火をつけてくれたバンド
この日は「WILD SIDE ROCK!!」というイベントだった。ザ50回転ズはトリとして21時ころに登場した。十分に温められたフロアに「マネー!マネー!」が投げ込まれた。すぐに湧き上がる。次の「キラー」では暗めの照明の下、スカのリズムをハードに演奏してフロアは縦ノリへ。ギターソロのときに「今のお前らの声はこんな感じ」と小さめの音量でダニーがギターを弾き、「もっと大きな声だせ!」と煽ると、それに呼応して大きな歓声が返ってくる。それを受けて渾身のギターソロを弾くダニー。お客さんを巻き込む力がすごい。ドリーの「サンダーボーイ」をはさんで、「サムクックがきこえる」でクールダウン。
この日は2つ前にステージを務めたBRADIO(ブラディオ)がジェームス・ブラウンのソウルをまんま受け継いだようなステージをみせてくれた。切れ味鋭いファンキーなギターとうねる重たいグルーヴに乗り、表声と裏声を巧みに使い分け、お客さんたちにダンスを教えるJBイズムの体現者、真行寺貴秋らバンドの完成度が高い。短い時間で惹きつけてもっと聴きたいと思わせた。
次にでてきたThe Bawdies(ザ・ボゥディーズ)は久々に観るのだけど、変わったところと変わらないところがあるな、と感じた。変わったのはスーツが白くなったのと曲振りのコント(「ホットドッグ」前の寸劇)に磨きがかかったことだ。それだけステージでの経験を積んでいる。変わらないのは、ガレージなロックンロールを生き生きと演奏していることだった。ステージで暴れすぎたジムはツアー中に負傷し、この日は松葉杖で登場。椅子に座って演奏するかと思ったら、その場で立ち上がって激しくギターを弾いていた。
ロイが「50回転ズはライヴの本質を教えてくれた」と語れば、ジムが初期のエピソードを語り、バンドが50回転はをリスペクトしているのが伝わり、50回転ズに捧げますと演奏された「I Beg You(アイ・べグ・ユー)」が本当に楽しくて、うれしくなった。
2つのバンドに触発されてロックンロールに火がついた「ビニール・チェンジ・ザ・ワールド」からドリーの定番「ヤンガース・オン・ザ・ロード」の勢いは、いつも、どんなステージでも力を発揮できる50回転ズをみせてくれた。お客さんの熱を受け止めてそれを音にして返すことができる、しかもステージを重ねていくうちにその精度が高まっていくことを感じるのだ。
勢いはあるけどスウィートでノスタルジックな「ロックンロール・マジック」、そして最後は定番の「おさらばブギウギ」でコール&レスポンスで締めくくる。
アンコールは50回転ズとオープニング・アクトを務めた山崎彩音、BRADIOから真行寺、The Bawdiesからロイが参加してウィルソン・ピケットのヴァージョンで知られている「Land of 1000 Dances(ダンス天国)」を演奏する。この曲はThe Bawdiesの登場曲として使われているので、この日のお客さんたちには馴染みある。「ナー ナナナナー ナナナナーナナナーナナナー ナナナナー」というコーラスが印象的。大いに盛り上がって長丁場のイベントを終えたのだった。
— set list —
MONEY! MONEY! / KILLER / サンダーボーイ / サムクックがきこえる / Vinyl Change The World / YOUNGERS ON THE ROAD / ロックンロール・マジック / おさらばブギウギ
— encore —
Land of 1000 Dances (With 山崎彩音、真行寺貴秋、ROY)
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