朝霧JAM 2018 | 富士山くっきり! 快晴の2日目のレポート

朝霧JAM - It's a beautiful day 2018.010.08

2日目は打って変わって快晴になった。富士山もくっきりみえるくらいの晴れ。それどころか、日差しが強く夏のような暑さだった。今までは、2日目の昼まで天候が悪くて、夕方ようやく晴れたとかはあったけど、はっきり1日目と2日目でこんなに正反対の天気だった朝霧JAMは珍しい。

晴れるとレインボー・ステージには多くの人たちが集まっていた。雨だとテントに引きこもりがちになり、晴れだとワラワラとでてくることがよくわかる。

新ローファイ女王、スネイル・メイル

そんな午後のレインボー・ステージにSnail Mail(スネイル・メイル)が登場する。彼女は、ディスクユニオンのTシャツを着て、フェンダーのジャガーかジャズマスターのギターを持ち、ステージ中央に立つ。ステージ下手にはレスポールのサポートギタリスト、上手にベース、そしてドラムという編成である。アルバム『Lush』を中心に演奏され、晴れ渡った午後の高原に彼女の物憂げな声がローファイなサウンドに乗って広がっていく。音源を聴いたときは、90年代オルタナティブへの憧憬が感じられ、同時代でいうとコートニー・バーネットと共振するような、よくできたアルバムだと思ったけど、ライヴではもうちょっとメリハリついた感じにしたほうがよかったかなと。若いし、まだまだこれからのアーティストだろう。最後は、大先輩であるコートニー・ラヴの”Second Most Beautiful Girl In The World”を演奏して去っていった。

ぼくの考えた最強のプレイリスト、ノレッジ

ムーンシャインでKNXWLEDGE(ノレッジ)。ロサンゼルスをベースに活動しているビートメーカー/プロデューサーによるDJセットである。アナログレコードでなく、タブレットか何かの機材を操作してのDJである。選曲はヒップホップから新旧のR&Bまでノレッジのルーツが伺われるものだった。早い時間にケンドリック・ラマー”Momma”を投下して、ステージ前に詰めかけた人たちは歓声を上げる。ヒップホップはアイス・キューブとか自身の曲をかける。そして、トッド・ラングレンやプリンスのカヴァーで知られるソウルの名曲、デルフォニックスの”La-La Means I Love You”を回し、サビでボリュームを絞ってお客さんたちに合唱させる。以降、シャニースやジャネット・ジャクソンやローリン・ヒルが、2パックやスヌープ・ドッグの間に掛けられていた。正直、曲のつなぎが雑なんだけど、歌いながら楽しげにDJする姿に、ノレッジが好きな曲のプレイリストをみせてくれる感じで和んだのであった。

16時45分に終わる予定が次のJ.ROCCがブースに現れてもずっと回し続けた。J.ROCCがセッティングに手間取っているのかいろいろ機材の接続などをおこなっていて、ノレッジのプレイする時間が伸びていく。17時10分ころようやくMr. Fingersの”Can You Feel It”でバトンタッチとなった。

華麗なるギタープレイ、ジョン・バトラー・トリオ+

日が暮れて富士山も雲に隠れて18時、レインボー・ステージにJOHN BUTLER TRIO+(ジョン・バトラー・トリオ・プラス)が登場する。暑かった気温もこのころにはよい具合に下がり、ようやくライヴを観るのに一番快適な状態になった。

ステージ下手ジョン・バトラーがいて後ろにドラム、上手の奥に「プラス」にあたる2人――女性コーラス兼パーカッション、男性コーラス兼パーカッション兼キーボード――そして前方にベース兼キーボードの5人である。

まずは、新譜『Home』から”Wade in the Water”。ジョン・バトラーは椅子に座り膝にワイゼンボーンと思われるギターを乗せて弾く。重たいドラムの音が鳴り響き、ギターが唸りを上げる。続く”Betterman”ではアコースティック、”Blame It On Me”ではテレキャスターに、次々とギターを持ち替えていく。かと思えば”Home”でドラムを叩く。

曲によっては「プラス」が抜けてトリオ編成になるときもあるし、「プラス」も含めて5人でドラムを叩くこともあった。その柔軟なバンドのあり方はそのまま音楽の印象ともつながっていて、ファンク、ブルース、フォーク、カントリー、レゲエを絶妙にブレンドし渋みをみせてくれる。テクニシャンといっても、非HR/HMな方向で超絶なプレイで、その指使いに「すげぇ、すげぇ」と感嘆の声をだすしかない。

その中でも、”Ocean”の10分以上に渡るアコースティックギターによるソロは圧巻だった。12弦ギターから1本弦外しているようなので11の弦で表現される流麗な音が高原のステージから放たれ、ステージ前に詰めかけた人たちは歓声を上げていた。

コール&レスポンスがおこなわれた”We Want More”でお客さんたちを上げさせ、迫力の”Funky Tonight”まで朝霧のお客さんを魅了した。終わってもしばらくアンコールを求める声が止まなかった。

全ての天候があった今年の朝霧JAM、快適な2日目はこうして終わった。フェスを通してみると、荒天の1日目を大きな混乱なく乗り切ったのは、今までの経験が蓄積されたことの証だろう。さらにタフになってまた来年!

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Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Masami Yasue,Shinya Arimoto