精神と心の成長、その証明
ファンの中で伝説と化している2012年のフジロック、ホワイト・ステージでのステージ。ジェイムス・ブレイク、マルチ・プレイヤーのエアヘッド、パーカッショニストのベン・アシッター。この今も変わらぬトライアングルから放たれる未知のサウンド・プロダクションと、ジェイムスの儚さとエモーショナルさが同居する曲と唄に、その場にいたオーディエンスは皆心を鷲掴みにされた。
あれから7年。ジェイムスも30歳になった。まだあどけなさのあった服装も含めた容姿はすっかり大人になり、その心と精神もまた成長を遂げていた。かつては精神的病から多くの苦しみを心にまとい音楽活動を続けていた。そんな彼が『James Blake』『Overgrown』『The Colour in Anything』そして最新作『Assume Form』と制作・リリースしていく過程の中で、ビヨンセやジェイ・Z、ケンドリック・ラマー、ジャスティン・ヴァーノン、フランク・オーシャン、チャンス・ザ・ラッパー、トラヴィス・スコット・・・など、数多くのアーティストとのコラボレーションと言う名の“関わり”を持つことにより「受け入れること」を知った。それは、確かに新作『Assume Form』を中心としたセットリストにも表れていた。
エレクトロニックなトラックのアレンジは相変わらず人力だし、オーバー・ダブを活用した音の奥行きのもたせ方も健在。変わらない部分も多かった。しかし、角を極力削いだ滑らかな音感や、純粋なアレンジの芳醇さなどは、これまでの彼のライブには無かったもので、そういった要素がライブのグレードを上げたことは間違いない。オープニング・トラックの“Assume Form”からラストの“The Wilhelm Scream”までの約1時間15分は、今年のフジロック・ベストアクトと言っても過言ではない。