eastern youth | 夏の魔物2019 in OSAKA | 2019.09.01

大阪の地下、花道をゆく

9月1日、eastern youthが大阪・味園ユニバースで開催された「夏の魔物2019 in OSAKA」に出演した。フロアには大小ふたつのステージが設置され、交互にライブが行われる。小さなステージでの三上寛の凄みと味わいに満ちた演奏の後、eastern youthはしばし爆音でサウンドチェック。待ちわびた観客から飛ぶ歓声とともに、”夏の日の午後”が始まる。贅沢な流れだ。

“夏の日の午後”のあとに”故郷”がくると、拳を掲げる観客もさらに多くなる。吉野寿(Gt/Vo)が「9月ですよ、もう夏ではない。だから夏の魔物はもう去った。うそ! いますよここに」とあいさつ代わりに語れば、歓声が返ってくる。”ソンゲントジユウ”は堂々と鳴り、”黒い太陽”は久しぶりに演奏された。タイトで疾走感あふれる田森篤哉(Dr)のドラムと村岡ゆか(Ba)のベースのコンビネーションに、吉野の激情がこもったギターと叫びが乗る。観客も高まる緊張に固唾をのむ。

吉野はステージ中央からフロアに突き出した花道を差し、「あぐらかくなり、座るなり。ここまで来ていいし。キッズスペースですから」と観客に語りかける。演奏で放つ気迫とはギャップのある提案にフロアも沸く。”青すぎる空”から”裸足で行かざるを得ない”へとゆるぎない代表曲が続き、どんどん引き込まれていく。

「9月1日ですよ。子どもがいっぱい死ぬ日だそうですよ。どうして、なんで。逃げ道ないんですか? どこにも。本当によく考えたのか。追い詰めてねえか。何やっても自己責任だってよ? ああそうですか」

やりきれない口調の吉野。イベントのお祭り感から、現実の厳しさに引き戻される。

「やり直すんですよ、何回でも」

その言葉にフロアから歓声が起こり、”矯正視力〇・六”に入った。この曲も、次に演奏された”時計台の鐘”も、”夜明けの歌”も聴き入ってしまう。バンドの渾身の演奏と、歌が放つ力から、明日からまた日々を生き抜く勇気をもらっているような気分になる。

ラストは”街の底”。吉野は間奏でギターを鳴らしながら花道の先まで進み、観客へ寄っていく。大阪の繁華街、もともとキャバレーだった猥雑とした建物の地下で、手を伸ばせば届く距離にいる吉野。その姿はスタジアムやアリーナにある花道を歩む芸能人やミュージシャンとは全く違い、自分と地続きの日常を生きるリアルさに満ちていた。吉野が観客に向かって両腕を広げてみせると、フロアはこの日いちばんの大歓声に包まれた。

次は9月28日(土)、いよいよ日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブが近づいてきた。4月の「極東最前線」以降、北は仙台から南は沖縄まで、各地のフェス、イベントを巡ってきたeastern youth。どこのステージであっても迫真の演奏でベストを尽くす姿勢は充分実証済みだが、17年ぶりの野音でのライブは、今年最大のトピックであることは間違いない。指定席のチケットは既にソールドアウトしており、現在立見券のみ発売中。昨年の結成30周年を超えて到達する、彼らの新たなマイルストーン。心して受け止めたい。

<SET LIST>
01.夏の日の午後
02.故郷
03.ソンゲントジユウ
04.黒い太陽
05.青すぎる空
06.裸足で行かざるを得ない
07.矯正視力〇・六
08.時計台の鐘
09.夜明けの歌
10.街の底


<eastern youth 日比谷野外大音楽堂公演 開催概要>
2019年 9月28日(土) 日比谷野外大音楽堂
開場 16:45 / 開演 17:30
※雨天決行・荒天中止
前売:¥4,500(全席指定) / ペアチケット:¥8,000(全席指定) / 立見:¥4,000
※未就学児童は保護者同伴に限り入場可(小学生以上はチケット必要)
※未就学児童でも座席が必要な場合はチケットが必要です。
詳細: https://smash-jpn.com/live/?id=3150


eastern youth | 記事一覧
SMASHING MAG アーカイブス

Text by Keiko Hirakawa
Photo by Keiko Hirakawa