UNKNOWN MORTAL ORCHESTRA | FUJI ROCK FESTIVAL | 2019.07.27

アップグレードされ続けるサイケデリア

フジロック2日目、雨が降りしきっていた昼下がり(この時は、フジロック史の中でも一二を争うほどの豪雨に見舞われることになろうとは思いもしていなかった)。ホワイトステージに登場したのは、ニュージーランド出身のルーバン・ニールソン率いるアンノウン・モータル・オーケストラだ。

登場するや否や、バンド総勢5名が一声に歪んだ音を出力しまくった後、鼓膜をダイレクトに叩いてくるようなルーバンによるシャープなギターフレーズの弾き語りからはじまった”From The Sun”で開演。間奏部ではステージから降り、会場中を闊歩しながらギターソロを繰り広げる。のっけから何という大サービス。集まったオーディエンスの熱が一気に上がったのは言うまでもない。間絶なく”Ffunny Ffrends”へとなだれ込む構成も見事だった。

ルーバンのギターが醸成する極上のサイケデリアをベースに、ビートルズ直系のポップセンスを感じる爽やかで親しみやすいフック、2台のキーボードから出力されるヴィンテージな音色、ベースとドラムからなるリズムセクションがブラックミュージックからの影響に裏打ちされた「腰にくる」グルーヴで会場を支配していく。そんなアンノウン・モータル・オーケストラ節が”Necessary Evil”で炸裂していた。

メンバー紹介の中で判明したのは、サックスとトランペット、たまにシェイカーも奏でるマルチタレントなキーボーディストはルーバンの父親で、ドラムは兄弟だということ。彼らのように音楽を通して語り合える家族関係に、ついつい憧れを抱いてしまった。

ラストは、”Can’t Keep Checking My Phone”で創り出されるダンサブルなグルーヴに、ルーバン自らクルクルと高速回転するようなパフォーマンスを繰り出し、会場を思い切り踊らせてステージを後にした。ルーバンが影響を受けたあらゆる音楽を注入し、アップグレードされた「サイケ」が表現された音良し、演奏良し、パフォーマンス良し、そしてお客さんの反応も良しとすべてが揃った、文句なしのステージで魅せてくれた。

Text by Takafumi Miura
Photo by Ryota Mori