ザ50回転ズ | 大阪 UMEDA CLUB QUATTRO | 2022.11.27

Going Back Home

16時になり、いつものようにドクター・フィールグッドの“Riot in Cell Block Number 9”が流れると、フロアにいる人たちは一斉に曲に合わせて手拍子をおこなう。いつもなら歌が始まるときにメンバーが現れるのだけど、なかなか現れず、結局フルコーラスかかって曲の終わりとともにメンバーたちがステージにでてきた。先日亡くなったウィルコ ・ジョンソンのギターをきっちりと聴かせてたのだった。

ツアー最終日が彼らのホームである大阪である。梅田クラブクアトロはほぼ満員だった。ホームの余裕感じさせるようにステージとフロアとの呼吸も合っていて反応よく終始よい空気が流れていた。ツアー会場限定で販売されているライヴ盤『LIVE is ALIVE !』の曲順通り、まずは“マイクチェック”から始まる。“50回転ズのテーマ”、そして“マブイあの娘”でさらに加速する。

ベースのドリーが歌い、ポップに駆け抜ける“デヴィッド・ボウイをきどって”ではギターのダニーによる高速カッティング主体のギターソロが小気味よい。ドラムのボギーが歌う“夜明けに走れ”は70年代ハードロックぽい迫力と勢いがある。

MCになると舌好調のダニーは、急遽ライブアルバムを作ることになった経緯、このアルバムには修正がないことを客席からの笑いを受けながら語る。そこからまたカッコいいスカパンク・ナンバーである“KILLER”に入っていく。聴くたびにこの曲のギターソロが変わっていくような気がする。70年代ロックにあるような粘り強いギターソロだった。

“グローリー・グローリー”ではフロアからもたくさんの拳が挙げられる。この反応がもし野球やサッカーのスタジアムで起きれば、万年最下位のチームが優勝争いをしたり、J2のチームが昇格争いをしたときに応援席で歌われるのにふさわしいと思えてくる。

ケルティック(アイリッシュ)パンクな“レッツゴー3匹!!”ではフロアの盛り上がりがすごかったし、次の“Trip! Trip!”ではご機嫌にスウィングする。“レッツゴー3匹!!”の縦ノリと、“Trip! Trip!”の横ノリと、違うジャンルの曲だけど、同じように建物大丈夫かと思うくらい揺れていたのだった。ロカビリーで物悲しい“ホテルカスバ”では映画の一場面のような映像を想起させる。

そして“NO NO NO”は『LIVE is ALIVE !』にエレクトリックとアコースティックの2つのヴァージョンが収められている。ツアーでは中盤のところで演奏されて今回のツアーでのテーマソングともいえる。この曲も映画の一場面を切り取ったような曲だろう。「夏」の「学校」というのはダニーが何度か取り上げるモチーフだけど、ポップで疾走するパンクナンバーとして昇華されている。

“新世界ブルース”は、やはり大阪で聴くと味わい深くなる。「この街が嫌いやねん」といいながら「アンタ」を待つためにずっと居続ける人の物語。これも映画化・ドラマ化できそうな話である。イントロから強烈なギターとダニーのくどい歌唱でライヴの会場はキタにあるけど、ミナミの新世界に誘う。

“たばこの唄”と“船乗りたちのメロディ”で空気を戻して、バラード“サム・クックがきこえる”でしんみりとさせる。80年代から90年代の邦楽ロックのような“あの日のロックンロール”から終盤に突入していく。定番の“Youngers On The Road”、“ロックンロール・マジック”で盛り上がりは最高潮へ。そして締めくくりは“おさらばブギウギ”。コール&レスポンスはまだ声をだせないけど、大きな拍手でそれに応える。

拍手は大きいままでアンコールへ。フロアにいる人たちに感謝を述べ、彼らの真骨頂 であるポップでパンクな“Vinyl Change The World”、そして“たまにはラブソング”と演奏してフロアを沸かせたままステージから去る。

バーズの“My Back Pages”が流れてそれに合わせて手拍子になって再びのアンコールを求める拍手となる。そしてアンダートーンズの“Teenage Kicks”が小さく流れてメンバーが登場。ダニーはアコースティックギターを抱え、ドリーはウッドベース、ボギーはコンガで“涙のスターダスト・トレイン”。『LIVE is ALIVE !』にあるような柔らかい切ないアコースティック・アレンジとなった。最終日だけのスペシャルな演奏で日本全国を巡る長いツアーを終えたのであった。

50回転ズは同じことをやっているのだけど、毎回違う。基本はロックンロールやパンクなんだけど、豊潤な音楽の土壌から彼らの音楽が立ち上がっているのがわかる。フロアの人たちと向き合い、常にブラッシュアップしていることを今回のツアーで改めて感じた。職人肌のバンドが「老舗の味」を今、作り始めていることを感じるのだ。

<Set List>
マイクチェック
50回転ズのテーマ
マブイあの娘
デヴィッド・ボウイをきどって
夜明けに走れ
KILLER
グローリー・グローリー
レッツゴー3匹!!
Trip! Trip!
ホテルカスバ
NO NO NO
新世界ブルース
たばこの唄
船乗りたちのメロディ
サム・クックがきこえる
あの日のロックンロール
Youngers On The Road
ロックンロール・マジック
おさらばブギウギ

Vinyl Change The World
たまにはラブソングを

涙のスターダスト・トレイン(acoustic)

▼ザ50回転ズ | 記事一覧

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Tomoko Okabe