ロックンロールを生き、生き残る
王冠にも見える金色のユニバースのステージのネオン管が赤く光ると、まるでドクドクと流れ出す血のように見えた。「ルル」のエネルギーを溜めるだけ溜め込んで放つ3人の鬼気迫る演奏に、そのライティングはハマり過ぎていてフロアからは言葉にならない叫び声が次々と挙がった。
キングブラザーズ20周年であるアニバーサリーイヤーの年の暮れ12月27日(金)年末恒例となっているギターウルフ presents『宇宙戦艦ミソノFEVER』の中盤に、彼らは出演した。戸川階段(戸川純+JOJO広重+ナスカ・カー・ナカヤ)とギターウルフの出番を前に演奏するのは、相当なタフな精神力が必要なのだろう。しかし、こちらの思惑は木っ端微塵に砕かれる。突き刺さるような目をした3人が、普段どこに潜ませているのかという気迫に次々と着火していき、客を揺さぶりその渦中に巻き込んでいく様は痛快でもあり、空恐ろしくもあった。
前のめりで「ニ・シ・ノ・ミ・ヤ」という単語をシャウトするマーヤ(G/スクリーム)は、躊躇なく人の上をガツガツと歩いていく。足を踏み外しても足元をすくわれても、彼は決して下を向くことがない。狂犬の目で、ただ前を見ている。ケイゾウ(Vo/G)とゾニー(Dr)はマーヤを見やり地鳴りのような演奏を続ける。
「Bang! Blues」のゾニーの轟音に、ケイゾウとマーヤはギターをかき鳴らしながら重ねていく。音像は上昇気流を描いていく。キングブラザーズはこうして真っ直ぐすぎる渾身の姿で、見るものの感情を揺さぶり、形のない見えないエネルギーを増幅させるのだ。
ローリングストーンズのように、という歌詞が指し示す「Sympathy For The XXXXX」のブルースとグルーヴは今のバンドを象徴している。「もっと前へ前へ前へ」と何度も繰り返し叫ぶケイゾウの言葉に、過去を重ね変化してきたバンドの生々しさに触れた。「フーフー」という客とのコールアンドレスポンスの最中、マーヤはマイクをケイゾウに、ゾニーに向けながら笑っていた。何気ない瞬間にバンド内の関係性が垣間見れるのも、今のバンドならではだと思う。
受け止め、引き受ける覚悟の出来た観客は、ロックンロールの権化のようなマーヤを担いでフロアをぐるぐる回る。ケイゾウとゾニーはエネルギーを使い果たす勢いで渾身を込めていく。「ロックンロールの生き残り、全員でロックンロールしていくぞ、ロックンロールで完璧さ!」と腕を高らかに掲げたマーヤは最後に、みんなロックンローラーだと言い放った。それぞれがそれぞれの転がる道を進む。キングブラザーズはいつも我々の一歩前で、それを見せてくれている。
2018年が終わる。長いバンド人生において20年は通過点だ。12月31日(月) 大晦日@梅田クラブクアトロのカウントダウンイベント「謹賀魂」(KINDAMA)のトリにキングブラザーズは出演する。新たな進路を、これからも追いかけようと思う。
【お知らせ】
2019年1月13日(日)、当サイトの開設1周年を記念して、渋谷でDJ&取材成果の展示イベントを開催します。キングブラザーズ写真展示も行います。1日限りの開催ですが、お近くにいらした際は、ぜひお立ち寄りください。
詳しくはこちらの記事をご覧ください
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【LIM PRESS NEWYEAR MEETUP】
https://limpress.com/news/5726
<SET LIST>
1.ルル
2.☆☆☆☆
3.Bang! Blues
4.Sympathy For The XXXXX
5.マッハクラブ
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