
10/2(日) 沖縄・沖縄市 Tonton House屋外ステージ【POGO FES CAMP】
10/7(金) 大阪・難波mele『The Courettes JAPAN TOUR』
10/8(土) 島根・島根・松江市古墳の丘古曾志公園
Guitar Wolf presents『シマネジェットフェス 2022』
10/9(日) 山口・萩 Live&Bar玉ネギ畑
10/10(祝) 北九州・小倉Cheerz(チアーズ)
10/14(金) 名古屋・今池ハックフィン
10/15(土) 東京・町田SDR
10/16(日) 東京・下北沢ベースメントBar
2022年 11月5日(土) @蒲郡BUZZHOUSE『KING BROTHERS ONEMAN LIVE! 蒲郡Hi！』
詳細はキングブラザーズオフィシャルサイトでご確認ください。
▼KING BROTHERS | 記事一覧
