ロックンロールへの信仰
2度目のアンコールが終わり、ステージにアナログプレーヤーが置かれて、ダニーが新曲“NO FUTUREじゃいられない”をかける。するとフロアに流れる曲に合わせて歌う声が聞こえてきた。客電が点いているのに、なかなかフロアからお客さんは帰らない。新曲がここまで浸透しているとは。
ザ50回転ズの20周年のツアーのセミセミファイナル(この時点で残りは名古屋と大阪)としてライヴが東京・渋谷のWWW Xでおこなわれた。20年も経つとずっと来ている人、新しくファンになった人、子どもを連れて来ている人など年齢層も広がる。チケットはソールドアウトだったのでフロアは満員だった。
この日の1曲目はベイ・シティ・ローラーズのカヴァーで“Saturday Night”だった。50回転ズのライヴで特に土曜日だと度々演奏されるお馴染みの曲である。ボギーが登場してドラムを叩くと「あの曲」だと察知したフロアから歓声が上がり、ベースのドリー、そしてギターのダニーがステージに現れて「S・A・T・U・R・D・A・Y」と歌うと、フロアから「Night!」とレスポンスがある。これだけでこの日のライヴはステージとフロアが一体となって最高なんだと感じた。
20周年でバンドと一緒に歳を重ねた人もフロアにたくさんいたので、ダニーはMCで椅子席にするとか、フロアの後ろには電動ベッドを置くとか、立っているのが辛くなる年頃の人たちに優しい冗談を飛ばす。「(俺達をみて)気分が悪くなったら、いつでも観られるのでフロアを出てもいい」とか昨今のライヴの途中退場問題に一石を投じることも語る。
久しぶりに聴いた“MONEY! MONEY!”でフロアは揺れた。続く“KILLER”のギターソロが創造性に溢れていて毎回違うギターが味わえる。この日ボギーはヴォーカルをとる曲が3曲あり、“エイトビートがとまらない”、“耳鳴りロック”、そして初めてメンバー3人で曲作りに関わった“SPACE ROCK”で活躍する。50回転ズは今年ヨーロッパツアーをおこなったのだけど、ヨーロッパの人たちには“エイトビートがとまらない”のようなリフが重たい曲が受けたようで、そうした国外で揉まれてステージが一段階上がった感じがする。
ファンキーなリズムに改造された“天王寺エレジー”がおかしな味わいをもたらす。その余韻からダニーのMCを経て新曲“NO FUTUREじゃいられない”を中盤に演奏する。ダニーお得意のポップなサビを持つロックンロールで、冒頭にも書いたようにみんなが口ずさめる親しみやすさがある。続いて演奏されたのが、そのシングルのB面にあたる“SPACE ROCK”で先述の通りメンバー3人が曲作りに関わったポップなパンクナンバーである。
後半は“WE ARE THE KIDS”からゆっくりしっかりと立ち上がり、“NO NO NO”で加速して、ドリーが歌う“YOUNGERS ON THE ROAD”、ダニーが歌う“涙のスターダスト・トレイン”で頂点を迎える。疾走感があり、切ないポップなメロディのサビを持つこの2曲は50回転ズの屈指の人気曲であり、フロアの盛り上がりもこの曲が待たれていることが伝わるものだった。本編を締めくくるのは“おさらばブギウギ”で、恒例のコール&レスポンスも20年くらい前なら「もっと声をだせるだろ!」と大きな声がでるまでやり直していたけど、いつからか一発で決まるようになった。
アンコールは“Vinyl Change The World”、そしてここで自己紹介的なナンバーの“50回転ズのテーマ”であった。ロックンロールへの愛、感謝を歌う。メンバーはステージを去り、オーティス・レディングが歌うヴァージョンで“Wonderful World”(オリジナルはサム・クック)が流れる。しかしフロアは再度の登場を期待していた。そして、もう一度あったアンコールでは“ロックンロール・マジック”で、ロックンロールへ更なる感謝を捧げる。50回転ズにとってライヴとはロックンロールへの信仰を告白する場であり、フロアに詰め掛ける人たちと共有するものである。その楽しさが満ち満ちたライヴであった。
Setlist
1.Saturday Night
2.放課後のロックンロール
3.レッツゴー3匹
4.MONEY! MONEY!
5.KILLER
6.エイトビートがとまらない
7.ゲゲゲの鬼太郎
8.少年院のソナタ
9.耳鳴りロック
10.天王寺エレジー
11.NO FUTUREじゃいられない
12.SPACE ROCK
13.船乗りたちのメロディ
14.デヴィッド・ボウイをきどって
15.WE ARE THE KIDS
16.NO NO NO
17.YOUNGERS ON THE ROAD
18.涙のスターダスト・トレイン
19.おさらばブギウギ
encore
Vinyl Change The World
50回転ズのテーマ
ロックンロール・マジック