朝霧JAM 2018 | 霧と荒天の1日目レポート

朝霧JAM - It's a beautiful day 2018.010.06

台風25号が近づいていて、そもそも開催できるのかと気を揉ませた2018年の朝霧JAM。台風の直撃は免れたけれども、そのせいなのか、もともと居座っている秋雨前線のせいなのか1日目は悪天候に見舞われた。

朝、着いたときに朝霧アリーナは霧に包まれていた。まさに地名の通りだった。多少日が差すときもあったけど、この霧が夜になっても晴れないままだった。

壮絶なステージ、ボアダムス

特に、風雨が強くなった夕方、メインステージにあたるレインボー・ステージにBOREDOMS(ボアダムス)が登場した。ステージ前にいるとキャンプサイトAに張られているテントが霧に覆われてみえないという状態で、ボアダムスがでてくるなんて、この時点で伝説の予感がする。

ステージにいるのは山塚アイとギタリストが3人、ベースが1人、ドラムが2人という編成だった。ボアダムスはいろんな編成で朝霧JAMにでているけど、今回は比較的シンプルなものだった。エレクトロなノイズを撒き散らしてから、山塚アイが叫び、ジャンプして、少しずつずらしながらも反復する演奏に乗せて山塚アイも繰り返し叫び踊り、叫び踊る。

地から湧きでるようなリズム、宇宙と交感するようなノイズ、降り続ける雨、ステージを包む霧、悪天候を物ともせず、でなく、悪天候だからこそ、その高みに向けて演奏は狂気を伴い激しくなり朝霧史上に残る名演となったのだ。40分近い早めのテンポで駆け抜けたあとは、少しテンポを落としてお客さんを引きつけて約1時間のトリップが終わった。

ホンワカした兄妹、テニソン

相変わらず雨が止まないなか、ムーン・シャインでは、カナダから来た兄妹エレクトロ・デュオのTENNYSON(テニソン)が登場した。機材の調整で10分くらい押して始まる。兄・ルークはキーボード類に囲まれ、妹・テスはドラムセットに囲まれていた。始まるときに兄は日本語であいさつする。「妹デス」と紹介して”Pegasus.exe”が始まるも、機材の調子が悪く「ヤバイ、チョット待ッテ」といってやり直す。 “With You”でも日本語がサンプリングされていて、日本語はどうやって覚えたのだろう? と思ったら、ルークの彼女が日本人だとインタビューで語っていた

ポップでエレクトロでドリーミーな音、まだ若い2人から漂うホンワカした雰囲気に、雨が叩きつけられても空気は和んだ。妹は途中でエレクトリックドラムから金属のシンバルに交換し、曲によって使い分けるこだわりをみせる。正直いってまだまだ未熟だと感じた。特に、プツッと唐突に「え? この曲終わり?」と思わせる曲のフィニッシュのところは、もうちょっと考えたほうがいい。でも、そんな未熟なところまで含めて愛せるような2人だった。メロディの美しさ、可愛らしいところから壮大さを感じさせる曲のバラエティは、ポテンシャルの高さをしっかり伝えることができたと思う。

動くアメリカ・オルタナ史、ヨ・ラ・テンゴ

雨が止まないまま、レインボー・ステージは、ヘッドライナーとしてヨ・ラ・テンゴが登場する。冒頭はノイズを数分間放出し、新譜『There’s A Riot Going On』から”You Are Here”で始まる。ライヴは『There’s A Riot Going On』や『I Can Hear the Heart Beating as One』を中心に演奏された。相変わらず雨が降ったり止んだりして条件はよくなかったけれども、ヴェルベットアンダーグランドからソニックユースに至るまでアメリカのオルタナ/インディーズの歴史をおさらいしているようなステージで楽しめた。

本編は、”Pass the Hatchet, I Think I’m Goodkind”で、ミニマムなリズムに乗って、アイラ・カプランのノイジーでフリーなギターが鳴りまくり、ステージ上も嵐だった。アンコールはジョージ・マックレーのカヴァーで”You Can Have It All”。ジョージア・ハブレイのアンニュイな歌声がこのような状況でも和ませて締めくくった。

ライヴは終わっても天候は悪いまま。この過酷な一晩をどのように乗り越えるのか、お客さんたちはそれぞれのテントに帰っていった。

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Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Masami Yasue,Shinya Arimoto