苗場で浴びる未来型ソウル
完全に晴れ渡ったフジロック最終日。昼下がりのグリーンステージも最高の天気だった。山々が美しく一帯を囲んでいるここで演奏するのは気持ち良いだろうなぁ。そんなことを感じながら、オーストラリアからやって来たフューチャー・ソウル・バンド、ハイエイタス・カイヨーテのステージを待っていた。
まず登場したポール・ベンダー(ベース)、サイモン・マーヴィン(キーボード)、ぺリン・モス(ドラムス)の3名が、ヒップホップマナーな硬めのビートを繰り出すと、首から胸元にかけて描かれたタトゥー、キューピーがぶら下がったネズミの耳つきキャップに、膝のところにポケモンのプリンが付いたロングブーツと、漫画から飛び出てきたような「ザ・奇抜」な出で立ちのフロント・ウーマンのネイ・パームが姿を見せた。何かと注目を浴びるネイのファッションだが、今考えると、随所に日本へのリスペクトが表現されていたようで嬉しくなる。
宮崎駿の名作『ラピュタ』にインスパイアされた”Laputa”を繰り出すのだが、難易度が明らかに高く、幾何学模様のごとく縦横無尽なビートの上を流麗にネイの声が難なく乗りこなしていく。見た目とかけ離れた発声の巧みさに圧倒されてしまった。続くは、テーマがセックスだという”Chivalry Is Not Dead”(武士道の説明に取り上げられる、「騎士道は死んでいない」という意のタイトルでなぜにセックス?)。とにかくポールが繰り出す、ズシッと腹にくる6弦ベースがカッコいいの一言。リズムセクションがどす黒いヒップホップビートを繰り出し、会場を問答無用に盛り上げていた。
本セットのラストはグラミー賞ベストR&Bパフォーマンス部門にノミネートされた”Nakamarra”。キーボードの流麗なタッチとネイのパワフルな歌声が感動的に響き渡る。この場に集まったオーディエンスと、フジロックに来れたことに対する感謝を伝え、笑顔でステージを後にした。
彼ら自身が受けたであろう色んなジャンルからの影響が感じられ、どこかで聴いたことがあるようでいてまったく新しい音。彼らがフューチャー・ソウル・バンドと呼ばれる所以を理解できた。最高な天気の下、苗場の極上の環境で、ハイレベルなミュージシャンシップの基で磨き上げられた新鮮な音を存分に浴びる。これだからフジロックに行くのを止められない。