マウンテン・パイオッツ|福井 HALL BEE|2018.07.07

哀愁と激情のネオ・ラスティック

7月7日福井県福井市の繁華街にあるライブハウス「HALL BEE」で、マウンテン・パイオッツ(Mt.Paiot’s)のライブが行われた。マウンテン・パイオッツという名前からどんなバンドを想像するだろうか?一度聞いたら忘れられない名前ではないだろうか?かくいう私も、初めてバンド名を聞いた時、どんな音楽をしているのか想像もつかなかった。彼らは、主にラスティックと言われるジャンルで活動している。2006年に初めてフジロックに出演したFloggingMolly(フロッギングモリー)が得意とするアイリッシュ音楽やカウパンクをベースに、カントリー・サイコビリーなどを彼らのセンスでバンドに落とし込んでいる。歌詞は英語で歌われるものが多く、洋楽が好きな人にも好まれている。踊れることはもちろんなのだが、時に哀愁もあり、男らしさに心を打たれるファンも多い。ウッドベース・バンジョー・ギター・アコーディオン・マンドリン・ドラムという民族楽器を含む編成も面白い。

この日の天候は悪く、雨の七夕だった。それでも足を運んできたお客さんの熱気で、ライブハウス内の湿度は高く、ライターの火がつかないぐらいだった。主催のノートリアスロックのDJが終わり、ゆっくりと静かにマウンテン・パイオッツの演奏が始まった。一曲目はややスローテンポの「HORIZON」だ。一昨年、10年ぶりに発売したセカンドアルバムの4曲目だ。周りのフロアを見回すと、皆騒ぎたくてウズウズしているように見えた。彼らの楽曲は激しいものが多く、ライブによっては一曲目からブチ上げてくる時もある。今日のスタートは、まるで「待て!」を強要されているかのような、そんな始まりだった。しかし間髪入れずに演奏されたのは、「ON THE STREET」。待ってました!と言わんばかりに、フロアが一気に熱くなった。踊り狂う人、拳を振り上げる人様々だ。そして曲の終盤に展開される、転調から畳み掛けるようなNAOTO(Acc.)の旋律と翔(Mand.)の弦が激しく美しくかき鳴らされた。そのまま曲が終わることなく、MACCHANG(Dr)のドラムは一定のリズムを保っている。そこにウッドベースのカチカチというスラップ音が加わり「OLD BOY」が自然な流れで始まる。KOSSY(Vo. / Wood Bass)の哀愁たっぷりの声に聞き入っていると、翔の猛々しいマンドリンの速弾きを引き金に、メンバーの演奏も一気に加速してくる。そのままフロアはもみくちゃになり、どこに立っているか把握できないぐらいだった。

曲が終わり、OKKUN(Vo. / 5-String Banjo)が「金沢からマウンテン・パイオッツです。是非最後まで楽しんでいってください、よろしくお願いします。」と一言。彼のMCは、いつも少しぶっきらぼうで短い。でも、そこが痺れるというファンも多い。過剰なリップサービスや奇抜なパフォーマンスではなく、音楽で客と向き合っているように感じる。そして演奏されたのは、そんなぶっきらぼうなOKKUNがボーカルの曲「Asuca」だ。サビの部分では、客も大声で叫んでいた。彼らのライブでは、ダイブ・モッシュ・パンチ合戦も当たり前にある。それでも皆笑顔でライブを楽しんでいる光景は、近年あまり見かけなくなった。それを少し寂しく感じていることもあり、私は彼らのライブに足を運ぶのかもしれない。

そんな熱くなったフロアを、なだめるかのように始まったのは「DevilWaltz」。この曲は、KOSSYが物哀しい雰囲気を歌い上げる曲だ。間奏のSHIGE(Guitar / Cho)の泣きのメロディーから始まるメンバー全員の速弾きに、一度クールダウンしたかのように見えたフロアは、再び嵐のような熱気を取り戻す。彼らの演奏は、間奏や曲の終わりまで一切の手抜きがないのだ。そしてカントリーナンバーの「BlankWall」を立て続けに演奏。陽気な曲調になりがちなカントリーだが、マウンテン・パイオッツらしい鋭いエッジが効いていて、ほのぼのした雰囲気は無い。そのままバンジョーとギターの掛け合いが始まり、OKKUNの高らかな掛け声を合図に演奏されたのは、「Far Away」だ。掛け声に触発され、客の拳が振り上げられる。曲の後半、翔からNAOTOへの息のあったソロまわしからバトンタッチされたSHIGEが、ギターを弾きながらステージからフロアに降りてきた。そのままフロアで演奏し続けたSHIGEの帽子を、客が取り上げるというハプニングもあり、フロアの熱気は最高潮に達していた。

鼓動を刺激する軽快なMACCHANGのドラムが鳴り響き、OKKUNが「ありがとうございました!ラストです、マウンテン・パイオッツでした!福井最高でした、また会いましょう!」とお礼を述べて「LOW LIFE」が始まった。イントロから大きな歓声が上がったこの曲は、お客さんの中でアンセム的な存在になっている。客がステージに上がり歌ったり踊ったり飛び跳ねる様子が、今でも脳裏に焼き付いて離れない。まだまだ聞いていたい、もっと騒いでいたいという心地よい余韻を残したまま、30分のライブは終了した。

金沢のバンドだが、北陸以外でも演奏することが多く、全国にファンがいるマウンテン・パイオッツ。この日、どこかで彼らの音楽を知って駆けつけた外国のお客さんもいたのだが、大いに感動して帰ったそうだ。一瞬で盛り上がれる爆発力を秘めた、マウンテン・パイオッツの今後の活動が、とても楽しみだ。

▼セットリスト:
01 HORIZON
02 ON THE STREET
03 OLD BOY
04 Asuca
05 DevilWaltz
06 BlankWall
07 Far Away
08 LOW LIFE

▼Artist Info.
石川県金沢市を中心に活動するラスティック・ストンプバンド。ラスティックの基本形の楽器編成ながらカウパンク、ネオロカビリー、80’s サイコビリーをベースに、メタル、ハードコア等からの影響も感じさせる幅広いサウンドを展開し、いわゆるアイリッシュパンクと呼ばれるアイリッシュmeetsパンクロックとは一線を画する。

▼Member
KOSSY(Vo. / Wood Bass)
OKKUN(Vo. / 5-String Banjo)
SHIGE(Guitar / Cho)
NAOTO(Accordion / Cho)
翔(Mandolin / Cho)
MACCHANG(Drums)

▼Official HP
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Instagram
https://www.instagram.com/mtpaiots_official

▼Discography
2006年 1st Album「Northland Stomp」
2007年V.A. / GREEN ANTHEM
2009年V.A. / RUSTIC STOMP 2009
2010年 V.A. / Never trust a friend
2016年 RUSTIC STOMP 2016
2016年2nd Album「We are…」
2018年 V.A/ NORTH ISLAND STOMP

▼音源
Mt.Paiot’s「We Are…」
https://itunes.apple.com/jp/album/we-are/1129051461

▼動画

▼Tour Dates
8月18日(土)金沢vanvan V4
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Mt.Paiot’s | 記事一覧

Text by Rie Urabe
Photo by Mt.Paiot’s Official