苗場にも雨が降るか
今年のフジロック3日目、レッドマーキーに出演するグッカステンは韓国のバンドである。フジロックに先立って単独公演が6月5日に代官山ユニットでおこなわれた。ソールドアウトが伝えられ、フロアは超満員。自分のところからはステージの一部しか観えなかったし、モニターでそれを補おうとしても、画質がよくないので、ステージ上の細かいところはよくわからなかったくらいだった。
メンバーは19時40分ころ現れる。バンドのメンバーの他にサポートにギタリスト、コーラス、パーカッションを加えた総勢7人だった。お客さんは8~9割は女の人で、言葉を聞くと少なくとも半数以上は本国から来た人だという感じ。Tシャツで台湾から来たことをアピールしている人もいた。
ライヴは「Montage(モンタージュ)」で始まる。エレクトロな色を付けながらバンドが疾走する曲である。このバンドはなんといっても、ハ・ヒョヌの圧倒的なヴォーカルである。高音域まで声量があり、場の空気を支配する。伸びやかで澄んだ高音はスパークスのラッセル・メイルみたいで、スパークスじゃないかと思う瞬間は何度かあった。ぜひ「ディス・タウン・エイント・ビッグ・イナフ・フォー・ボース・オブ・アス(This Town Ain’t Big Enough for Both of Us)」あたりをカヴァーしてほしい。さらにドラマティックな曲作りはイギリスのMUSEを連想させるし、共演経験のある9mm Parabellum Bulletに通じるところもあるし、日本のヴィジュアル系バンドからの影響もあるのかもしれない、と考えるけれども、いろんなものがミックスされ簡単に「あのバンドが好きそうだね~」と影響元が判別できない、正体が掴めないのがよさなんだろう。
演奏は重厚感ありながら、軽やかに跳ねることもできる。いろんなタイプの曲に対応できるし、ラウドに突っ走る激しさもある。ハ・ヒョヌは一生懸命日本語でMCして(前日にタワーレコードでインストア・イベントをしたことを語り、たくさんCDがある環境はうらやましいというようなことも語る)、日本語の歌詞に変えた曲も3曲歌う。まあ結局、韓国語でMCするのが反応よく笑いも取れていたのだけど。
自分にとって新鮮だったのはお客さんたちの熱心さで、「変身」や「鏡」では大合唱、特に「鏡」ではリフまで大合唱だった。ファンとバンドの間でいろんなお約束があるようで、終盤ではスマートフォンのライトを点けて掲げて左右に振るという曲もあった。この関係性はアイドルとファンとの関係性に似ているんではないかと感じた。
本国からのお客さんが多いにしても、東京でアウェイを感じさせない雰囲気を作りだすことができた。そして、今度はフジロックである。3日目のレッドマーキーで、おそらく早い時間帯になるだろう。この日のような空気を作ることができれば成功といえる。バンドががんばるのは当然として、ファンの人たちも、その楽しんでいる姿をみせてどれだけ他の人たちを巻き込めるか。あとこの日、激しいにわか雨が降っていて「僕の名前にも『雨』が入っている(ハ・ヒョヌは漢字表記が河鉉雨)」とMCでいっていたので、雨男なのか……でも屋根付きのステージであるレッドマーキーならむしろよいのではないかなどと思いながら、帰路に7月のことをあれこれ想像してみた。
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