巧みな強さ
赤坂ブリッツは満員だった。19時10分ころ、フリートウッド・マックの「ザ・チェイン(The Chain)」が場内に流れる。お客さんの半分は外国人でないかと思うくらいの比率。日本以外でこの規模の会場はあり得ないからだろうか。自分の周りの外国人グループで「チェイン」に合わせて歌いだす人もいた(中間のベースソロまで再現していた)。そして客電が落ちてザ・ルミニアーズのメンバーたちが登場した。
ウェスリー・シュルツはフロアに背を向けピアノを弾きながら「サブマリンズ(Submarines)」を演奏する。歌詞に「ジャパニーズ」とあるところで歓声が上がる。次の「フラワーズ・イン・ユア・ヘア(Flowers in Your Hair)」からウェスリーはギターを手にして弾き語る。フロアに向かって合唱を要求し、声が小さいとさらに煽るなど、現場で鍛え抜かれた強さを感じる。それは、ウェスリーの声や楽器からでる音のひとつひとつにも感じることだ。
というか、ライヴの序盤にウェスリーは怒っているのかと自分は思ったけれども、これはそういう声をしているのだと、ライヴが進んでいくうち耳にも馴染んできた。音源を聴くとアコースティックで当たりは柔らかそうなイメージあるのに、ライヴはハードな感触がある。現場でウェスリーの声が際立つといえる。
ウェスリーの他には、主にドラムのジェレマイア・ケレイブ・フレイツ、チェロを弾く紅一点ニーラ・パカレックがメインのメンバーで、そこにツアーメンバーが加わる。複数楽器を演奏できる人が複数いるので、曲ごとに自在に編成が変わっていく。フォークやカントリーをベースにしているけど、テンポ感やたまにシンセサイザーを隠し味的に使うところが現代的である。
今のところの代表曲「ホー・ヘイ(Ho Hey)」も始まって数曲で披露された。後半の盛り上がりどころで演奏されるのではなく、いきなりの大盤振る舞い。中盤には恒例のフロアにメンバーたちが降りたくさんのお客さんをかき分け、フロアの真ん中で大勢の人たちに囲まれた中で演奏する。セットリストのサイトには「ダーリーン(Darlene)」と「Abe Song」とあるけど(2017.4.13閲覧)「Abe Song」でなく「ホエア・ザ・スカイズ・アー・ブルー(Where the Skies Are Blue)」だったような。
ステージに戻ってからさらに力強さは増し、トム・ペティ&ハートブレーカーズの「ウォールズ(Walls)」もカヴァー、そしてシンプルな弾き語りからメンバーが加わって盛り上がる「マイ・アイズ(My Eyes)」などドラマティックな演出が上手く本編を締めくくる。
アンコールにはすぐ応え「ロング・ウェイ・フロム・ホーム(Long Way From Home)」、そしてボブ・ディラン「サブタレニアン・ホームシック・ブルース(Subterranean Homesick Blues)」を力強くカヴァー。そして合唱が起こった「スタボーン・ラヴ(Stubborn Love)」で締めくくった。やっぱりウェスリーの声には怒りや悲しみを踏まえた強さがある。それはボブ・ディランがそうであったようにと連想させるようなアンコールだった。
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