KING BROTHERS | 大阪 ELEVATE | 2019.01.19

捧げられた魂

The Dead 60sの「Riot Radio」やThe Kinksの「You Really Got Me」、シーナ&ロケッツやルースターズという王道のナンバーが選曲される中、The Rolling Stonesの「Sympathy For The Devil」を「キングブラザーズの予習に」とフロアに声をかけてスピンしたDJも、長年彼らに憧れていた一人だった。

1月19日(土)塚本エレバティにて行われたイベント『ロックンロール・ドンパチ』のトリに現れたキングブラザーズは、観客からの羨望の眼差しを受け止めていた。ケイゾウ(Vo/G)は久しぶりに真っ白なナショナルのギターをこの日の相棒に選んでいた。彼らと同じステージに立てることを夢見ていた出演者が、マーヤ(G/スクリーム)の飛ばしたマイクに向かって叫び声をあげると、ケイゾウはその意気込みに応えるよう自らも声の限りシャウトし続けた。

期待される空気の中、前半それぞれのグルーヴにバラつきがあるような気がしたが「マッハクラブ」でマーヤが睨みを効かせながらフロアに放った「ロックンロールに魂捧げなさすぎ!魂の捧げ方教えます、2019年キングブラザーズを受け止めろ!」のスクリームでガラリとバンドの雰囲気もフロアの温度も変わった。ゾニー(Dr)とケイゾウは低音を鳴り響かせ、「お前のロックンロールを離すな」と叫ぶマーヤにはフロアからのoi oiコールが浴びせられていた。

「後の4曲動いてなかったらマジで殺す!」そのマーヤの意識がケイゾウとゾニーと融合し、バンドはスパークしていく。誰かが突出すると、瞬時に他のメンバーが追随する。包容力を見せていた前半の演奏から、バンドの意地を見せた後半の演奏へ。「ルル」のイントロからフロア演奏へ。本気を目の当たりにした観客一人一人に問われる「ロックンロールとは」という命題が突き刺さる。「ミサイルのように、ドドドドド!」と叫び担がれるマーヤに、ミラーボールの光がまるで火の粉のように降り注いだ。

「グズグズしている暇はない ただやけくそに走るだけさ」というフレーズは1曲目の「King of Boogie」のもので、彼らが進んできた道のりに色濃く刻まれている。ロックンロールは自由になる為の手段であるし、バンドは自らを昇華させていく場でもある。キングブラザーズは若者たちの夢を叶えるために存在するのではない。アンコールの「Big Boss」の燃え盛る様は、ライブ後にも消えない炎のように余韻となって観客の胸を去来するだろう。追いついても追い越せない、唯一無二の表現者としての更なる飛躍を見せて欲しいと思う。

 

<SET LIST>

1.King of Boogie
2.魂を売り飛ばせ!
3.Big Beat
4.No! No! No!
5.マッハクラブ
6.No Want
7.Bang! Blues
8.Sympathy For The XXXXX
9.ルル

EN.Big Boss

 

Text by TOMOKO OKABE
Photo by TOMOKO OKABE