KING BROTHERS | 兵庫 カフェ・モンタージュ | 2023.02.04

25周年の幕開け、息を呑むようなその通過点

選曲と演奏と演出その全てがK点を越えていくライブ、息を呑むような瞬間の連続を創り上げたキングブラザーズ25周年ライブが、2023年2月4日、 西宮のカフェ・モンタージュで行われた。

春を思わせるような暖かい日差しが差し込む店内、黒づくめのスーツを纏った3人が現れると、客はステージ前に詰め寄った。ケイゾウ(Vo,G)のカウントで“Sympathy For The XXXXX”でライブが始まると、ケイゾウは腰をくねらせながらハープを吹き、グルーヴを迸らせるゾニー(Dr)のビートに、マーヤ(G,Scream)は最前列の客前を右へ左へ笑顔で動きながらギターを重ねていく。

“あッ!!ああ”で「ここから遠すぎて後には戻れない」というリリックに3人それぞれの思いを乗せ、炸裂させた後に“メッセージ”が続く流れには、否が応でも涙腺を刺激されてしまう。「幾つもの扉を開けて俺はここまで来たぜ」と歌うケイゾウの全身から、痛烈な25年の覚悟が立ち上っている。天を仰ぎ叩くゾニー、焦燥感を打破するかのような印象的なマーヤのギター。ピークが訪れたようなパフォーマンスだが、まだ3曲目である。続く“★★★”で「 全ては目の前にある」とケイゾウは歌う。セットリストの流れが計算され尽くされていて、心の中で拳を突き上げっぱなしだ。

“皆殺しのブルース”に続き、踊りまくりましょうというケイゾウの一声で始まったインスト“オルガリズム”でケイゾウはゾニーの名前を連呼する。“燃え尽きるまで”の「いつか悲しみも消えるだろう」と声を振り絞るケイゾウの歌声とゾニーのビート、マーヤのキリキリと悲鳴のように鳴るギターリフが出会うそのカタルシス。今のキングブラザーズの魅力を存分に見せつけた。

ここで、珍しくケイゾウがMCを挟んだ。
「西宮まで来てくれてありがとうございます。左からマーヤ俺の最高の相棒、ゾニー俺の最強の相棒、俺が松尾ケイゾウ。ただやり続けてただけなんで、別にめでたいことでもないんですけど」そう笑顔で語るケイゾウに、フロアから温かい眼差しが向けられた。

ライブ前のYoutube配信でこの日、アルバム『6×3』を再現すると予告していた彼ら。『6×3』は2002年発売のアルバムで、ジョン・スペンサープロデュースによるものだ。“Doo Doo Scratch”はアルバム収録曲には、ジョンとジョンの息子のスクリームも収録されているが、2023年のそれは、曲後半にかけてのダイナミズムが圧倒的だ。

ライブはアルバム収録順に“Paint It Black!! ”、“1979”と続く。なんというかキングブラザーズのライブは、爆音に耳を澄ますという感覚に近いのかもしれない。アウトサイドから見る彼らの派手なライブパフォーマンスは魅力の一部であって全てではない。“There is nothing / 何もない。”のダブっぽい楽曲は、アルバムが発売された当時にもライブで演奏したことがないと、ライブ終演後のパーティでケイゾウが発言していたように、聞いたことのある新曲とでも言うべきか。2023年に生まれ変わって初披露される曲に、観客の集中力も試された。

間髪入れずマーヤがSonicsのイントロを奏でる。ダンサブルなリズムに観客は我にかえったかのように踊り狂う。

ケイゾウの「くるぞー」の一声で始まった “クール誕生”のイントロはドス黒さ全開の、これぞキングブラザーズ王道のブルースロックと言わんばかりだ。観客にケイゾウは投げかけるように歌うと、フロアからもその声に応えるように声が上がる。ゾクゾクするようなケイゾウの低いギターに、焦燥感を煮詰めていくようなマーヤのリフレインに、ゾニーは己自身を穿つかのような切迫感を込めて腕を振り下ろしていく。陽が傾いていく窓外のように、フロアを真っ黒に塗りつぶしていくような凶悪な音が四方八方に飛び散る“消えうせろ”、“闇の中ブルース”にフロアは狂乱のピークを迎えた。感情が追いつかないままマッハクラブで濃厚な25周年ライブの幕は閉じた。

ここまで書いていながら、筆舌に尽くし難いライブだったと文章を締めたい気持ちになるほど、バンドの凄みを目の当たりにした濃密な時間だった。バンド20周年からコロナ禍を経て25周年を迎えた彼らは「通過点である今をただ進んでいる」と語る。ライブでしか邂逅し得ない瞬間をこれからも生み出していくのだろうか。身震いするほど楽しみである。

<SET LIST>
1.Sympathy For The XXXXX
2.あッ!!ああ
3.メッセージ
4.★★★
5.皆殺しのブルース
6.オルガリズム
7.燃え尽きるまで
8.Doo Doo Scratch
9.Paint It Black!! / 黒くぬれ!!
10.1979
11.There is nothing / 何もない。
12.Sonics
13.Birth of The Cool / クール誕生
14.消えうせろ
15.闇の中ブルース
16.マッハクラブ

詳細はオフィシャルサイトをご確認ください。

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Text by Tomoko Okabe
Photo by Tomoko Okabe