次のスターの予感
この日の会場である代官山UNITは最大600人のキャパシティである。この会場でLAUV (ラウヴ)をみられた人は幸運だった。LAUVの持つスケールがZeppクラスだったからだ。ステージでの立ち居振る舞いや、LAUVからでる音が「もっと大きいところで観たらもっと楽しいよ!」とアピールしているかのようだった。
シンプルな言葉やスキャットでのコール&レスポンス、腕を左右に振らせたり、しゃがませてからのジャンプをさせたり、フロアを背後に撮影したりと一体感を作り、盛り上げるのが上手いなあと感じさせた。エド・シーランがオープニングアクトに抜擢した理由もわかる。次のスターの素質が十分にある。
20時スタートの会場は、前日のライヴのソールドアウトを受けてかなりの入り。外国人が多い。女性比率がやや高い。時間ちょうどに、まず1人で登場してキーボードで”I Like Me Better”を弾き語る。ワンコーラスだけで止めて、下手にドラマー、上手に女性キーボーディストが加わり、本格的にライヴがスタートする。その”Paris in the Rain”では、タイトルに因んで傘を広げる。LAUVはなぜか自動車やバイクのメーカーであるスズキの大きなロゴが胸にあしらわれたシャツを着ている。ステージ中央には2メートルくらいのLAUVのシンボルマークが置かれていた。
基本的にはポップで聴きやすい曲が多い。跳ねるようなリズムを持つものや、しっとりとしたバラードもある。その中で異彩を放っていたのは、序盤に演奏された新曲”Paranoid”で、歌メロはかろうじてポップであるものの、変拍子のドラムでまるでプログレッシブロックみたいだった。そこからシームレスで”Reforget”につなげたのは見事。何事もなかったようにポップな世界に戻っていった。
基本的には打ち込みで作られた音であると思われるけど、生のドラムがあるおかげで、リズムは強化され迫力が増していた。配信の音を聴いているよりも音は分厚く感じられるし、音の感触はアリーナクラスでも対応できそうなものだった。LAUV自身は脇にある機材をタップして音をだしたり、曲によってはギターを弾く場面があったけど、基本はヴォーカルに専念することが多かった。
お客さんを煽り引っ張り上げて後半ではすっかり会場が温まっていた。ドラマティックなバラード”Breathe”、そしてサビの「Getting Over You」という連呼は逆説的なラブソングとも受け取れる”Getting Over You”で会場を盛り上げ本編が終わる。
アンコールに応え、あのイントロが流れる。歓声を上げるフロア。だけどLAUVはイントロを細切れにしてじらしていく。それが我慢ならないとなったときに”I Like Me Better”に入っていってフロアは最高潮の盛り上がりに達した。このときのスマートフォン撮影率が今まででみたライヴの中で一番多かったと思うくらい、後ろから観ていると光った画面がたくさんあった。「君といるときの自分が好きなんだ」というちょっとナルシスト入っているけど、ストレートな想いを告げる歌がもたらすハッピーな感じが会場に満ちていた。最後は”The Other”。いろんな曲が書けるけど、なんといってもメロディメイカーであることを知らしめている曲で締めくくる。ミュージシャンとしての身体能力と曲を作れる才能は、やはりエド・シーランやアウル・シティーのような存在になっていくのではないかと思った。
<SETLIST>
Intro
Paris in the Rain
Comfortable
Paranoid
Reforget
A Different Way
The Story Never Ends
Come Back Home
Question
Easy Love
Adrenaline
Breathe
Getting Over You
–Encore–
I Like Me Better
The Other
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