DYGL | 兵庫 神戸Varit. | 2023.01.22

DYGLが掴んだもの

DYGLは新しいアルバム『Thirst』を発表して日本中を巡っている。この日の神戸VARIT.はツアー3日目にして3都市目である。SNSをみると前日におこなわれた京都CLUB METROのライヴでは非常に盛り上がった動画がUPされていて(DYGLはライヴの撮影を許可している)、この日のライヴの期待も高まっていった。

神戸VARIT.は、神戸の繁華街・三宮の喧騒が途切れそうな、まだ栄えているかという絶妙なところにあるライヴハウスで、フロアが1階と2階にある。がっつり楽しみたい人は1階、俯瞰したい人は2階でみることができる。どちらのフロアもかなり埋まっていた。2階は女の人が多い。ステージ背後には『Thirst』のアルバムジャケットを大きく引き写したものが飾られている。

19時06分ころ場内が暗くなりバンドが登場した。ステージ中央にヴォーカルとギターに秋山信樹、ステージ下手にギター下中洋介、ステージ上手にベース加地洋太朗、上手ギター嘉本康平、サポートとしてドラム 鈴木健人 (never young beach)を加えた5人がステージに立つ。“Your Life”から始まったライヴは主に『Thirst』と前作『A Daze In A Haze』からが選曲の中心だった。スローで柔らかい世界を作っていく。

ニューヨークのスタジオで録音された1stアルバム『Say Goodbye to Memory Den』、ロンドンで録音された2nd『Songs of Innocence & Experience』、日本のスタジオで録音された3rd『A Daze In A Haze』、そして今作は「どんどんインディーになっていく」とMCで秋山がいったように、『Thirst』はより彼らの生活に近いところで作られたアルバムになった。その曲たちがライヴの現場だと、より血の通った生々しい曲として立ち上がっていく。

アルバムの雰囲気を決めた曲である、という話があったあとにその“Under My Skin”のイントロを間違えて苦笑する場面もあったりする。そうしたエピソードも等身大のものとして感じられるのだ。

ゆったりとした中でも熱を帯びていき、膨らんでいったものが“Dazzling”で爆発した。ライヴ中盤にしてようやくテンポの速い曲を持ってきて、フロアの歓喜を引き出した。続けて秋山が「速い曲と遅い曲どっちがいい? 俺は速い曲をやりたい!」と叫び、「セットリストにない」という“Bad Kicks”、そして“All I Want”を演奏する。ここがこの日のハイライトだろう。どうやら前日の京都からこのようになったようだけど、ライヴは生き物であり、ツアーをしていくうちに変わっていく様子をまさに今、体感しているのである。

その後は一旦クールダウンして落ち着かせる。そしてシューゲイザー的に盛り上がる“I Wish I Could Feel”が終盤の盛り上がりポイントだった。アンコールのとき秋山は日本の人たちは嫌なことがあったらすぐ辞めたりするけど日本人は我慢をしてしまって自らをつらい状況に追い込んでいくことから「自分を大切にして欲しい」と語る。それは2021年のフジロックにでたときに、迷いながらステージでいうべき言葉を探っていた秋山がコロナ禍を潜り抜けて掴んだ言葉のように感じた。

アンコールは以前に発表されたアルバムからの選曲で演奏された。その3曲は長く追いかけている人にはプレゼントのようなものだったし、新しくファンになった人には彼らは以前から魅力を保っていることを知ってもらえる。ツアーはまだ始まったばかり。変わりつつあるDYGLを体感できるのは今だろう。


※写真はすべて1月20日におこなわれた東京公演のものです。

公演情報

東京 1月20日(金)渋谷 Spotify O-EAST
京都 1月21日(土) CLUB METRO
兵庫 1月22日(日) 神戸VARIT.
香川 1月24日(火)高松TOONICE
岡山 1月25日(水) YEBISU YA PRO
広島 1月27日(金) 広島セカンドクラッチ
熊本 1月28日(土) NAVARO
福岡 1月29日(日) BEAT STATION
宮城 2月3日(金) 仙台Rensa
北海道 2月5日(日)札幌SPiCE
愛知 2月9日(木)名古屋Electric Lady Land
大阪 2月10日(金)梅田クラブクアトロ
東京 2月19日(日)渋谷クラブクアトロ 追加公演

詳しくはLIVE INFOをご覧ください

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Yukitaka Amemiya