Asian Dub Foundation | 東京 渋谷WWW X | 2025.1.23

今、ここも最前線

Asian Dub Foundationを観るのは久しぶりだった。メンバーが変わりつつも、長年ずっと活動を続けているので行くことにした。

開演予定時刻の10分くらい前に渋谷WWW Xに入ると、ソールドアウトが伝えられたフロアは満員だった。DJの大石始がSNSで「エイジアンダブ」なセットにすると予告した通り、東アジアから中近東までアジアを網羅した曲をかけていた。沖縄民謡が聴こえてきたのでスマートフォンのアプリである「Shazam」を起動させたら知名定男とでてきた。

19時40分頃、“Realignement”が流れてメンバーが登場する。ギターのチャンドラソニックを中心にベース、ドラムにフルートの4人がまずはインスト曲の“Mindlock”でライヴが始まった。そして、アクターヴェイター(Vo)と、ゲットー・プリースト(Vo)が加わり“The Signal and the Noise”。2MC体制で、ラップするアクターヴェイターとソウルフルな声のゲットー・プリーストの役割分担も巧みである。

Photo by Kazma Kobayashi

現時点での最新作『Access Denied』からの曲が多く演奏された。サウンドの中核はチャンドラソニックのギターであるけど、目を引くのは ネイザン“フルートボックス”リーのフルートである。そもそも、このようなゴリゴリのミクスチャーな音に繊細で優しいというイメージのあるフルートを導入すること自体が発明であり、フルートがゴリゴリなサウンドに負けてないし、その上にヒューマンビートボックスをしながらフルートを吹くという曲芸的な離れ技をみせて、フルートだけで金取れるじゃんとその迫力に圧倒された。

Photo by Kazma Kobayashi

ゲットー・プリーストは手のひらで周りの空気を集めてそれを舐めるような仕草をよくやっていた。何らかの儀式的な感じもするし、煙を集めて吸っているようにもみえる。ゲットー・プリーストは人種差別について語り、アクターヴェイターは“Frontline”を演奏する前に「ガザの人たちに捧ぐ」としてパレスチナについて語り曲の途中で「Free Palestine!」と合唱させる。やはりADFである。世界中それぞれに“Frontline”があり、それぞれに戦いがあるのだ、ということを変わらず訴え続けている。

Photo by Kazma Kobayashi

本編終盤には“Naxalite”とかやはり一聴するだけでテンションが上がる懐かしい曲をやったりする。アンコールはインストや“Fortress Europe”、“Rebel Warrior”でさらにフロアを沸かせた。一旦メンバーは去っていくも、大きなアンコールの声に応えて“Free Satpal Ram”。セットリストにも記載なく、最近だと2023年のクロアチアでやったくらいでここ15年くらい演奏されることが少ないレア曲である(セットリストfmをみる限り)。それをやってくれたので涙がでるくらい感動したし、この曲の持つメッセージの強さにも感動する。世界中で酷いことは起きているけど、少なくともこの場所は最高だ、それを持ち帰り世界にでいって、その感動を糧に生きていくしかないと改めて喝を入れてくれたようなライヴだった。

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Kazma Kobayashi