魔物、ここに立つ
キングブラザーズが9月9日、大阪 味園ユニバースで開催されたイベント、夏の魔物2018 in OSAKAに出演した。9月2日の東京編にも出演していた彼らの圧倒的なライブアクトを受け、別ステージでライブが行われているにもかかわらず、セッティング段階からメインステージとなる赤コーナー前には観客が集中していた。
予定時刻から10分ほど遅れて登場するやいなや、“Big Boss”からねじ伏せるような強烈な音がユニバースに満ちた。マーヤ(G/スクリーム)は最近ライブ毎にギター変えながら音作りをしている。25分という短い時間であるからこそ、求められた時間を楽しませる為、自ら楽しむ為にこだわる音がある。眼光を鋭くさせたケイゾウ(Vo/G)が何度も繰り返し客を煽り思いをぶつけている間、マーヤの音は爆音の中で際立っていた。マーヤが客席に飛び込むとケイゾウは、しゃがみながらマーヤを遠目で確認し、ギターにのめり込むように弾いた。ゾニー(Dr)はステージのド真ん中、26インチのバスドラの向こう側で、気迫の密度を変えながら二人のフロントマンを見やり、音の痕跡を確実に残していた。
最後の曲“ルル”で客に飛び込む「マーヤタイム」が彼らの持ち時間の半分近くを占めていた。かつて、マイクを咥えながら叫び、飛び、エクスプロージョンしていた彼は観客に「集まれ!密度を上げろ!」と叫んでいた。キングブラザーズは、流行りを見据え、豪華なアーティストを交えながら最先端の音楽を作るようなバンドではない。かといって頑なに礎にしがみついている訳でもない。それはまるで老舗料理屋が、創業時から変わらぬ味を提供する為に日々進化を怠らないのに似ている。20年間いつの時代も、向かい合った客の心にくさびを打ち接合をより強化にしてきた。血をたぎらせながら転がり続けるバンドはまさに、魔物といえるのである。
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