ドミコ | FUJI ROCK FESTIVAL | 2019.07.28

ドミコ印のロックンロールで完全勝利!

例年以上の速さで最終日を迎えた今年のフジロック。前日の、終始苗場の地を打ち付けていた豪雨が嘘だったかのように、うだるような暑さになった。レッドマーキーは汗が滴り落ちるほどの熱気でムンムン。スカートに続いてここに登場したのは、フロントマンのさかしたひかると、ドラムスの長谷川啓太の2人からなるドミコだ。フジロック2017で苗場食堂に出演して以来、約2年ぶりのフジロック帰還となる。”my Baby”、”Pop,Step,Junk!”、”さらわれたい”といったロックファンをキュンキュンさせるようなリフと、ダルなひかるの声と耳にすんなりと馴染む日本語の響きに一発で虜になってしまい、今年のフジロックの中でももっとも注目していたアクトのひとつだ。

一発目の”ペーパーロールスター”から、会場の雰囲気そのまんまに激アツな音を繰り出して空間を扇情していく。ひかるがギターでかき鳴らすガレージ色満載のフロアにダイレクトに向かってくるかのようなド直球なリフ/フレーズと、一心不乱に叩き出される長谷川啓太のビートの荒々しさは、かつてのホワイト・ストライプスを想起させるほど。単独公演などで、いつもやっているというラフなMCも一切せず、矢継ぎ早に楽曲を連投していく。聞けば、前回の苗場食堂でのステージでは、機材トラブルに見舞われたとのことで、その雪辱戦という意味合いもあったのかもしれない。「潔さ」を感じさせるロックンロールで、会場に集まったオーディエンスの尻を蹴り上げていく。

ギターのフレーズをどんどん重ねて音を拡大させていく、ひかる十八番のルーパー妙技が炸裂し、たった二人で生み出しているとは思えない迫力ある爆音アンサンブルで会場を沸かせたまま突入した”まどらまない”。気だるく、かつ色っぽくひかるが歌う様はロックスターのそれそのもの。長谷川のドラムが突如入ってくる性急なビートがカッコよ過ぎて悶絶してしまう。AC/DCの超名曲”Back In Black”のリフからなだれ込み、ロックンロール天国を創り上げた”深海旅行にて”は間違いなく本セットのハイライト。約2年ぶりのフジロックにおけるステージは、終始ドミコ印のロックンロールに徹した2人の完全勝利に終わった。たった2人というミニマルな構成の中で、自らの表現を明確にフロアに届け、かつオーディエンスを沸かせるための工夫を随所に仕掛ける巧者っぷりも見事だった。ルーパー駆使もそのひとつ。彼らのようなアーティストがいてくれるから、ロックは面白い。日本のロックの可能性をまざまざと見せつけられたライヴだった。

Text by Takafumi Miura
Photo by Ryota Mori