DYGL | 渋谷WWW X | 2017.05.15

フジロックに期待

今年のフジロックに出演が決まっているDYGL(ディグロー)、アルバム『Say Goodbye to Memory Den(セイ・グッバイ・トゥ・メモリー・デン)』のリリースを記念したツアーを始めた。5月14日におこなわれた渋谷www xは売り切れてしまい、翌15日は同じ会場で追加公演だった。開始ギリギリに着いてフロアに入ると、後ろまでギッシリ人がいた。ヴォーカル/ギターの秋山が「今日の方が入ったみたいです」とMCで言っていたように、今が旬の、伸びていくバンドを観ておこうという人が多かったのだろう。

19時35分ころバンドが登場し「Come Together(カム・トゥゲザー)」からライヴは始まった。90年代のブリットポップから2000年代のガレージロック・リバイバルまで、英米のギター中心のロックを俯瞰し、きちんと受け継ぐスタイルをみせてくれる。速い曲は「Come Together(カム・トゥゲザー)」くらいで、ミドルなテンポな曲が多く、あくまでも曲のよさで勝負しようとしているところが好感持てる。

モータウンなリズムの「Take It Away(テイク・イット・アウェイ)」、レゲエの「Boys on TV(ボーイズ・オンTV)」など、一本調子にならずに起伏をもたせている。「Teenage Kicks(ティーンエイジ・キックス)」はザ・アンダートーンズのカヴァーだ。

バンドは派手な演出もアクションもない。演奏は端正で、そのせいかライヴハウスのおかげなのか、エンジニアの腕なのか音が驚くくらいよい。クリアーで細かいところまで聴き分けることができるし、音量は十分あるのに耳に優しい。こうしたロックでこうした音がだせるのかと感心する。

「Let It Out(レット・イット・アウト)」を熱唱したあと「I’ve Got to Say It’s True(アイヴ・ガット・トゥ・セイ・イッツ・トゥルー)」を歌う秋山がハスキーな声になるところが端正な中にライヴらしさをだしていてよかった。アンコール最後の「All Want(オール・ウォント)」の激しさとともに「ライヴである必然」がきちんと演奏する以上に求められる。その「All Want(オール・ウォント)」に引っ張られてフロアも湧き上がった。それまではどちらかというと「見定める」というような雰囲気のほうが強かったのも事実。この日のステージを観て、音楽性は違うけど覚醒前のザ・ボゥディーズにあった空気を感じた。ボゥディーズは2009年前半あたりの時期は殻を破りそうでできない、それが後半になるとステップアップしたのを感じたように、何かのきっかけで、フロアにいるお客さんの心をつかむようになるかもしれない。

積極的に海外にでている彼らなんで、経験を積む機会はたくさんあるようだし、おそらく今年のフジロックが転換点になるのでは? と期待している。伸びしろの大きさは感じることができたので、あとはどう飛躍するか。

— set list —
Come Together / Take It Away / Let It Sway / Let’s Get Into Your Car / Crazy / Feel The Way / Teenage Kicks / Sightless / Boys on TV / Slizzard / A matter of Time / Happy Life / Thousand Miles / Let It Out / I’ve Got to Say It’s True / Waste of Time / Don’t Know Where It Is

— encore —
I’m Waiting for You / All Want

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Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Koki Nozue,Shusaku Yoshikawa,Yuki Kikuchi