KING BROTHERS | 大阪 バナナホール | 2018.7.15

キングブラザーズ以外、誰もキングブラザーズにはなれない

シーガル・スクリーミング・キスハー・キスハー(以下シーガル)のライブを見に行った10代のケイゾウ(Vo/G)は、そこで対バンだったギターウルフと出会う。彼がロックンロールバンドをやろうと決意したその瞬間こそ、キングブラザーズが生まれた瞬間でもあった。

キングブラザーズ20周年記念&Newアルバム発売記念パーティ東京編の翌日、7月15日には梅田バナナホールにて大阪編が行われた。前説をするケイゾウを後ろから抱きしめた日暮愛葉率いるシーガルも、新ベーシスト”ゴッツ”が加わった新生ギターウルフも、リミッターを外した容赦ない手加減なしの徹底的な攻め方で、日中の酷暑を引きずり込んだようなとんでもなく熱いステージを繰り広げた。

“オールナイトでぶっとばせ”でギターウルフ一色に塗りつぶされた会場内の空気を、キングブラザーズはどんな風に上書きするのだろう。観客の胸が高鳴る中、3人は登場した。

「ロックンロールしまくってください、キングブラザーズ行きます!」ケイゾウが叫び、ゾニー(Dr)が腕を振り下ろし、マーヤ(G/スクリーム)がコードをかき鳴らし、眩しいライティングにそのシルエットが浮かび上がると、ハッと息を飲み、覚醒させられた。1曲目の”ルル”は音間を埋めるようにマーヤがシャウトする。「先輩をぶち殺せ!」という声にはフロアが湧き上がり、初っ端から客の上で「ニ・シ・ノ・ミ・ヤ」コールをぶちかました。

“☆☆☆☆”ではマーヤとフロアの気合いが「パワー」というコールによって行き来した。”No Thanks”でケイゾウは「ダセェことは」を語りかけるように歌い、続けて「もういらない!」と声の限りに叫んだ。”Break On Through”の後半はゾニーの轟音が支配するなか、情感たっぷりのマーヤのリフでフロアから金切り声があがる。ケイゾウは序盤の”魂を売り飛ばせ!”ですでに声が枯れてしまっていたが、ライブが進むなか客を煽り、メンバーを焚きつけ、MCによって自らを奮い立たせていた。

その時その瞬間の演奏力やグルーヴ感を全て昇華させ、最善の音を鳴らす事。それを完璧なライブと呼ぶならば、この日の彼らのライブは完璧だった。”Doo Doo Scratch”の決して多くはない音数で奏でられた重低音のフレーズに、ケイゾウの息を飲むほどのただならぬ覚悟が見えた。かと思えば”Sympathy For The XXXXX”のマーヤの単音フレーズはダンサブルかつセクシーだ。1曲の中にも緩急をつけたビートを操るゾニーは”The Machine”にみられる、あらゆるものを飲み込んでエネルギーにしていく爆発的なドラミングで、バンドは随所で炸裂していく。

ギターウルフが勧善懲悪のヒーローならば、キングブラザーズは未開の地を地響きをあげながら進んでいく勇者ではないだろうか。ギターウルフがそうであるように、キングブラザーズ以外、誰もキングブラザーズにはなれない。”Bang! Blues”のトルネードのような気迫に満ちたブルースを演奏するアーティストに、いまだかつて出会ったことがない。

「ギター買ってバンドやってください。嫌なことなんてやめて、好きなことだけやってください。」”マッハクラブ”の前にケイゾウは力強くそう語った。政治的なメッセージを語るわけではない。ロックンロールの力を、ロックンロールで世界が変わると信じている、純粋なままやってきた20年だ。「20年飛び込み続けてきました、ここからが21周年への歩み!」とマーヤは大股で客の上を歩いていく。「ロックンロールで完璧さ!」と叫ぶマーヤはステージに戻り客を集めて並ばせる。「ギターウルフ、シーガル・スクリーミング・キスハー・キスハー、いつまでも闘ってください!ファッキュー!」と大きな弧を描くように飛び込んだ。

本編後、ほどなくして現れた3人は、ケイゾウのシャウトでパーティの終わりへとスパークさせる。「ありがとう、まだまだ足りない。全員おかしくなってください、踊りまくれ!スパイボーイズ!」そして、1stアルバムから”King of Boogie”が演奏される。跡形もなく燃え尽きてしまうほどの熱量が、観客の真ん中で生み出されていた。

3月から5月まで行われていたNewアルバム先行発売ツアーを経た今、強靭な体力と高い演奏力を身に付け、ブルースもブギーもロックンロールも全て手中に入れた、不屈のキングブラザーズに満ち満ちていた。8月各所に出演する夏フェス、9月にはニートビーツ、ザ50回転ズの三つ巴によるROCK’N’ROLL EXPRESS!と、アニバーサリーイヤーの勢いはまだまだ止まらない。

スケジュール詳細は、オフィシャルサイトをご覧ください。

<SET LIST>
01.Big Boss
02.☆☆☆☆
03.No.Thanks
04.Break On Through
05.魂を売り飛ばせ!
06.×××××
07.GET AWAY
08.踊る屍
09.Doo Doo Scratch
10.KILL YOUR IDOR
11.The Machine
12,Sympathy For The XXXXX
13.No! No! No!
14.No Want
15.Bang! Blues
16.マッハクラブ

En1.スパイボーイズ
En2.King of Boogie

 

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Text by Tomoko Okabe
Photo by Tomoko Okabe