ザ50回転ズ | 東京 恵比寿LIQUIDROOM | 2019.06.10

ロックンロール職人へ

ザ50回転ズは、対バンイベント「Versus! Versus! Versus!」と題して東京で2回、大阪で2回おこなう。初日は、ハルカミライとのライヴとなる。

まず登場したのは八王子出身のハルカミライ。メンバーは20代半ばのバンドである。始まった途端にヴォーカルの橋本学がフロアに突入して歌い続けた。若くて元気、歌はメロディアスで、勢いのあるギターが印象的なバンドである。誰しも思うけどブルーハーツを思いださせる。キャッチーな歌にフロアの反応もよく、橋本もフロアとのふれあいを大事にしているように積極的にコミュニケーションを取る。

「十分温めたぜ!」というように、フロアはハルカミライのおかげで50回転ズを迎える準備はしっかりできていた。いつものようにドクター・フィールグッドの”Riot in Cell Block Number 9″が流れてバンドが登場する。

「50回転ズのテーマ」から始まったライヴは、お馴染みの曲やアルバム『50回転ズ』からの曲を演奏してハルカミライが温めたフロアを盛り上げた。

「KILLER」の後半に顕著であるように、オリジナルの音源と違って、生の演奏の場面でギターソロを変えたり加えたりする。何度もライヴを観ている者にとってはその違いを味わうかのように楽しめる。もうベテランといってもいいキャリアを重ねてバンドが到達したのは「職人」と呼べるような境地であった。

この日はハルカミライのお客さんとどれくらいの比率なのかよくわからないところがあって、それはどちらのバンドの反応がよかったということだし、片方のバンドのファンが対バン相手にちゃんと引っ張られているということである。これが対バンのイベントに起きる化学反応である。もう30代半ばを過ぎた50回転ズが10歳くらい年下であるハルカミライの勢いに対してちゃんと受け身が取れているということだ。

この日演奏された曲はポップなロックンロールが中心で、それが50回転ズが15年かけて培ってきたイメージである。そこに「レッツゴー3匹!!」のようなケルティック(アイリッシュ)パンクや「サムクックがきこえる」のようなバラードもある。緩急をつけながら飽きさせない。居心地のよい店でいつもの一杯、というような老舗の域に届きそうになっている。

後半は「Vinyl Change The World」「YOUNGERS ON THE ROAD」「ロックンロール・マジック」「おさらばブギウギ」と定番曲を畳み掛ける。ゴキゲンなギターが鳴り、ポップなメロディと縦ノリのビートがフロアを揺らし、爽快感を持って駆け抜けた。

アンコールは「Thank You For RAMONES」。パンクの先輩に感謝を捧げる。パンクに対するストレートな愛の表明。見た目やダニーの話術など面白ポイントはいつくかあるけど、音楽に耳を傾ければこれほどまでに実直な、真っ当な音楽を演奏するバンドであること9月からワンマンで日本中を回るのでぜひ足を運んでもらいたい。

セットリスト
1.50回転ズのテーマ
2.ハートブレイカー・ブルース
3.レッツゴー3匹!!
4.KILLER
5.エイトビートがとまらない
6.デヴィッド・ボウイをきどって
7.NO NO NO
8.サムクックがきこえる
9.Vinyl Change The World
10.YOUNGERS ON THE ROAD
11.ロックンロール・マジック
12.おさらばブギウギ

アンコール
Thank You For RAMONES

Text by Nobuyuki Ikeda
Photo by Ryota Mori