KING BROTHERS | シマネジェットフェス in 島根県松江市古墳の丘古曽志公園 | 2019.09.21

ロックンロール、その不屈の精神

キングブラザーズを語ること、それはロックンロールに対する不屈の精神を語ることと同義だ。そしてその精神はギターウルフが持つものでもある。

9月21日島根県松江市古墳の丘古曽志公園で行われたシマネジェットフェスに、キングブラザーズが出演した。午前中に水前寺清子が”三百六十五歩のマーチ”を歌った同じヤマタノオロチステージに3人が登場すると、どっとステージ前に人が押し寄せ、密度が濃くなった。3人の鳴らす爆音が全方位にそのエネルギーをほとばしらせると、かっと目を見開いたケイゾウ(Vo/G)の合図で”ルル”が始まった。どれくらい彼らのステージを見てきただろうか、どのライブももちろん忘れ難いものではあるが、出音一発で脳天突き破られて昇天してしまうライブはそうそうない。間違いなくこの日はそんなライブで、3人の気迫というか衝動というかドライヴ感というか、つまり何もかもが突き抜けていて、頭の中を真っ白にさせる破壊的な演奏力にも支えられていた。

ゾニー(Dr)の腕が大きく何度も振り下ろされる”Get On The Bus”邦題は”乗り遅れんな”。彼らの1stアルバムの中盤に収録された曲だ。マーヤ(G/スクリーム)は瞳孔すら開いているのではと思わせるほど眼をひん剥いてスクリームしながら、前のめりにギターを掻き鳴らした。ケイゾウはデビュー当時と変わらず大きく足を踏み鳴らしリズムを取っては髪を振り乱し、身体そのものでギターを鳴らしてがなり歌った。観客のはやる気持ちをはぐらかすように緩急つけながらも、バンドは爆走していく。

グズグズしている暇はない/飛ばしていくぜこの世界を、という歌詞で始まる”King of Boogie”も前述のアルバムからの選曲だ。彼らのセットリストに組み込まれる初期の古い曲は、決して今の時代に寄せて演奏しているわけでは全くなく、もちろん懐かしさとは無縁の音として、その時々のバンドサウンドを塗り固めたようなアレンジで披露される。ロックンロールバンドが楽曲すらローリングさせて時代を突き進む。彼らはいつだって丸腰のまま、キングブラザーズというバンドと対峙してきた。

“マッハクラブ”で足を踏み外しながらも果敢に挑んでいく観客に支えられながら、最上段からステージに向かって滑り落ちるマーヤ。ともすればそんな破天荒な一面だけが取り沙汰されるバンドが、20年以上第一線で立ち続けながら見せてきた不屈の精神というものを、この日のステージを見た人は感じ取ったのではないだろうか。

「みんなバンドをどんどん辞めていって、もう国内にライバルはキングブラザーズしかいない」打ち上げが終わった後、ギターウルフのセイジは語った。その言葉が物語るような、密度の濃い圧巻のステージだった。

間も無く彼らは、アメリカ・メンフィスで開催される『Gonerfest 16』への出演を含むアメリカツアーへと出発する。アメリカツアーから始まったキングブラザーズの歴史に、今度は何が書き加えられていくのだろうか。帰国後また目撃したいと思う。

<SET LIST>
01.ルル
02.Get On The Bus
03.King of Boogie
04.マッハクラブ

<KING BROTHERS / USA TOUR 2019>
9月25日 MILWAUKEE,WI at QUARTERS
9月26日 MEMPHIS,TN at GONERFEST
9月30日 NASHVILLE,TN at DRKMTTR
10月1日 ATLANTA,GA at BOGGS
10月3日 NEW ORLEANS,LA at POOR BOYS
10月6日 AUSTIN, TX at BARRADUDA

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Text by Tomoko Okabe
Photo by Tomoko Okabe