KING BROTHERS | 兵庫 神戸VARIT. | 2018.5.26

20年目に見た最も美しい夜

キングブラザーズの8年ぶりフルアルバム『wasteland』先行発売全国ツアーも25箇所目、最終日は地元兵庫の神戸VARIT.で行われた。

目潰しの眩いライティングの中、ジェイソンマスクを被ったゾニー(Dr)がドラムセットに立つ。このツアー中、最初で最後であるこのパフォーマンスは、彼がキングブラザーズに加入して初めてのオリジナルアルバムとなるツアーファイナルで、最も印象的なシーンのひとつだった。彼がいなければ、このアルバムはこの世に生を受けなかったかもしれないからだ。

バンドは初っ端から「ルル」の有無を言わさぬ圧倒的なプレイで、激しくぶっちぎっていく。決して速くはないこの曲で、この夜にかける3人の集中力がヒリヒリと伝わった。「☆☆☆☆」をはさみ、ニューアルバムから「No Thanks」「Kick Ass Rock」「Break on Through」へと突入していく。曲前にケイゾウ(Vo/G)が、曲中にマーヤ(G/スクリーム)がシャウトする度、フロアの熱気がぐんぐんあがっていく。

今年に入って、ケイゾウとマーヤは新しいギターをステージで使い始めた。それまでの3ピース時代にあった、マーヤのリードギター、ケイゾウのベースギターという立ち位置ではなく、ツインギターであればこその見せ場が随所に現れ、それぞれの音が溶け合うことなく輪郭があらわになっていた。26インチのバスドラに象徴されるゾニーの技量が目立ちすぎることなく、3人個々の音が饒舌で明確で圧倒的だった。ケイゾウの、絶望も希望も全て超越した魂から発せられる歌声も、奇を衒うことのなく随所に差し込まれるマーヤのスクリームも、ゾニーのカウントでさえ楽曲を成り立たせる重要なファクターであり、このツアーを経てバンドサウンドが新境地を迎えているようにみえた。

そして序盤のこの位置に「魂を売り飛ばせ!!」が配置される。ゾニーが加入して最初に作られたミドルテンポの曲「Judgement Man」、重いビートがスピーカーをブルブル震わせる「Doo Doo Scratch」と既存の曲たちがニューアルバム曲と変わらぬテンションで演奏される。マーヤがVoをとる「GET AWAY」『絵に描いたよ二人で』という歌詞に深読みしてしまうが、間を開けずケイゾウの乾いたハープが印象的なアルバム4曲目「踊る屍」へと続く。『望んだお前の人生か?燃え尽きて灰になるまでは』でケイゾウは振り絞るように叫んだ。一転アルバム中盤、最も焦燥感を伝える1曲である「最果ての場所」が胸に迫る。

「ありがとう、25本帰って来れました。今回自分たちでレコーディングして全部めちゃくちゃ西宮サウンドになってますから是非聞いてください。何よりもこのスーパー格好いいMr.ゾニーの最初のアルバムになってますから。そして何よりも世界で最も信頼する相棒、マーヤさんのギター最近ヤバくないですか?超ヤバイぜ」

ケイゾウのMCに会場からは拍手と笑顔が溢れた。

ケイゾウがマーヤの紹介をし始めると、マーヤは「69」のイントロを静かに弾き始めた。「最高にクールなギターとビート、ロックの具合はどうですか?2階席のみなさんロックの具合はどうですか? 美しい光景がここから見えますよ!神戸、もっともっと、もっともっと、もっともっともっとバカになってください!」

20年間キングブラザーズであり続ける精神力は並大抵ではなかっただろう。しかしここへ来て、20年間のどの夜よりも潔く真っ直すぐで、震えるほどの爆発的な熱量をスパークさせる化け物のようなバンドの証明として、アルバム最後の曲「The Machine」をバンドは繰り出した。『これはKING BROTHERS / 最新型のロックンロール / キミにもわかるかい?』と投げかけるバンドは、驚異的な演奏を見せつけた。その姿こそこの夜の美しさそのものだった。

「Bang! Blues」を引き金に終盤に向かってバンドは加速度を上げていく。突き抜けた感のある演奏は「Paint it Black」の途中からフロアに機材を降ろしての床演奏でも、疾走していた。観客が360度3人を、その音像ごと包囲する。「No! No! No!」「No Want」とこの日、アルバム1曲目を除く9曲を演奏し最後の曲「マッハクラブ」を迎えた。マーヤはゾニーとケイゾウを中心にフロアをぐるぐると担がれ移動する。彼らはここがクライマックスかどうかわからない、長い長いロードムービーの最中にいるのだと「ニ・シ・ノ・ミ・ヤ」を叫び、2階へと運ばれるマーヤをみてそんな思いがよぎった。

「神戸!ありがとう、20周年25本目最後が神戸でよかった。とても美しい景色に飛び込んでみようと思うんですけど、お前たちなら難なくキャッチしてくれる、Rock’n’ Roll Fuck You!!」そう言ってフロアに飛び降りたマーヤは、差し出される数多の腕にしっかりとキャッチされ「ロックンロールはまだまだ続く、Fuck You!」と叫んだ。

6月6日(ロックンロールの日)にニューアルバム『wasteland』は全国発売される。7月には東京と大阪でリリースパーティも行われる。詳細は、オフィシャルサイトを参照ください。

<SET LIST>
01.ルル
02.☆☆☆☆
03.No Thanks
04.Kick Ass Rock
05.Break on Through
06.魂を売り飛ばせ!!
07.Judgement Man
08.Doo Doo Scratch
09.GET AWAY
10.踊る屍
11.The Farthest End
12.69
13.KILL YOUR IDOL
14.The Machine
15.Sympathy For The XXXXX
16.Bang! Blues
17.Paint It Black!
18.No! No! No!
19.No Want
20.マッハクラブ

En.スパイボーイズ

 

KING BROTHERS 『何も欲しくない [No Want]』MUSIC VIDEO”

 KING BROTHERS 20周年記念 & NEWアルバム発売記念パーティ
『wasteland』

<東京編>
日程:2018年7月14日(土)
会場:渋谷WWW
出演:POLYSICS / SCOOBIE DO / KING BROTHERS /
DJ:ネモト・ド・ショボーレ(DECKREC)
問合:WWW 03-5458-7685
公演詳細:http://www-shibuya.jp/schedule/009013.php

<大阪編>
日程:2018年7月15日(日)
会場:梅田バナナホール
出演:GUITAR WOLF / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER / KING BROTHERS /
DJ:KODAMA(TIME BOMB RECORD)
問合:梅田バナナホール 06-6809-3016
公演詳細:https://banana-hall.com/

<両公演共通>
時間:open 17:30 / start 18:00
料金:
KING BROTHERS WEB限定先行(4/28〜)3,969円 (特典付/(1Dr別)
一般前売り4,000円(1Dr別)/当日5,000円(1Dr別)
*20才おめでとうキャッシュバック有!
(今年成人式を迎えた二十歳の若者は、当日受付で身分証提示で1000円キャッシュバック)
*入場順は、オフィシャル最速先行>一般前売>当日券となります。
*一般発売の詳細は後日発表。

 

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Text by Tomoko Okabe
Photo by Tomoko Okabe