新たな才能をみた一夜
JPクーパーの一夜限りの日本公演は、会場に足を運んだ人が後々誇れるような貴重なライヴとなった。始まる前は、ケンドリック・ラマーから古いソウルまで流れていて、19時06分ころ場内が暗くなりメンバーたちが登場する。下手からベース、ドラム、ギター、キーボードと並び、中央はもちろんJPクーパー本人だ。特別なセットはなくシンプルなステージである。
まずは”We Were Raised Under Grey Skies”から始まった。JPクーパーはエレクトリックギターを弾きながらよく通る声で歌う。控えめな伴奏から徐々に楽器が激しくなるドラマティックなアレンジだった。
この日、JPクーパーの声がもちろん主役だけども、楽器、特にドラマーが手数が多くてバシバシ叩きまくる姿は印象を残した。バスドラムの音が後ろからみていても刺さるくらいだった。さらにベースのうねりがグルーヴを生みだし、いわゆるシンガーソングライターのライヴにしては低音が重厚だった。それでいて楽器の誰もヴォーカルを邪魔することがないという絶妙な味わいがあった。曲はメロディアスで温かみがあり、基本的にはスローテンポで歌をじっくり聴かせる。JPクーパーの声は澄んでいて、かつ往年のソウルシンガーのように会場を支配する声量がある。ジョン・レノンの”Jealous Guy”をしっとりと歌い上げたところが自分としてはグッとくるポイントだった。
“September Song”や”Perfect Strangers”は当然のようにフロアが湧き上がり、多くの人に待たれている曲であることを実感する。特に”Perfect Strangers”は、低音がしっかりしているバンドの演奏の利点が遺憾なく発揮されていて、少々ゆるめのダンスミュージックとして機能していた。
6歳の息子のことを話してから”Closer”を演奏したり、曲の成り立ちの話をしてから”Passport Home”と客席へ語りかけることも多く、初めて日本で演奏することへの嬉しさやちょっとした不安が見え隠れして好感度が上がった。
アンコールは、JPクーパーとキーボードだけで”In the Silence”、そしてバンドのメンバー全員で”Good Friend”。ソウルフルでおしゃれ、それでいて個人的な物語を歌うJPクーパーを野外のいいところ、フジロックでいえばヘヴンの夕方あたりで観ることができたら最高だと思った。
JP COOPER関連記事
・記事一覧