SUEDE / MANIC STREET PREACHERS | 東京 ZEPP HANEDA | 2023.11.19

30年を経てみられた友情

自分にとってスウェードとマニック・ストリート・プリーチャーズは、どちらも初来日公演にいっていて(スウェードは1993年7月、マニックスは1992年5月)、どちらも観たのはクラブチッタ川崎だった。それから約30年後、川崎に近いZEPP羽田で両者のダブルヘッドライナーによるライヴを観られるとは感慨深い。

その間、スウェードはバーナード・バトラーの脱退あり起死回生の大ヒットあり解散あり再結成ありと起伏のある歴史をたどり、マニックスは初期にリッチー・エドワーズのキャラクターもあっていつ瓦解してもおかしくないと思われたバンドだったけど、リッチーが失踪してからは、むしろ国民的なバンドとして人気も上がり安定した活動を続けているバンドとなった。30年前からは想像もできない現在となっている。

会場のZEPP羽田は羽田空港がすぐ目の前にあるところにある大型ライヴハウスで、京浜急行かモノレールの天空橋駅に近い。周りはこれから発展していくのかなと思うオフィスビルなどが入っている一角にある。フロアはほぼ満員。自分と同世代くらいの人が多い。ちょっと若い人がいると思ったら、大抵が中国や東南アジアから来た人たちだったりする。ZEPPなんで他のZEPPとどこが違うのかよくわからないくらい雰囲気が似ている。

開演予定時刻の17時を5分くらい過ぎたところで場内が暗くなってバンドがでてくる。マット・オズマン(B)、サイモン・ギルバート(Ds)、リチャード・オークス(G)、ニール・コドリング(Key/G)で演奏を始めた。そして主役は後から登場するもんでしょ、とヴォーカルのブレット・アンダーソン現れる。白いシャツの裾が最初からはだけている。動きといい、声といい、溌剌として全然老け込むこともない。全力で歌い飛び跳ねる姿にフロアは沸き上がる。

新しいアルバム『Autofiction』からの”She Still Leads Me On”からライヴが始まる。そして”Personality Disorder”と新アルバムの2曲を続ける。新曲にも勢いがあり、素晴らしさを更新してやろうという意欲が伝わる。そんなところに耳に馴染んだギターのフレーズが鳴る。その”The Drowners”は直近におこなわれた台北でのライヴでは演奏されなかったので、2016年の来日公演に続いて聴けないのかなと思っていたら、やってくれたのだ。当然盛り上がるフロア。興奮が収まらないフロアに”Trash”が投下される。この1996年に発表されバンドの起死回生のヒットとなった曲で、それまでの退廃的な世界から光が射し込んだように会場全体をアげていく。明るく力強いサウンドと裏腹に「君も僕もクズだよね」というサビにあたる歌詞をブレットの求めに応じてフロアは合唱する。

そして”Animal Nitrate”、”We Are the Pigs”とブレットは再び淫靡な世界に誘う。”The Drowners”からのヒットシングル曲4連発で会場は絶頂に次ぐ絶頂。ガッチリとフロアを掴んだ。ブレットはステージを左右に動き回り、マイクを振り回し、何度も両手を斜め上に掲げてジャンプして、フォトピットに降りて歌う。勢いが余るところもあったけど、その振る舞いはたくさんの人たちの視線を引き受け、その想いに十分に応えていた。

ラストは”So Young”、”Metal Mickey”、”Beautiful Ones”の3曲で締める。古くからのファンとの関係性を大事にするような選曲。今回のライヴで販売されていたマニックスとのコラボレーショングッズには「Stay Beautiful」と「Beautiful Ones」と書いてあり、その言葉がタイトルになっている曲を最後に持ってくる。ブレットのヴォーカルもバンドが作るサウンドも生き生きして勢いがあり、まだまだ大丈夫だという思いを新たにした。

30〜40分くらいのセットチェンジを経てマニックスである。いきなり”Motorcycle Emptiness”でスタート。ジェームス・ディーン・ブラッドフィールド(Vo/G)、ニッキー・ワイアー(B)、ショーン・ムーア(Ds)にサポートでギターとキーボード2人が参加し5人体制でステージに立つ。1曲目から盛り上がり、サビは大合唱になる。続いて早くも”Everything Must Go”が演奏される。リッチーがいなくなってから発表されたこの曲を聴くたびに胸が締めつけられる。ドラマティックで悲劇的で、だけど前向きでもある曲。

マニックスは、解散せずに堅実に活動を続けているので、不断のブラッシュアップが重ねられ、過去の曲も熟成されてきている。すっかり定番となった”You Stole the Sun from My Heart”やジェームスのひとりデュエットとなっている”Little Baby Nothing”は涙腺が刺激され味わい深いものとなっているし、”A Design for Life”が堂々とした風格を持つのもバンドとファンが長年作り上げた曲だといえる。

”Still Snowing in Sapporo”や最初のヴァースが歌われた”(I Miss the) Tokyo Skyline”と日本に因んだ曲も歌われる。ジェームスがアコースティックギターで”This Is Yesterday”を歌った中盤を経て、後半はパンク魂を忘れない”Stay Beautiful”や”You Love Us”の初期の曲を演奏してフロアは最高潮へ。ラストは”If You Tolerate This Then Your Children Will Be Next”で美しく締めくくった。

スウェードとマニックス、現役のバンドとしての力を十分に発揮した。お互いが仲良く、リスペクトしている感じも伝わるし、この2者でないと成り立たないライヴだった。30年経ってこういう姿を観ることができたのが非常に嬉しかった。

※本文一部訂正しました(11/25 11:26)

Set List

Suede

She Still Leads Me On
Personality Disorder
The Drowners
Trash
Animal Nitrate
We Are the Pigs
Flytipping
This Hollywood Life
Filmstar
Shadow Self
The Asphalt World
The Only Way I Can Love You
So Young
Metal Mickey
Beautiful Ones

Manic Street Preachers

Motorcycle Emptiness
Everything Must Go
1985
You Stole the Sun from My Heart
Still Snowing in Sapporo
Little Baby Nothing
Walk Me to the Bridge
From Despair to Where
A Design for Life
(I Miss the) Tokyo Skyline
This Is Yesterday
Slash ‘n’ Burn
Your Love Alone Is Not Enough
Enola/Alone
International Blue
Stay Beautiful
You Love Us
If You Tolerate This Then Your Children Will Be Next

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Izumi Kumazawa