ザ50回転ズ | 東京 下北沢SHELTER | 2018.5.10

ロックンロールは語り掛ける

 下北沢シェルターのフロアは人がぎっしり。どうにかステージがみえる位置までたどり着くと、暑くてたまらず、立っているだけで汗がでてくる。この日は5月10日。「ご(5)じゅう(10)の日」として恒例になりつつあるイベントをおこなった。また新しいアルバム『ザ50回転ズ』を引っさげてのツアーが5月12日の京都からおこなわれる。それを控えた「0.5回目」のライヴでもある。

 21時ころに、いつものようにドクター・フィールグッドの”Riot In Cell Block Number Nine”が流れてバンドが登場する。まずは「50回転ズのテーマ」である。速さが取り柄です、といわんばかりのテンポでフロアを一気に引き上げる。続く「サンダーボーイ」で勢いを保ち、新しいアルバムから「純情学園1年生」。50回転ズが描く甘酸っぱい青春シリーズにまた1曲加わった。縦ノリの「KILLER」、ボギーが歌う「エイトビートがとまらない」。

 そして新曲の「新世界ブルース」は「天王寺エレジー」の2018年ヴァージョンというべきもので、大阪ミナミで男の帰りを待つ飲み屋の女の気持ちを歌う。エレキ歌謡という感じで、この題材の歌を異様な熱量で演奏する。ドリーがリードヴォーカルをとる「デヴィッドボウイをきどって」は、ボウイはボウイでもBOØWYを思わせるような軽快な曲。終演後にドリーに聞くと「(自分は)BOØWYを通過してないんで(影響は)よくわからないけど、80年代ぽい感じをだしたかった。歌詞は不思議なものにした。デヴィッド・ボウイがそういう人だったから」といっていたようにロックンロールしているのだけど、浮遊感ある曲になっていた。

「11時55分」はダニーが得意とする学園モノである。突っ走るこの日のなかではクールダウンする時間であった。終盤は「Vinyl Change The World」「Youngers On The Road」「ロックンロールマジック」「おさらばブギウギ」と定番曲を畳み掛ける。

 アンコールは「マチルダと旅を」。オーストラリアの民謡で放浪者を歌う「ワルチング・マチルダ」(”Waltzing Matilda”)から触発されたのだろう。(Smashing magでもお馴染みのシンガーソングライターで踊ろうマチルダがいる)。過去の曲でいえば各地を歌いながら巡る「レッツゴー3匹!!」に共通するアイリッシュ(ケルティック)パンクの曲で締めくくった。

 1時間強のライヴはツアーに期待を抱ける内容だった。この日感じたのは、すでにベテランといわれる年を重ねて演奏にズッシリ手応えがあったことだ。彼らは演奏自体で語ることができる領域に入ってきたのではないか。50回転ズの歌詞は「KILLER」のように深読みが可能のものもあるけど、多くはシンプルに「あの娘が好き」「ロックンロールが好き」である。それはそれでメッセージだけども、それ以上にギターソロが、ベースラインが、ドラムの響きがフロアに語り掛けているのではないか。そのコミュニケーションがライヴハウスの中で飛び交っているのではないかと感じる。この日、ダニーの声が苦しくなったところもあったけど、その演奏で十分説得力を持たせてしまったのであった。

Set List

1.50回転ズのテーマ
2.サンダーボーイ
3.純情学園1年生
4.KILLER
5.エイトビートがとまらない
6.新世界ブルース
7.デヴィッドボウイをきどって
8.11時55分
9.Vinyl Change The World
10.Youngers On The Road
11.ロックンロールマジック
12.おさらばブギウギ

encore
マチルダと旅を

ザ50回転ズ Hello!Eighteen Tour

05/13 高松TOONICE
05/17 大分club SPOT
05/18 鹿児島SR HALL
05/20 熊本Django
05/22 松山サロンキティ
05/23 出雲APOLLO
05/26 福岡 CB
05/27 広島セカンドクラッチ
05/31 横浜F.A.D YOKOHAMA
06/02 千葉LOOK
06/03 仙台enn2nd
06/05 静岡Sunash
06/09 徳島club GRINDHOUSE
06/14 札幌BESSIE HALL
06/16 旭川CASINO DRIVE
06/17 苫小牧ELLCUBE
06/20 盛岡the five morioka
06/21 郡山club #9
06/23 新潟CLUB RIVERST
06/24 金沢vanvan V4
06/30 名古屋SPADE BOX
07/01 渋谷WWW X
07/06 岡山 MO:GLA
07/07 梅田クラブクアトロ

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Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Ryota Mori