再構築される音塊
DJのキング・クウォータが、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの“ベルボトムズ”をかけると、キングブラザーズのメンバーが登場する。ジョンスペと地続きのような黒いブルースのイントロから始まったのは“スパイボーイズ”だ。ステージはフロアと同じ高さなので、初っ端からフロアライブのような熱気が渦巻いていた。
25周年というアニバーサリーイヤーを、国内はもとより5月にはニュージーランドでもライブを行ってきた彼ら。この日は大阪の塚本ハウリンバーでのイベント出演だ。“魂を売り飛ばせ”では客とメンバーが至近距離ということで、マーヤが手招きして客を集めその渦中へ飛び込んだ。フロアは笑顔で溢れ2曲目とは思えないテンションでゾニーは爆音を叩き出していく。ケイゾウは客をあちこち指差し、噛み付くように歌声を放ち、フルパワーの低音を掻き鳴らしていく。曲間にバンドはペースを緩め、ケイゾウが観客に向かいMCを挟むのだが、ゾニーのカウントを合図に気魄一閃に散らされる火花を目の当たりにした観客のボルテージも、瞬く間に燃え上がっていった。
極悪なグルーヴに乗せて、ヒリヒリとしたケイゾウのシャウトが続く中、互いに昇りつめていこうとするかのようにマーヤはゾニーを振り返ってギターを掻き鳴らす。ゾニーは時折笑顔を浮かべ、マーヤとケイゾウを交互に見ながらビートを支持し、フロアを煽動していく。
「パワー食らえよ!」と叫ぶマーヤの狂おしいほどの「ニ・シ・ノ・ミ・ヤ!」スクリームが、キングブラザーズというロックンロールの歴史を塗り固めていく。どこで何度聞いても、胸にパワーを放り込まれるようだ。フルパワーで突き進む“メッセージ”はケイゾウの絶叫にも似た歌声が胸を打つ。希望が音像となったようなゾニーの轟音は、ドラムという楽器の饒舌さを感じずにはいられなかった。
ゾニーのジャングルビートに乗せて“Sympathy For The XXXXX”でケイゾウがハープを重ねると、マーヤの泣きのギターソロが冴え渡った。今のキングブラザーズの絶対的な安定感をこの曲が証明していた。
時に爆発的なエネルギーを放ち、かと思えば笑みを浮かべて喜びを隠そうともしない3人。“よく聞け世界”を含め、リワインドした楽曲群であっても彼らは過去を振り返るだけでなく、今のバンドに相応しい音を突き詰め、再構築している。何度見ても新たな発見があるというのは、なんと贅沢なことか。11月は関西中心のライブが続く。今のバンドの有様は今しか観ることが出来ない。今が過去になる前に、ライブの火中に飛び込んでみて欲しい。
▼LIVE情報
【アビョーンPLUS ONE 25周年Party】
会場:兵庫・James Blues Land
日時:2023年11月11日(土)開場:17:00 開演:18:00
予約TEL:078-391-0161
入場料:予約4,000円 当日4,500円 (D別)
『MIKROCK ’23』
会場:大泉緑地 特設ステージ(GAIN / TONE / VOLUME の3ステージ *キングブラザーズはGAIN STAGEに出演)
日時:2023年11月18日(土)~19日(日)*キングブラザーズは18日に出演 朝10時 START
入場料:無料(投げ銭制)
『しょんべんフェス』
会場:大阪・十三GABU / グランドサロン *キングブラザーズはGABU FLOORに出演)
日時:2023年11月18日(土)~19日(日)*キングブラザーズは19日に出演 12時 START
入場料:予約4,500円 当日5,000円 (D別)
【うるさい DAY2 WEEKEND】
会場:大阪・NAMBA BEARS
日時:2023年11月25日(土)開場:18:30 開演:19:00
入場料:予約2,500円 当日2,800円
詳細はオフィシャルサイトをご確認ください。
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